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『キング オブ マスターズ』  作者: 大和大和
~ニューカラーズ・エントリー~
43/70

第43話 『キング オブ マスターズ』の属性




 ほとんどのカードゲームには『属性』というものがある。

 戦い方や固有能力、得意分野など。

 カード一枚一枚の特徴を表すものであり、個性を示すもの――それがカードゲームの『属性』というものだ。

 ある属性は攻撃が得意だったり。

 ある属性は防御が得意だったり。

 または、他の属性を合わせることで、とんでもない爆発力を生んだり。

 このように。

 カードゲームにおける『属性』というのはかなり重要な位置を占める要素となっている。

 そして、それは『キング オブ マスターズ』も同じ。


(光属性か……)


 攻撃やバトルを得意とするシンプルな扱いやすさが特徴の『火属性』。

 大量召喚やドロー、相手のカードを手札やデッキに戻すなどの搦め手を得意とするテクニカルな『水属性』。

 そして。

 相手に直接ダメージを与える『バーン戦法』や追い詰められることで爆発するプロレス気質な『闇属性』。

 これら三つの属性は、別名『前期カラー』なんて呼ばれていたりする。

 それは。

 その属性たちの後に新たな属性――俗に言う『後期カラー』が登場したからだ。


(……ということは残りの属性もあることは確実、だな)


 『後期カラー』の属性は『前期カラー』と同じく全部で三つ。

 その内の一つである『光属性』の力が。

 今、俺の目の前で、発揮されようとしていた。




 ☆☆☆




「どうせ攻撃はできないし。これで私はターンエンドかな」

「なら、俺のターン! ドロー!」


 チャラ男

 マナ0→2

 手札4→5


 ターンが移り、先行の二ターン目。

 ドローしたカードが加わり、手札が増える。

 だが、美少女のフィールドに目を向けたチャラ男が「ぐぬぬ」と声を上げた。


「光属性……」

「どうしたのかな。もしかして怖いとか?」

「なっ! ちげえし!」

(うっわ、(あお)ってる……)


 美少女の小バカにするような言動と、もぞもぞと口の端で動くお菓子。

 その姿から放たれた煽りは効果抜群だったらしい。

 ムッとした表情を浮かべたチャラ男は、何の躊躇(ためら)いもなく一枚のカードに触れた。


「行くぜ! 俺は2マナを使って手札から『フレア・マックラン』を召喚だ!」


 チャラ男

 マナ2→0

 手札5→4


 『フレア・マックラン』

 コスト2/火属性/アタック2/ライフ2

 【効果】

 『先制』


「あらら」


 残念、とでも言いたかったのか。

 チャラ男が召喚したのは身体に炎を(まと)った青年の姿をした赤髪のユニット。

 それを見た美少女がパキッとお菓子を鳴らす。

 けども、その顔には明らかに「関心関心」という言葉が浮き彫りになっていた。


(『先制』持ち……この状況にはピッタシなユニットだな)


 『先制』は『速攻』と同じく。

 バトルゾーンに出たばかりでも攻撃ができるユニットの固有能力。

 しかし、『先制』には『速攻』とは明らかに違う部分がある。

 それは――『相手のユニットにしか攻撃できない』ということだ。

 『速攻』は相手のユニットだけではなく、相手のライフにも直接攻撃ができる。

 それに対して。

 『先制』は相手のユニットにしか攻撃できない、という『速攻』の劣化版みたいな効果になっている。

 つまり、『先制』は『速攻』の下位互換。

 別の言い方をすると、『先制』は『速攻』よりも弱い効果である、ということだ。

 ただ、それについてはハッキリ言って状況によりけり。

 であるからして。


「さあ、アタックフェイズ! 俺はまず『フレア・マックラン』で『侍従の騎士』に攻撃だ!」


 『フレア・マックラン』

 アタック2/ライフ2→アタック2/ライフ1


 『侍従の騎士』

 アタック1/ライフ2→アタック1/ライフ0


「まだまだ! 俺は『火の拳マサル』で相手のライフに攻撃だ!」

「やるね」


 『火の拳マサル』

 アタック1→アタック2


 美少女

 ライフ20→18


 流石は火属性といったところだな。

 高い攻撃力で安定して攻めに行けるのは普通に強い。

 けれども、バトルはまだ始まったばかり。

 その証拠に。

 美少女は残ったお菓子を一気に口の中に放り込むと、腰のポーチから新しいお菓子を取り出した。

 ちなみに、そのお菓子はどっちも麩菓子(ふがし)みたいなヤツだった。


「これでターンエンドだ!」

「そう。じゃあ、私のターン。ドロー」


 美少女

 マナ0→2

 手札5→6


 後攻の二ターン目。

 お菓子を食べながら美少女がカードをめくる。

 よく見たら右手だけでカードを触って、お菓子は左手だけで触っている。

 そこら辺はしっかりしてるのな。


「私は2マナを使い、手札から『使い走りのエルルゥ』を召喚」


 美少女

 マナ2→0

 手札6→5


 『使い走りのエルルゥ』

 コスト2/光属性/アタック1/ライフ2

 【効果】

 ①このユニットがバトルゾーンに出た時、このユニットを破壊して発動できる。自分のライフを2回復する。


 美少女が次に召喚したのは、アホ毛の大きな金髪ショートボブの女の子メイド。

 だが、


「私は召喚した『使い走りのエルルゥ』の効果を発動。この子を破壊し、自分のライフを2回復」


 その効果を発動した途端、何故かいきなりずっこける。

 おまけに、持っていたバケツもひっくり返る。

 中に入っていた水が『使い走りのエルルゥ』の頭に綺麗にぶちまけられる。


 それでも。

 起き上がった『使い走りのエルルゥ』はバケツを持つと一礼してから急いで退散した。

 うーん、これはダメイド。

 一体今のどこに回復要素があったのか。

 だけど、美少女のライフは回復した。


 美少女

 ライフ18→20


「なっ、ライフを回復したっ!?」


 これはまた。

 光属性の強みが出ているな、と俺は思った。


(あれは本当に厄介なんだよなぁ)


 光属性の特徴は大量の『ガード』ユニットとライフの回復を合わせた高い防御力。

 毎ターン毎ターン『ガード』ユニットで攻撃は止められ。

 やっとの思いで削ったライフは一瞬で回復される。

 実際にバトルすると、まるで岩か何かを相手してるみたいになってかなりダルくなる。

 まあ、そうやって粘り強く戦うのが光属性の戦い方なわけだけど。


「私はこれでターンエンド」

「くっ。俺のターン、ドロー!」


 チャラ男

 マナ0→3

 手札4→5


 先行の三ターン目。

 チャラ男が歯噛みしながらカードを引く。

 しかし、引いたカードを見た瞬間、その表情を一瞬で柔らかくした。


「行くぜ! 俺は3マナを使って手札から『火炎少女エリナ』を召喚!」


 チャラ男

 手札5→4

 マナ3→0


 『火炎少女エリナ』

 アタック2/ライフ2


「さらに『火炎少女エリナ』の効果を発動! 自分のバトルゾーンにいるこのユニット以外の火属性ユニットのアタックを+2する!」


 『火の拳マサル』

 アタック1→アタック3


 『フレア・マックラン』

 アタック2→アタック4


「そして、アタックフェイズ! 俺は『火の拳マサル』と『フレア・マックラン』で相手のライフに攻撃!」

「くっ」


 『火の拳マサル』

 アタック3→4


 『フレア・マックラン』

 アタック4


 美少女

 ライフ20→12


「よし! これで俺はターンエンドだ!」

(へぇ……)


 これはすごい。

 引きの良さに助けられたな。

 あの光属性を相手にこんな序盤から一気に『8』ダメージも与えられたのは相当デカい。

 だが、やられた方もそれを黙って見ているわけではない。


「いいね。私のターン、ドロー」


 美少女

 マナ0→3

 手札5→6


 後攻の三ターン目。

 手札を増やす美少女の横顔。

 その顔には、遠目からでも見えるくらいに不敵な笑みが浮かんでいる。


「お待たせ。さあ、行こうか」

「なに?」

(あん?)


 その口から出た呟きはあまりにも小さくて聞き取れない。

 しかし、急に何を言い出したんだ、などと思ったのも束の間。

 美少女は手札から一枚のカードに触れると、それをゆっくりと優しく表向きにした。


「私はこの子の効果を発動」

「ん?」

「っ! ソイツは!」


 美少女が表向きにしたカード。

 チャラ男はそれがどんなカードかわからず、眉を潜めている。

 でも、その絵柄にものすごく見覚えがあった俺は、思わず声を上げる。

 それをつぶさに聞き取ったらしい。

 一瞬だけこちらを振り向いた美少女がニッコリと微笑んできて。


「この子は自分のライフが10以上であればコストを3減らして召喚できる」

「なに……?」

「よって。私は3マナを使い、手札から」


 この子を召喚、と。

 美少女が優しい声色で一枚のカードを送り出す。

 叩き付けるわけでも、投げ付けるわけでもない。

 そっと添えるようにバトルゾーンに置かれたカードが光を放ち、


 美少女

 マナ3→0

 手札6→5




「さあ、おいで――『閃光の騎士シャイナ』」




 純白の鎧に身を包み。

 真っ直ぐに伸びたレイピアを片手に。

 腰まで伸びた金色の長い髪を小さく揺らして。

 美少女の前に凛々(りり)しい可憐な少女――『閃光の騎士シャイナ』がその姿を現した。





ゆっくり投稿。

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