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『キング オブ マスターズ』  作者: 大和大和
~スタートカラーズ・セットアップ~
34/70

第34話 極限バトル





 相手の発動したスペル『スライムパレード』のさらなる効果によって。

 デッキから一枚のカードを手にした受付嬢は、それを手札に加えてからピシッと右手を突き出した。


「私はまずノーコスト召喚した『ビッグスライム』の効果を発動しまーす!」

「ううんっ?」

「『カップルン・スライム』とー、『バリアン・スライム』とー、『バーニン・スライム』ー。『ビッグスライム』以外の『スライム』ユニットは3体いるのでー、デッキからカードを3枚ドローしまーす!」


 受付嬢

 手札4→7枚


「ではではー、私は手札から『アークナイト・スライム』の効果を発動しまーす!」

(来るか……!)


 スッと後ろに退き、強く警戒の色を滲ませながら身構える。

 受付嬢は、クルッと一枚のカードを(ひるがえ)して微笑んだ。


「『アークナイト・スライム』は自分のバトルゾーンにいる『スライム』ユニットを3体破壊することでノーコスト召喚できまーす! なのでー、私は『カップルン・スライム』とー、『バーニン・スライム』とー、『ビッグスライム』を破壊してー、手札から『アークナイト・スライム』をノーコスト召喚でーす!」


 突如として、相手のバトルゾーンにいた三つのわらび餅が、一つとなって大きな塊になる。

 すると。

 すぐさまその塊は弾け飛んで、その中から一体のスライムがぬらり、と姿を現した。


 受付嬢

 手札7→6


 『アークナイト・スライム』

 コスト6/水属性/アタック3/ライフ3

 【効果】

 ①このユニットは自分のバトルゾーンにいる『スライム』ユニット3体を破壊して手札からノーコスト召喚できる。

 ②①の効果でノーコスト召喚したこのユニットはアタックを+3し、『速攻』を得る。

 ③このユニットがバトルゾーンに出た時に発動できる。相手フィールドにあるカード1枚を選んで手札に戻す。


 俺の背丈に近い人型。

 四肢を覆う黒き鎧。

 そして、右手に握り締めた細身の剣。

 かつて『スライム』デッキとの体面で幾度となく目にしたスライムらしくないスライムが。

 今、俺の目の前に立ちはだかった。


「ノーコスト召喚した時の効果でー、『アークナイト・スライム』のアタックを3増やしてー、相手のライフにそのまま攻撃できまーす!」


 『アークナイト・スライム』

 アタック3/ライフ3→アタック6/ライフ3


「さらに効果を発動してー、『アークナイト・スライム』の効果で『スターヴ・ゴースト』を手札に戻しまーす! ……あっ、ついでに破壊された『カップルン・スライム』の効果でドロップゾーンからコスト1の『スライム』を手札に加えますねー」


 受付嬢

 手札6→7


「くっ」


 よりによってそっちを狙われたか。

 バトルゾーンを離れた『スターヴ・ゴースト』が俺の手札へと舞い戻る。


(これはまずいな……)


 相手のバトルゾーンには『ガード』持ちのユニットと、大型アタッカーが一体。

 おまけに次のターンで動きの起点にしようとしていたカードがどかされてしまった。

 こうなれば『アレ』を切らざるを得ない。

 受付嬢が大きく右手を振り上げる姿を見て。

 俺は、クッと目を細めて覚悟を決めた。


「行きますよー! 私はー、『アークナイト・スライム』で攻撃でーす!」


 受付嬢の右手が勢いよく振り下ろされる。

 それを受けた『アークナイト・スライム』は、剣を構えると俺に向かって一直線に突っ込んできた。

 黒い影が、俺のバトルゾーンを飛び越す。

 やるなら――今だ!




「ここで俺はドロップゾーンにいる『スケイルゾンビ』の効果を発動するッ!」




「はいー?」


 右手を横薙ぎに振り抜き、声を張り上げる。

 そんな俺の奇行に受付嬢の目が丸く開く。

 その中で、一枚のカードが俺のドロップゾーンからゆっくりと浮かび上がった。


 『スケイルゾンビ』

 コスト3/闇属性/アタック1/ライフ1

 【効果】

 『ガード』

 ①相手ユニットが攻撃する時、自分のライフに3ダメージを与えて発動できる。このユニットをドロップゾーンからノーコスト召喚する。

 ②①の効果でノーコスト召喚したこのユニットはドロップゾーンに送られる時、裏向きにして置かれる。


「相手のユニットが攻撃する時! 『スケイルゾンビ』は自分のライフに3ダメージを与えることでドロップゾーンからノーコスト召喚できる! 俺は自分のライフに3ダメージを与えて『スケイルゾンビ』をノーコスト召喚だ!」


 クロハル

 ライフ9→6


 背に腹は変えられない。

 突然襲ってきた重たい衝撃。

 ライフが減る時にやってくる立体(アクティブ)バトル特有のその衝撃を負いながら。

 俺は『スケイルゾンビ』を横向きにした。


「そして、ガードだ! 迎え撃て『スケイルゾンビ』!」


 俺のバトルゾーンに現れた包帯巻きのガイコツが、剣を振り下ろそうとした『アークナイト・スライム』の前に割って入る。

 そして、ちょうど細い腕を斜め十字に組んだところに、その細い剣がスパリと閃いた。


 『アークナイト・スライム』

 アタック6/ライフ3→アタック6/ライフ2


 『スケイルゾンビ』

 アタック1/ライフ1→アタック1/ライフ0


「あらー、防がれちゃいましたかー。そのカード、すごいですねー」

(よく言うぜ……)


 バトルに敗れた『スケイルゾンビ』が、空中で舞いながら鮮やかに裏返ってドロップゾーンに送られる。

 その様相を側目に捉えながら、俺は静かに受付嬢に目を向けた。


(……)


 相変わらず。

 ホワンホワンとしていて本当に驚いているようには見えない。

 『スケイルゾンビ』は最近当てたばかりのカードで知っている人は少ないはず。

 それなのにあまり驚いていないように見えるのは……俺が何かをする、と予想していたのだろうか。

 仮にそうだったとすれば、強い――というよりは、


(……恐ろしいな)


 そう思ってジッと見ていると、俺と目を合わせた受付嬢がにっこりと笑った。


「私はこれでターンエンドでーす。あなたのターンですねー?」

「……そう、ですね」


 ようやく、ターンが回ってきた。

 デッキが光り、その上に指を乗せた俺はカードを引く前に、ふとそれぞれのバトルゾーンを見た。


 天見黒春


 『死皇帝の細工人』

 アタック1/ライフ1


 『死皇帝の愛犬』

 アタック1/ライフ1


 受付嬢


 『アークナイト・スライム』

 アタック6/ライフ2


 『バリアン・スライム』

 アタック1/ライフ2

 『ガード』


(守りもバッチシ、って感じだな)


 相手の盤面は固められていて、容易に突破することはできない。

 深く、息を吸って。

 ゆっくりと、息を吐き出す。


(……よし)


 少しだけ湧きあがった不安と、相手に抱いた僅かばかりの恐怖。

 それらをゴクンと飲み込んで、


(頼む……良いカードよ、来てくれッ!)


 ちっぽけな願いを込めて。

 俺は、デッキに乗せた指に、グッと力を込めた。





意地の投稿です。

何か誤字や脱字、ミスなどがあれば教えてもらえると嬉しいです。


『アークナイト・スライム』のテキストを変更しました。


ちょっと強くなりました。


2022/7/30 少しだけ修正しました。


評価や感想、誤字脱字や要望などありましたらよろしくお願いします!

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