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『キング オブ マスターズ』  作者: 大和大和
~スタートカラーズ・セットアップ~
24/70

第24話 テーマデッキの強さ





「俺のターン、ドロー!」


 クロハル

 マナ0→4

 手札3→4


 カードをめくり、ゆっくりとそれを表向きにする。

 特に期待していたわけではなかったが、俺が引いたのは一枚のスペルカードだった。


(不等価交換か……)


 幸か不幸か。

 俺が引いたのは、墓地を肥やすことのできる優秀なカード――『不等価交換』だった。

 これは、いけるか。


(いや、いけるな。いけちゃうか)

「なら、いくか……俺は1マナを使い、手札からスペル『不等価交換』を発動。カードを1枚ドローし、その後に手札を2枚捨てる」


 マナ4→3

 手札4→3→4→2


「残念だけど、そんなことしたって私の『流制の水龍フェイ・ターク』には無意味よ?」

「『苦痛の一撃』一枚で死ぬけどな」

「うっさい」


 俺が何か言えばすぐに言い返してくる。

 これが俗に言う、打てば響くようなってヤツか。


「で、俺はさらに1マナを使い、手札から――『死皇帝の愛犬』を召喚する」


 マナ3→2

 手札2→1


 『死皇帝の愛犬』

 コスト1/闇属性/アタック1/ライフ1

 【効果】

 ①このユニットはドロップゾーンから召喚できる。

 ②1ターンに1度だけ、自分の手札を1枚捨てて発動できる。デッキからコスト3以下の闇属性ユニット、または、『死皇帝』カード1枚を手札に加えてからデッキをシャッフルする。その後、自分のライフに2ダメージ与える。



「っ! また『死皇帝』……!」


 メリルが何やら歯噛みしている。

 また、ってまだ二体しか出してないんだが。

 でもまあ。

 俺のデッキが何のデッキか。

 ここまで来れば分かる人には分かっただろう。


 俺が作ったのは、『キング オブ マスターズ』で一番最初に誕生したテーマデッキ――『死皇帝デッキ』だ。

 テーマデッキというのは、ある一つのテーマを元に作られたデッキのことだ。

 その中でも『死皇帝』は闇属性を中心としたテーマで、その特徴はドロップゾーンを利用した粘り強い展開力と盤面の制圧力。


 しかし、残念ながらカードが足りなくて今はまだ不完全な形でしか作れず、本来の性能を発揮することはできない。

 それでも。

 言えることが一つある。

 ただ一つ、言葉を付け足していいのなら一言だけ。







 ――『キング オブ マスターズ』のテーマは強い







「俺は『死皇帝の愛犬』の効果を発動! こいつは」

「待ちなさい! 私はその効果に対して『流制の水龍フェイ・ターク』の効果を発動するわ!」

「おっと?」


 急に顔を強張らせたメリルが『流制の水龍フェイ・ターク』の効果を発動させた。

 発動しかけた効果が無効にされ、俺の『死皇帝の愛犬』がドロップゾーンへと送られる。


(まさかコイツの効果を無効化されるとは……)


 痛いと言えば痛い。

 だが、ここでフェイ龍の効果を切ってくれるとは全く思ってなかった。

 この動き方は多分、知らないカードに対して嫌な予感がしたからか。

 素直に嬉しい誤算だ。

 本当だったらもう少しドロップゾーン――いや、もうめんどいから墓地でいいや。

 もっと墓地のカードを増やしてから動くつもりだったけどこうなったら話は別だ。

 一気に決めよう。


「ならば、っと。俺はドロップゾーンにいる『死皇帝の家臣』の効果を発動」

「っ!? ドロップゾーンからですって!?」


 何だかメリルが驚きっぱなしだが、今回はスルーを決め込む。

 俺は慣れた手付きで墓地にいた『死皇帝の家臣』を裏向きにした。


 『死皇帝の家臣』

 コスト3/闇属性/アタック2/ライフ2

 【効果】

 ①このユニットはドロップゾーンから召喚できる。

 ②ドロップゾーンにいるこのユニットを裏向きにして発動できる。そのターンのエンド時まで闇属性ユニット1体の召喚コストを2減らす。



「俺はドロップゾーンにいる『死皇帝の家臣』1体を裏向きにすることでこのターン、闇属性ユニット1体のコストを2減らして召喚できる」

「そ、そんな効果もあるの?」

「あぁ、……ってお前、こういう効果は初めてか?」

「今初めて知ったわよ!」


 そんなことありえるのか。

 メリルは小さい時からやっていたらしいから知らないなんてことはないはず、と。

 そう思ったのも束の間、


(せや、こいつらバリッバリの新カードだったわ)


 失念していた。

 というより、すっかり忘れていた。

 俺が手に入れた『死皇帝』シリーズ。

 そのカードが出てきたのは昨日買ったばかりの最新パックだ。

 アルスやメリルが知らなかったとしても何もおかしなところはない。

 むしろ、これを初っ端から使ってる俺の方がおかしいくらいだ。

 ……こういうのは次から気を付けた方が良さそうだな。


「まあ、とにかくだ。俺はドロップゾーンの『死皇帝の家臣』を裏向きにする。そして……」


 俺の墓地にはすでにあるユニットが眠っている。

 フェイ龍がいない今、そいつの邪魔をするモノは存在しない。


「俺は『死皇帝の家臣』の効果でコストを2減らし、残った2マナを使い、ドロップゾーンから『死の皇帝ネメシス』を召喚する!」

「っ!」


 しまった、とメリルの顔が語っている。

 そんな彼女の前に。

 俺は墓地から一枚のカードをバトルゾーンに出した。

 そこには豪華な黒いローブに身を包み、金色の王冠をかぶった黒髪で色白なイケメンの人が描かれていた。


 マナ2→0


 『死の皇帝ネメシス』

 コスト6/闇属性/アタック3/ライフ5

 【効果】

 ①このユニットは召喚コストを2減らしてドロップゾーンから召喚できる。

 ②自分のバトルゾーンにユニットが出た時に発動できる。相手ユニット1体を選んで破壊する。

 ③このユニットが破壊された時に発動する。相手フィールドのカード1枚を選んで破壊する。


「こ、コスト6のユニットをたったの2マナで……」


 目を開き、呆然とした様子のメリルが妙なことを口走る。

 異議あり。

 その言葉は『流制の水龍フェイ・ターク』にそっくりそのまま言ってくれ。


「ここで『死の皇帝ネメシス』の効果を発動。自分のユニットがバトルゾーンに出た時、相手のユニット1体を破壊できる。この効果は『死の皇帝ネメシス』が出た時にも使うことができる。俺は破壊するのは『スライム』――お前だ」

「くっ!」


 これで五体も並んでいた相手のユニットは残り三体。

 もう少し、減らせるだけ減らしておくか。


「俺はさらにドロップゾーンにいる『死皇帝の近衛兵』の効果を発動。自分のバトルゾーンにコスト6以上の闇属性ユニットが召喚された時、このユニットはドロップゾーンからノーコスト召喚できる。というわけで、ノーコスト召喚だ」


 『死皇帝の近衛兵』

 コスト4/闇属性/アタック2/ライフ3

 【効果】

 『ガード』

 ①このユニットはドロップゾーンから召喚できる。

 ②自分のバトルゾーンにコスト6以上の闇属性ユニット、または、『死皇帝』ユニットが出た時に発動できる。このユニットをドロップゾーンからノーコスト召喚する。

 ③このユニットがバトルゾーンに出た時に発動する。自分のライフに2ダメージ与える。


「何よそのインチキカード!?」

「そこまでインチキじゃねーよ!」


 確かに効果はインチキっぽく見えるかもしれない。

 けど、フェイ龍ほどじゃないってことだけは断言できる。

 あれこそが真のインチキカードだよ。


「さて、『死皇帝の近衛兵』の効果で自分のライフに2ダメージ。で、俺のバトルゾーンにユニットが出たことで『死の皇帝ネメシス』の効果も発動。『スライム』を破壊させてもらうぞ」

「ぐぐぐっ……」


 クロハル

 ライフ13→11


 悔しかろう。

 悔しかろうなぁ。

 俺は自分のライフを『11』に減らし、相手の『スライム』を墓地に飛ばす。

 残ったのは、『無名の釣り人』一体。


「アタックフェイズ。俺は『スターヴ・ゴースト』で相手の『無名の釣り人』に攻撃」


 『スターヴ・ゴースト』

 アタック4/ライフ3→アタック4/ライフ2


 『無名の釣り人』

 アタック1/ライフ1→アタック1/ライフ0


 最後に。

 残っていた相手のユニットを消し飛ばす。

 これでようやく、メリルのバトルゾーンからユニットがいなくなった。

 バトルゾーンにユニットがいなければ水属性のデッキは力を発揮できない。

 ここまでやれば、相手もさぞ動きづらくなることだろう、と。

 そう考えた俺はメリルの方を見る。

 そこでは――茫然自失となったメリルがパクパクと口を震わせていた。




2022/7/30 大幅に色々と修正しました。『死の皇帝ネメシス』のテキストを修正しました。


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