第22話 立ち上がり
先行と後攻。
それを決めるために、じゃんけんをする。
というより、じゃんけんした。
したんだけど、
「よし! 先行は私ね!」
「うそやん」
あれれー、おかっしいぞー。
なんでじゃんけんで勝てないんだ俺。
最近、先行取れてないな、とか思っていたから先行取りたかったのに。
また後攻かよ。
「じゃあ行くわよ!」
「おう」
「「バトル、スタート!」」
声を合わせて宣言。
先行のドローを飛ばし、メリルは1マナを手にした。
「私は1マナを使って、手札から『スライム』を召喚!」
メリル
マナ1→0
手札5→4
『スライム』
コスト1/水属性/アタック1/ライフ1
【効果】
「これで、ターンエンドよ」
(ほぉ、水属性か。……でも、随分と静かな立ち上がりだな)
そう思い、メリルの顔を見てみるが、表情は真剣そのもの。
ポーカーフェイスなんかされたら手札の良し悪しがわからないな。
相手の手札が良いのか悪いのか。
まあ、でも、相手のデッキがどういうものかは大体予想がついた。
判断するのを諦めた俺は、大人しくプレイすることにする。
「じゃあ、俺のターン。ドロー」
クロハル
マナ1→1
手札5→6
デッキからカードをめくる。
そして、スッと一枚のカードをフィールドに置いた。
「俺は1マナを使い、『ダークシャドウ』を召喚」
マナ1→0
手札6→5
『ダークシャドウ』
コスト1/闇属性/アタック1/ライフ1
【効果】
①このユニットがバトルゾーンに出た時に発動する。全てのプレイヤーのライフに1ダメージ与える。
「『ダークシャドウ』の効果でお互いのライフに1ダメージを与えてターンエンド」
クロハル
ライフ20→19
メリル
ライフ20→19
「地味ね」
「地味で悪かったな」
これしかなかったんだよ。
なんて言葉をゴクンと飲み込む。
「私のターン、ドロー!」
メリル
マナ0→2
手札4→5
「そっか……じゃあ、私は1マナずつ使って、手札から『スライム』と『水精ミリー』を召喚よ!」
マナ2→0
手札5→3
『スライム』
アタック1/ライフ1
『水精ミリー』
コスト1/水属性/アタック1/ライフ1
【効果】
①このユニットがバトルゾーンに出た時、自分のバトルゾーンに他のコスト2以下のユニットがいれば発動できる。カードを1枚ドローする。
「うーん、なるほど」
相手のバトルゾーンに、水色のわらび餅が二体と背中に半透明な羽が付いた幼女が並ぶ。
そう来たか。
となれば、次のターンには場を固めなくてはいけないな。
「私は『水精ミリー』の効果を発動! 私のバトルゾーンにはコスト2以下のユニットがいるから1枚ドローするわ!」
「どうぞどうぞ」
手札3→4
『水精ミリー』の効果を宣言したメリルがカードを一枚ドローする。
相変わらず水属性は動きが安定してていいな。
で、ここから相手はどう動いてくるだろうか。
ドクンと心臓が跳ねて、小さく身構える。
しかし、
「攻撃はしないわ。ターンエンド!」
「おっ、いいのか?」
「これでいいのよ」
攻めてこない。
ということは多少は闇属性の特徴を理解している、ということだな。
強敵だ。
そう結論付けた俺は、ササッとターンを進めることにした。
「俺のターン。ドロー!」
マナ0→2
手札4→5
カードを一枚めくる。
さて、どうしようか。
と、このターンでの動きを考えようとした俺は、ドローしたカードに目を向けた。
(おっ、ナイス!)
早速来たか。
いや、来てくれた、が正しいな。
ドローしたカードを手札に加えない。
マナを使い、俺は引いてきたカードをそのままフィールドへと送り出した。
「俺は2マナを使い、手札から『死皇帝の使い魔』を召喚する」
マナ2→0
手札5→4
『死皇帝の使い魔』
コスト2/闇属性/アタック2/ライフ2
【効果】
①このユニットはドロップゾーンから召喚できる。
②このユニットがバトルゾーンに出た時に発動できる。デッキの上から5枚を見る。その中からユニット1体を選んでドロップゾーンに送り、残りを好きな順番でデッキの下に置く。その後、自分のライフに3ダメージ与える。
「死皇帝の使い魔……?」
「なにそれ!?」
俺が新しく手に入れた闇属性のカードがバトルゾーンに躍り出る。
聞き慣れないカードの名前に。
メリルは目を細め、アルスは驚く。
俺はそんな二人の前で、『死皇帝の使い魔』の効果を発動させた。
「俺は『死皇帝の使い魔』の効果を発動。デッキの上から五枚を見て、その中からユニット1体をドロップゾーンに送る」
「なによそれ!?」
「ドロップゾーンに送っちゃうの!?」
二人共、ちょっと反応がでかくないですかね。
特にアルス。
おまえちょっと声大きいぞ。
ほら、あっちでレオさんが苦笑いしちゃってるやんけ。
そんなことを思いつつ、デッキの上から五枚のカードをめくり、ジッと見つめる。
あっ。
良いの見っけ、っと。
「俺は五枚の中からユニット――『死の皇帝ネメシス』をドロップゾーンに送る」
「……っ!?」
その名前を聞いて。
明らかに、メリルの目の色が変わった。
パックから出た新カードだから、それがどういう効果をしてるかまではわからないだろう。
だが、その名前から嫌な予感はしたらしかった。
勘のいいガキは嫌いだよ。
「で、残りのカードは好きな順番でデッキの下に置き、その後に自分のライフに3ダメージを与える」
「さ、3ダメージ!?」
「でかいわね……」
「それはそう」
クロハル
ライフ19→16
『死皇帝の使い魔』の効果によって俺のライフが『16』になる。
「ここで俺は手札の『スターヴ・ゴースト』の効果を発動。どういう効果かはわかるよな?」
「ぐっ、随分と嫌らしいカードを持ってるじゃない」
「そりゃあな」
自分のライフにダメージを受けたことで、『スターヴ・ゴースト』を手札からノーコスト召喚できる。
その効果を使って『死皇帝の使い魔』の隣に、『スターヴ・ゴースト』のカードを置く。
こうして、俺のバトルゾーンには、大鎌を持った小さな角を生やした子供と、ひょろひょろしたオバケが並んだ。
『スターヴ・ゴースト』はどんなデッキにも入れられる優秀なカードです、っと。
クロハル
ライフ16→15
手札4→3
「俺は『スターヴ・ゴースト』の効果を発動。受けたダメージの分だけアタックとライフをプラスし、自分のライフに1ダメージを与える。俺が受けたダメージは3。よって、『スターヴ・ゴースト』のアタックとライフは……」
『スターヴ・ゴースト』
アタック1/ライフ1→アタック4/ライフ4
「こうなるな」
「ウソでしょっ!?」
「うわぁ」
おいこら。
うわぁ、とか言うんじゃないよ。
アルス、お前はこっち側なんだから引くんじゃない。
ドン引きするな。
「あとは……そうだな。『ダークシャドウ』で『スライム』に攻撃」
『ダークシャドウ』
アタック1/ライフ1→アタック1/ライフ0
『スライム』
アタック1/ライフ1→アタック1/ライフ0
「これで俺はターンエンドだ」
「くっ、中々にやってくれるわね」
『ダークシャドウ』と『スライム』がぶつかり、それぞれがドロップゾーンに送られる。
(とにかく、相手のユニットを抑えられるだけ抑えないとな)
「これで俺はターンエンドだ」
このターンで、俺のライフは『15』まで減った。
あともう少し削ることができれば、一気に動きを加速できる。
そんな考えを秘めながら。
俺はメリルにターンを渡した。
タイトルを少し変更しました。
2022/7/30 大幅に色々と修正しました。
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