第17話 燃えろ! 怒涛の業火と烈火の咆哮
「私のターン、ドロー!」
メリル
マナ0→4
手札5→6
先行の四ターン目。
カードをドローしたメリルさんは、すぐに手札から一枚のカードを選んだ。
「私は2マナを使って、手札からスペル『ウォータースプラッシュ』を発動! フィールドにいるコスト5以下のユニット1体を選んで手札に戻す! 私が選ぶのはもちろん、『炎の導師マーズ』よ!」
「くっ!」
マナ4→2
手札6→5
アルス
手札4→5
また帰ってきた。
これで、僕のバトルゾーンはまたガラ空きになってしまった。
だけど、やっぱり。
メリルさんはそれだけで終わらせることはしなかった。
「私は最後に残った2マナを使って、『水の妖精アリア』を召喚!」
メリル
マナ2→0
手札6→5
『水の妖精アリア』
コスト2/水属性/アタック1/ライフ1
【効果】
①このユニットがバトルゾーンに出た時に発動できる。カードを1枚ドローする。
「私は召喚した『水の妖精アリア』の効果を発動! デッキからカードを1枚ドローするわ」
手札5→6
「うわぁ、手札が……」
いっぱいだ。
メリルさんの手札が全部で七枚。
こんなに手札がいっぱいあるのも、僕は初めて見た。
「さあ、攻撃の時間よ! 私は『川流れのハッチ』と『激流剣士アトロノス』で相手に攻撃!」
「うわあ!」
『川流れのハッチ』
アタック1
『激流剣士アトロノス』
アタック3
アルス
ライフ20→16
相手のアタックの合計は『4』。
今の今まで、『20』のまま変わっていなかった僕のライフは。
ついに『16』へと変わった。
「これで私はターンエンド。あなたの番よ」
「う、うん! 僕のターン……ドロー!」
アルス
マナ0→4
手札5→6
後攻の四ターン目である僕のターン。
カードをドローした僕は左手にある四つのマナと、手札にあるカードを見た。
(ど、どうしよう。どうすればいいんだろう……)
全然、攻撃ができない。
攻撃するためにユニットを召喚しても、すぐに手札に戻されてしまう。
それだけじゃなく、相手のバトルゾーンには『ガード』を持ったユニットもいる。
きっと、僕が『速攻』を持ったユニットを召喚しても、相手のライフにダメージを与えることは、
(…………あれ?)
できない。
そう思っていた僕は、ふとレオさんが言っていたことを思い出した。
――アルス君がスペルカードを使うところはあんまり見たことがないんだよね
――だから、スペルカードを上手く使えるようになれば、クロハル君ともいいバトルができるようになるんじゃないかな
「スペル……カード……」
今、僕の手札は六枚。
その中に、一枚のスペルカード。
(これは……もしかして!)
そのスペルカードの効果を見て、僕の手札にある一枚のカードを見る。
いける、かもしれない。
そう思った僕は、早速、マナを使って動いてみることにした。
「まずは1マナを使って、『マグマグスライム』を召喚!」
マナ4→3
手札6→5
『マグマグスライム』
アタック1/ライフ1
僕のバトルゾーンに赤いお餅のようなスライムが現れる。
そして、
「そして、僕は3マナを使って、手札からスペル『バーニング・チェンジ』を発動するよ!」
マナ3→0
手札5→4
「『バーニング・チェンジ』……?」
「おっ?」
僕が初めて使うスペルカードに。
メリルさんは目を細め、今まで何も言わなかったレオさんが驚いたような声を出す。
(これが、僕にできる全力だ!)
「『バーニング・チェンジ』の効果を発動! 自分のバトルゾーンにいるユニット1体を破壊する。その後、手札からコスト6以下の火属性ユニット1体をノーコスト召喚できる!」
「な、なんですって!?」
「僕が破壊するのは、もちろん『マグマグスライム』!」
僕の『マグマグスライム』が、一瞬にして真っ赤な炎に包まれる。
すると、僕がスペルゾーンに出した『バーニング・チェンジ』のカードと、手札にある一枚のカードが強く光った。
「そして!」
そのカードに触れた途端、急に体が熱くなった。
まるで、僕の中から熱い熱い炎が燃えているような。
そんな風に思えるくらい、僕の体が熱くなる。
「怒りに燃える赤き炎よ! 大地を焦がして吠え猛ろ! ノーコスト召喚! 燃え盛れ! 『炎獣イグニ』!」
僕のバトルゾーンで燃えていた炎は一気に膨らむと、勢いよく爆発した。
ドガン、と大きな音がして、空気が震えるような雄叫びがその中から響き渡る。
やがて、爆発から生まれた黒い煙が晴れる。
そこに立っていたのは。
――炎の鬣を真っ赤に燃やした一匹の大きな獅子だった。
『炎獣イグニ』
コスト6/火属性/アタック5/ライフ3
【効果】
『速攻』
①このユニットが攻撃する時に発動できる。相手ユニット1体を選んで5ダメージ与える。
アルス
手札4→3
「こ、これが『炎獣イグニ』……?」
「さあ、行くよ! 僕は『炎獣イグニ』で『川流れのハッチ』を攻撃!」
低く身構えた炎の獅子――『炎獣イグニ』がその鬣を激しく逆立てる。
しかし、獲物に飛び掛かることはなく、口から大量の炎がこぼれる。
僕はそれが『炎獣イグニ』の効果であることにすぐに気付いた。
「ここで僕は『炎獣イグニ』の効果を発動! 『炎獣イグニ』は攻撃する時に相手のユニット1体に5ダメージを与えることができる!」
「なっ!?」
「ダメージを与えるのは『激流剣士アトロノス』だ! いっけぇ! ロア・フレイム!」
そんな僕の声に合わせて。
『炎獣イグニ』は大きな雄叫びと同時に、その口から大量の炎を爆発させた。
「くっ!」
メリルさんが迫りくる炎に両腕で顔を隠した。
『激流剣士アトロノス』はそんなメリルさんを持っていた剣を前に出して、炎から身を守ろうとする。
だけど、爆発に飲み込まれた『激流剣士アトロノス』は、そのまま爆炎と共にバトルゾーンからいなくなってしまった。
『激流剣士アトロノス』
ライフ3→0
「まさかこんな効果を持っていたなんて……」
「まだだ! このまま『炎獣イグニ』で『川流れのハッチ』に攻撃! イグニ・ファイヤー!」
再び、『炎獣イグニ』が低く身構える。
そして、今度こそ。
『炎獣イグニ』は『川流れのハッチ』に襲い掛かった。
燃え盛る鬣を真っ赤に染めて、炎の溢れる口で食らい付く。
『炎獣イグニ』
アタック5/ライフ3→アタック5/ライフ2
『川流れのハッチ』
アタック1/ライフ1→アタック1/ライフ0
攻撃された『川流れのハッチ』は炎に焼かれながらもボロボロな恰好で『炎獣イグニ』から逃げ出した。
そして、そのまま怯えるようにしてドロップゾーンへと飛び込んでいった。
「あとは……そうだ! 僕は手札にある『炎の導師マーズ』の効果を発動! バトルで相手のユニットを倒したからノーコスト召喚できる! 来い! 『炎の導師マーズ』!」
手札3→2
『炎の導師マーズ』
アタック3/ライフ3
カードが光り、バトルゾーンに赤いローブを着た男の人がまた現れる。
そして、僕の目の前で『炎の導師マーズ』は三回目となる効果を発動させた。
『炎獣イグニ』
アタック5→アタック7
『炎の導師マーズ』
アタック3→アタック5
「これで僕はターン、エンドだ!」
やった。
一気に相手のユニットを二体も倒した。
嬉しくなって、グッと力強くガッツポーズを決める。
「私のターン、ドロー!」
メリル
マナ0→5
手札6→7
ターンが移り、メリルさんがデッキからカードをドローする。
しかし、それを手札に加えると、メリルさんは静かに僕のことを見てきた。
「流石に驚いたわ。最初は大して強くもなさそうだと思ってたけど」
「え、あ、うん。確かに僕は強くはないけど……」
そ、そんなはっきり言わなくても。
その言葉にガクン、と肩を落とす。
だけど、メリルさんは僕のバトルゾーンにいる『炎獣イグニ』と『炎の導師マーズ』を見て。
そのまま話を続けた。
「ここまでやられて。それでもあなたが弱い――なんて考えるほど私はバカじゃないわ!」
「っ!」
そう言って。
これでもか、と目を鋭くしたメリルさんは。
すぐさま一枚のカードに触れると、それをバトルゾーンに向かって投げ付けた。
「私はまず、3マナを使って手札から『マリリン・マリネル』を召喚! そして、『マリリン・マリネル』の効果を発動! 私は手札から『無名の釣り人』をノーコスト召喚するわ!」
「えっ……?」
メリル
マナ5→2
手札7→5
『マリリン・マリネル』
アタック1/ライフ1
『無名の釣り人』
アタック1/ライフ1
メリルさんのバトルゾーンに青い美人さんとさっきの釣り人さんが現れる。
「さらにノーコスト召喚した『無名の釣り人』の効果でドロップゾーンから『川流れのハッチ』をノーコスト召喚!」
『川流れのハッチ』
アタック1/ライフ1
『ガード』
「は、早いっ!」
あっという間に、四体のユニットがメリルさんのバトルゾーンに現れる。
その早さに驚いていると、そんな僕に向かって。
メリルさんは手札から一枚のカードをくるりと表向きにした。
「ここで私は、手札の『流制の水龍フェイ・ターク』の効果を発動!」
気付けば、表向きにされたカードに向かって次々と光が集まり始めていた。
その光を放っていたのは――バトルゾーンにいる四体のユニットだった。
(こ、これは……!?)
「この子は自分のバトルゾーンにいるユニットの数だけコストを減らして召喚することができる。よって、……私は! コスト6の『流制の水龍フェイ・ターク』を! コスト2まで減らして召喚するわ!」
段々と光が集まっていき、ついには、表向きにされていたカード――『流制の水龍フェイ・ターク』が真っ白に輝き出した。
それはまるで、真昼の太陽のような光で。
「紡がれた絆が大いなる激流を支配する! 治めなさい! 『流制の水龍フェイ・ターク』!」
最後に一個だけ残ったメリルさんのバトルゾーン。
そこに、メリルさんの言葉と共に現れたのは、一匹の龍だった。
メリル
マナ2→0
手札5→4
『流制の水龍フェイ・ターク』
アタック3/ライフ3
(す、すごい……綺麗だ……)
馬のように、スラリと伸びた細長い四つの足。
水色の鱗があるとは思えないような、川の流れのように綺麗な体。
そして、その背中から伸びた細長い雲のような四つの白い翼。
長い首を持ち上げ、美しい宝石のような赤い瞳を開いたその龍は。
透明のような薄い霧をその身にまといながら、ゆっくりと。
僕と『炎獣イグニ』たちのいるバトルゾーンを見下ろす。
その姿を見て、僕は直感した。
これが、メリルさんのエースなのだ、と。
「私は『流制の水龍フェイ・ターク』の効果を発動!」
「っ!」
『流制の水龍フェイ・ターク』に見とれていた僕は、その声に驚いた。
なんとか我に返って、何が来るのか、と身構える。
しかし、
「私はデッキからカードを1枚ドローするわ」
手札4→5
「これで私はターンエンド」
「……えっ?」
身構えていた僕は、思わず変な声を出してしまった。
あんなに凄そうなユニットなのに。
(カードをドローするだけ……?)
いつの間にか相手のターンが終わって、ターンが僕に回って来る。
僕はそのことを不思議に思いながらもデッキからカードをめくった。
2022/7/30 大幅に色々と修正しました。
2022/8/21 何故か破壊されたはずの『水聖霊ディーネハイト』が死後の念を発動していたので封印させました!
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