表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『キング オブ マスターズ』  作者: 大和大和
~スタートカラーズ・セットアップ~
16/70

第16話 その実力、激流の如し





 ターンが始まったメリルさんは、デッキに指を乗せてからゆっくりと、静かに目を閉じた。

 長くはない。

 けど、少しだけ。

 小さく息を吐くと、メリルさんは――カッと目を開いた。


「っ!」


 何かが、変わった。

 何が変わったのかはわからない。

 でも、確かに。

 何かが変わったことを僕は感じた。


「悪いけど……私は負けない! 私のターン、ドロー!」


 メリル

 マナ0→3

 手札4→5


 メリルさんがカードをドローする。

 そして、『メリルさんのターン』が始まった。


「私は3マナを使って、『マリリン・マリネル』を召喚!」


 マナ3→0

 手札5→4


 『マリリン・マリネル』

 コスト3/水属性/アタック1/ライフ1

 【効果】

 ①このユニットがバトルゾーンに出た時に発動できる。自分の手札からコスト3以下の水属性ユニット1体をノーコスト召喚する。


 バン、とバトルゾーンに置いたカードから出てきたのは、スカートとシャツがそのまま合体したような服を着た女の人。

 美人な女の人だった。


「私は『マリリン・マリネル』の効果を発動! 『マリリン・マリネル』がバトルゾーンに出た時、手札からコスト3以下の水属性ユニット一体をノーコスト召喚できる! 私はもう一体の『無名の釣り人』をノーコスト召喚するわ!」

「うげっ!」


 手札4→3


 『無名の釣り人』

 アタック1/ライフ1


 それはさっきのユニットだ。

 うっ、と僕の口が変になった。

 そんな僕の前で、メリルさんの『マリリン・マリネル』がパパン、と手を叩く。

 すると、その隣に水の柱が吹き上がり、その中からさっきの釣り人さんが現れた。


「そして、今度は『無名の釣り人』の効果を発動! 私はドロップゾーンからコスト2以下のユニットである『川流れのハッチ』をノーコスト召喚!」


 『川流れのハッチ』

 アタック1/ライフ1

 『ガード』


「うわわっ!」


 すごい、どんどん出てくる。

 あっという間に、メリルさんのバトルゾーンはユニットでいっぱいになってしまった。


 『マリリン・マリネル』

 アタック1/ライフ1


 『無名の釣り人』

 アタック1/ライフ1


 『無名の釣り人』

 アタック1/ライフ1


 『川流れのハッチ』

 アタック1/ライフ1

 『ガード』


(こ、こんなにすぐにたくさん召喚してくるなんて!)


 僕のバトルゾーンには『炎の導師マーズ』という強いユニットがいる。

 アタックもライフも僕の『炎の導師マーズ』の方が上だ。

 でも、こんなにたくさん出されると、本当に大丈夫なのかと心配になる。

 そんな僕を余所に、メリルさんはクルッと一枚のカードを見せてきた。


「さらに、私は手札の『水聖霊ディーネハイト』の効果を発動するわ!」

「えぇっ!?」

「私のバトルゾーンにはユニットが四体いる。よって、『水聖霊ディーネハイト』はコストを4まで減らして召喚できる! 私はコストが0になった『水聖霊ディーネハイト』を手札からノーコスト召喚!」


 まだ、止まらない。

 そのことに驚く僕の前に、今度は、透明なガラスの玉を持った髪の毛が水になっている綺麗な女の人が現れた。


 手札3→2


 『水聖霊ディーネハイト』

 コスト4/水属性/アタック2/ライフ2

 【効果】

 ①このユニットは自分のバトルゾーンにいるユニット1体につき、召喚コストを-1して召喚できる。

 ②自分のバトルゾーンにユニットが出た時に発動できる。カードを1枚ドローする。


「私は今召喚した『水聖霊ディーネハイト』の効果を発動! 自分のバトルゾーンにユニットが出た時、カードを1枚ドローできる。この効果は『水聖霊ディーネハイト』が出た時にも発動できるわ!」


 手札2→3


 自分の効果を、自分にも使うことができる。

 僕の『炎の導師マーズ』と同じような効果だ。

 たった一枚のカードから、メリルさんのバトルゾーンはいっぱいになってしまった。

 バトルゾーンに出せるユニットは五体まで。

 それがいっぱいになるまで召喚されたのは、僕にとって初めてのことだった。


「す、すごい……」

「まだ驚くのは早いわよ。私は、手札から『激流剣士アトロノス』の効果を発動するわ!」

「えっ?」


 まだあるの?

 そんな僕の心を置き去りにして、メリルさんの手札がまた一枚。

 くるりと表向きになって、僕の目にそのカードが映った。


 手札3→2


 『激流剣士アトロノス』

 コスト5/水属性/アタック3/ライフ3

 【効果】

 ①このユニットは自分のバトルゾーンにいるユニット3体を手札に戻して手札からノーコスト召喚できる。

 ②このユニットがバトルゾーンに出た時に発動できる。相手ユニット1体を選んで手札に戻す。


「私はバトルゾーンにいる『無名の釣り人』二体と『マリリン・マリネル』を手札に戻して、手札から『激流剣士アトロノス』をノーコスト召喚!」


 手札2→5


 『激流剣士アトロノス』

 アタック3/ライフ3


 水をまとった青い鎧を着た男の人が、三体のユニットと入れ替わるようにバトルゾーンに出る。

 そして、バトルゾーンに出てきた瞬間、勢いよく振り下ろした剣からたくさんの水が飛び出し、僕の『炎の導師マーズ』を押し流した。


 アルス

 手札4→5


「うわぁ! 僕の『炎の導師マーズ』が!?」

「『激流剣士アトロノス』の効果であなたの手札に『炎の導師マーズ』を戻してあげたわ。これであなたのバトルゾーンはガラ空きね」

「くぅ」


 メリルさんの言う通り。

 僕のバトルゾーンからユニットがいなくなってしまった。

 せっかくノーコストで召喚した『炎の導師マーズ』を手札に戻さなくたって良かったのに。

 がっくしと肩を落とした僕の姿を見て、メリルさんはフフッ、と可愛らしく笑った。


「さて、私はバトルゾーンにユニットを出したから『水聖霊ディーネハイト』の効果でカードを1枚ドロー」


 手札5→6


「これでターンエンドよ」

「ぼ、僕のターン! ドロー!」


 アルス

 マナ0→3

 手札5→6


 少しだけ。

 震える指先で、カードをドローする。

 左手には三つのマナが浮かんで、ゆらゆらと揺れている。

 僕のライフはまだ『20』から減っていない。

 だけど、このままでは――負ける。

 そう思うと、僕の手は震えが止まらなかった。


(本当に、全部、全部、クロハル君が言ってた通りだった!)


 まるで、ライフが少なくなったら強くなる闇属性のように。

 水属性はユニットをたくさん召喚することで強くなる。

 それを見せつけられた僕は、でも、


(最後までやるって決めたんだ! 負けるかもしれないけど……最後まで頑張る!)


 グッと右手に力を入れる。

 それから、僕は一枚のカードをバトルゾーンに出した。


「僕は3マナを使って、『フレイム・フレスター』を召喚!」


 僕のバトルゾーンに、両手から炎を出す腰から上が裸になっている赤い髪の男の人が現れた。


 マナ3→0

 手札6→5


 『フレイム・フレスター』

 コスト3/火属性/アタック2/ライフ2

 【効果】

 ①このユニットがバトルゾーンに出た時に発動できる。相手ユニット1体を選んでそのユニットとこのユニットをバトルさせる。


 迷う事なんて何もない。

 僕は、『フレイム・フレスター』の効果を発動させた。


「『フレイム・フレスター』の効果を発動! 僕は『フレイム・フレスター』と『水聖霊ディーネハイト』をバトルさせる! 行け、『フレイム・フレスター』!」


 僕の言葉を受けて、『フレイム・フレスター』が相手の『水聖霊ディーネハイト』に向かって炎を出す。

 だけど、『水聖霊ディーネハイト』も手に持ったガラスの玉から水を出すと、それを飛んで来た炎に向かって勢いよくぶつけた。


 『フレイム・フレスター』

 アタック2/ライフ2→アタック2/ライフ0


 『水聖霊ディーネハイト』

 アタック2/ライフ2→アタック2/ライフ0


「よし!」

「あら」


 僕の声と、メリルさんの驚いたような声が重なった。

 水と炎がぶつかり、白い煙を上げて爆発する。

 やがて、その煙がなくなると、そこにいたはずの『フレイム・フレスター』と『水聖霊ディーネハイト』は綺麗にいなくなっていた。

 そこで僕は、すかさずに手札の『炎の導師マーズ』の効果を発動させた。


「僕は手札の『炎の導師マーズ』の効果を発動! バトルで相手のユニットを破壊したから手札からノーコストで召喚できる! もう一回! 『炎の導師マーズ』をノーコスト召喚!」


 手札5→4


 『炎の導師マーズ』

 アタック3/ライフ3→アタック5/ライフ3


 僕のバトルゾーンに『炎の導師マーズ』が現れ、その手に持った本がもう一度開かれる。

 だけど、このターンはもう攻撃することはできない。

 ちょっとの悔しい気持ちを抑えて。

 僕はターンを終わらせ、メリルさんにターンを渡した。



2022/7/30 大幅に色々と修正しました。

2024/9/21 少しだけ修正しました。

評価や感想、誤字脱字や要望などありましたらよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ