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『キング オブ マスターズ』  作者: 大和大和
~スタートカラーズ・セットアップ~
10/70

第10話 思わぬ激闘





「僕のターン、ドロー!」


 アルス

 マナ0→3

 手札3→4


 アルスの手札が三枚から四枚に増える。


「やった! 来た! 僕は3マナを使って『火炎少女エリナ』を召喚するよ!」

「はぁ!?」


 ちょっと待て。

 それは話が違う。


(どんな引きしてんだよコイツ!?)


 やばい、動揺し過ぎて吐きそう。

 そんな俺を余所に、アルスは『火炎少女エリナ』をバトルゾーンに置いた。


 マナ3→0

 手札4→3


 『火炎少女エリナ』

 コスト3/火属性/アタック2/ライフ2

 【効果】

 ①このユニットがバトルゾーンにいるかぎり、自分のバトルゾーンにいる他の火属性ユニットのアタックを+2する。

 ②このユニットがバトルする時に発動できる。代わりに自分ユニット1体とバトルさせる。


「これで『火炎少女エリナ』の効果が使えるから……僕の『ファイヤーボーイ・ゲキ』と『マグマグスライム』のアタックは2増えて皆アタックが3になるよ!」


 『ファイヤーボーイ・ゲキ』

 アタック1→アタック3


 『マグマグスライム』

 アタック1→アタック3


「マジか」


 じわり、と俺の手が汗でにじむ。


(大丈夫、大丈夫。まだ死なないから落ち着け俺!)


 逸る心を抑え、必死に思考を落ち着かせる。

 まだ三ターン目とは思えないような窮地だが、幸いなことに俺の手札には『苦鳴の龍ベルギア』がある。

 闇属性にはこんな状況でも入れる保険……ではなく、打破できるカードもある。

 諦めるにはまだ早い。


「行っけぇ! 僕は『ファイヤーボーイ・ゲキ』と『マグマグスライム』で攻撃!」

「くっ」


 『ファイヤーボーイ・ゲキ』

 アタック3


 『マグマグスライム』

 アタック3


 クロハル

 ライフ17→11


 アルスの総攻撃。

 17もあった俺のライフが一気に11まで減る。


「あともう少しで僕の勝ちだね! ターンエンド!」

「それはどうだろうな。俺の、ターン」


 クロハル

 マナ0→3


 俺のターンになり、ようやくマナが三つに増えた。

 来てくれ。

 頼む。


「ドロー!」


 手札4→5


 デッキに手を掛け、あるカードを想いながら一枚めくった。

 来い、奇跡のカード!




(いやぁー! お前じゃないんだよなぁ!)




 よりによって。

 俺のドローしたカードは、思っていたのとは違うカード――『ダークシャドウ』だった。

 仕方ない。

 迫る敗北に心を挟まれつつも、俺は最善の手を打つことにした。


「俺はまず、手札にある『漆黒のダースデーモン』の効果を発動する!」


 『漆黒のダースデーモン』

 コスト5/闇属性/アタック2/ライフ3

 【効果】

 『ガード』

 ①このユニットが手札にあれば1ターンに1度だけ、自分のライフに2ダメージ与えて発動できる。そのターンのエンド時までこのユニットの召喚コストを2減らし、アタックとライフを+2する。

 ②このユニットがバトルで相手ユニットを破壊した時に発動する。相手のライフに2ダメージ与える。


「俺は自分のライフに2ダメージを与え、こいつを3マナで召喚する!」

「何それ!?」


 クロハル

 ライフ11→9

 マナ3→0

 手札5→4


 すごい、と初めて見るカードに興奮するアルス。

 しかし、今の俺にはその気持ちに答えられるだけの余裕はなかった。


「さらに、この効果でバトルゾーンに出た『漆黒のダースデーモン』は色々とパワーアップする!」


 『漆黒のダースデーモン』

 アタック2/ライフ3→アタック4/ライフ5


「よくわかんないけどすごい! ……けど『ガード』ってなに?」

「それは後で説明するよ」


 どうせすぐにわかることだからな。

 赤目の黒い姿をした悪魔ようなユニットを手札からバトルゾーンに出す。

 それから、俺は手札をテーブルに置くと、今度はドロップゾーンに手を伸ばした。


「今ので俺のライフは『9』になった。よって、俺はドロップゾーンにいるユニット『暗黒貴族フェルニケ』の効果を発動する!」

「えぇ、そこから!?」


 何もかもが初めてなアルスは終始驚きっぱなしだ。

 疲れないのかな。

 そんなどうでもいいことを思いつつ。

 俺はドロップゾーンから、派手な服に身を包んだ白髪の男が描かれたカードをバトルゾーンに出した。


 『暗黒貴族フェルニケ』

 コスト5/闇属性/アタック2/ライフ4

 【効果】

 『ガード』

 ①自分のライフが10以下であれば1ターンに1度だけ発動できる。このユニットをドロップゾーンからノーコスト召喚する。

 ②このユニットがバトルゾーンに出た時に発動できる。相手ユニット1体を選んで3ダメージ与える。


「俺は今バトルゾーンに出した『暗黒貴族フェルニケ』の効果を発動。こいつはバトルゾーンに出た時に相手ユニット1体に3ダメージを与えることができる。さあ、『火炎少女エリナ』に3ダメージだ!」


 『火炎少女エリナ』

 ライフ2→0


「うわっ、やられたっ!」


 してやられたアルスが悔しそうな表情を浮かべる。

 アルスのバトルゾーンから『火炎少女エリナ』が姿を消した。

 これで相手の攻撃力も落ちたことだし、一気にライフを削られることはなくなっただろう。


「これで俺はターンエンド。アルスのターンだ」

「う、うん。僕のターン、ドロー!」


 アルス

 マナ0→4

 手札3→4


 少し気落ちしたらしいアルスがカードを引く。

 そして、手札から一枚のカードをバトルゾーンに出した。


「僕は4マナを使って『瞬撃のバルサ』を召喚!」


 マナ4→0

 手札4→3


 『瞬撃のバルサ』

 アタック2/ライフ2

 『速攻』


「そして、『ファイヤーボーイ・ゲキ』と『マグマグスライム』と『瞬撃のバルサ』でクロハル君に攻撃するよ!」


 見たことがないカードが出てもなお、攻撃してくるとは。

 中々に肝が座っている。

 そんなアルスに向かって、俺は言い放った。


「そうか。ならば俺は――『ガード』を宣言する!」

「が、ガード?」

「あぁ」


 俺は『漆黒のダースデーモン』のカードに指を乗せると、それをスッと流れるように横向きにした。


「『ガード』を持ったユニットはこうやって横向きにすることで、相手の攻撃を一回だけ代わりに受けてくれるんだ」

「へぇ、そうなんだ! じゃあ、もうクロハル君は『ガード』が使えないってこと?」

「いや、俺のバトルゾーンには『ガード』を持ったユニットが二体いるから二回受けれるぞ」

「えぇえっ!?」


 ちょっと難しかっただろうか。

 俺はアルスに『ガード』の流れについて、もう少しだけ説明することにした。


「まず、俺は『瞬撃のバルサ』の攻撃を『漆黒のダースデーモン』で『ガード』する。そうすると、俺がダメージを受ける代わりに『漆黒のダースデーモン』がアルスの『瞬撃のバルサ』とバトルしてくれる、というわけだ」

「そうなんだ」

「バトルはさっき教えたよな?」

「うん、ばっちり覚えてるよ! えっと、『瞬撃のバルサ』のライフが2で、『漆黒のダースデーモン』のアタックが2だっけ?」

「効果を使って召喚したから今は4だな」

「4か! だったら……あっ、バルサの負けだ」


 残念だったな。

 バトルに負け、ライフのなくなった『瞬撃のバルサ』をドロップゾーンに送らせる。

 ついでに、『漆黒のダースデーモン』の効果を使い、アルスのライフに2ダメージを与えた。


 『瞬撃のバルサ』

 アタック2/ライフ2→アタック2/ライフ0


 『漆黒のダースデーモン』

 アタック4/ライフ5→アタック4/ライフ3


 アルス

 ライフ20→18


「さて、次は『暗黒貴族フェルニケ』のガードだな。ガードするのは『マグマグスライム』の攻撃だ」

「うっ」


 『漆黒のダースデーモン』のガードを終えた俺は、その隣にあった『暗黒貴族フェルニケ』に触れる。

 そして、それをスッと滑るように横向きにした。


 『マグマグスライム』

 アタック1/ライフ1→アタック3/ライフ0


 『暗黒貴族フェルニケ』

 アタック2/ライフ4→アタック2/ライフ1


「『マグマグスライム』はバトルする時にアタックが2増える。けど、少し届かなかったな」

「ああー! 僕の『マグマグスライム』がー!」


 バトルに負け、ライフが0になった『マグマグスライム』も後を追うようにドロップゾーンへと送られた。

 その結果、残ったのは『ファイヤーボーイ・ゲキ』だけ。

 その攻撃によって、俺のライフは9から8になった。


「他にも何かあるか?」

「ううん、攻撃しちゃったからこれでターンエンドだよ」

「なら、俺のターン、ドロッ」


 クロハル

 マナ0→4

 手札4→5


 横向きになったカードは、自分のターンの始めに縦向きに戻す。

 これでようやく俺のマナも4になった。

 残りのライフも10以下。

 反撃するには十分だ。

 いや、十分すぎる。


「俺は『苦鳴の龍ベルギア』の効果を使い、3マナを使って『苦鳴の龍ベルギア』を召喚する!」

「うわわっ」


 マナ4→1

 手札5→4


 『苦鳴の龍ベルギア』

 コスト6/闇属性/アタック4/ライフ4

 【効果】

 ①このユニットは自分のライフが10以下であれば召喚コストを3減らして召喚できる。

 ②このユニットがバトルゾーンに出た時、または、自分のライフにダメージを受けた時に発動できる。相手のライフと全ての相手ユニットに3ダメージ与える。



 『ファイヤーボーイ・ゲキ』

 ライフ1→0


 アルス

 ライフ18→15


 俺のエースである『苦鳴の龍ベルギア』がバトルゾーンに登場し、残っていた『ファイヤーボーイ・ゲキ』を効果で消し飛ばす。

 ライフが18から15に減ったアルスは、苦しそうな表情を浮かべた。


「それからアタックフェイズ。俺は『漆黒のダースデーモン』と『暗黒貴族フェルニケ』で相手に攻撃する」

「うえっ!?」


 『漆黒のダースデーモン』

 アタック4


 『暗黒貴族フェルニケ』

 アタック2


 アルス

 ライフ15→9


 俺のユニットの総攻撃。

 アルスのライフは15から9に。

 バトルが始まってから四回目の後攻である八ターン目。

 ついに俺とアルスのライフの差が縮まった。


(やっと追い付いた……)


 正直、そのままの勢いで()き殺されるかと思っていた。

 というよりも異常だったのはアルスの引きだ。

 あれをやられた時はちょっとばかり俺の頭が狂い掛けたぞ。

 ようやく胸を撫で下ろし、一山超えたと安堵した俺はターンを終了させた。





2022/7/30 大幅に色々と修正しました。


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[気になる点] >このユニットは自分のライフが10以下の時、1ターンに1度だけドロップゾーンからノーコスト召喚できる。 現地人は「ノーコスト」知らないから、カードのテキストは「ノーコスト」書きはない…
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