強い能力はお呼びでない
主人公が無双する。
主人公が規格外。
そういった物語は、昔から俺に合わなかった。
でも父が好きで見せてくるから見ざるを得ず、今日このときまでそういった物語にいいイメージを持っていない。
いつも見る度に、能力に比例したデメリットが、とか、回数制限があればな、など何かとバランスを求めてしまう。
そんなことを、父の部屋の整理中は思わず考えてしまう。
父は休日が不安定だから、部屋が散らかることが多々ある。
少々面倒くさいが、母、妹、俺とローテーションだからまだマシである。
父は本を読んだらそのまま、酷いときは開いたままな時がある、というか整理は基本的に本を棚に戻すだけで終わるほど散らかっている……本の角を足にぶつけることも少なくない。
「ん……?」
本を整理している中、一冊の本が目に入った。
父の部屋の中央に存在するテーブルの真ん中に、開かれている本があった、積まれ方から見るに最近読んだようだ。
小説を読むのはそれなりに好きな俺は、開かれてるページをチラッと読むのも楽しいのだ。
今回もいつも通り、開かれているページを見てみる。
異能……力?特殊技?そんなものが大量に書かれていた。
こんな本があるのかと思いつつ、今更ながらタイトルを確認する。
【あなたが選べる!異能力一覧表】
能力を……選ぶ?どういう意味だろうか。
タイトルを見ても謎が深まるだけなこの状況、一旦掃除を中断し、この本を掘り下げることにした。
「ふ〜む…………?」
序盤にオススメ異能力欄とやらがあったので見てみたが、ほとんどが俗に言うチート性能であった。
見るだけでも思わず嫌な顔をしてしまうが、休憩にはなるのでパラパラパラっと見ていく。
未来予知、無制限コピー、思考操作……と見ていく中、1つの能力が目に留まった。
「代償……強化?」
本の中では唯一、自身にもデメリットが存在する能力だった。
代償強化……何かを犠牲に何かを得るのだろうか、犠牲は永続か、一時的か……気になるところは多いが、メリットとデメリットが存在する能力に俺は興味が湧く。
詳しいことは何も書かれていないが、もしこういう小説があるなら是非読んでみたい。
想像を巡らせながら一人呟く。
「選ぶとしたらこの能力、やれることの幅広さは他と同じくらい…………」
言葉にした途端、強烈な眠気に襲われた。
抵抗しようと立ち上がろうとするも、足に力が入らない。
言葉を出すこともままならず、横たわる。
(起きたら掃除再開しないとな…)
最後にそんな思考が弾け、眠りに落ちた。
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