温泉(森下一華)
「普通のお店やつだったよ。大和凄いね。」
俺の蕎麦に彼女は満足したようだ。
こっちは頑張った。固かった生茹で。まあ、色々。
温泉街よりさらに山奥へ車を走らせ目的地についた。
いよいよ温泉だ。
そこは古いながらも、がっしりした木造建築。お殿様でも、迎えるような建たずまいをしていた。
「一華さん。何か生卵、売ってるんだけど。」
「たぶん、温泉卵かな。お湯から上がるとで来てるやつ。」
どうやら、彼女の答え通り温泉卵が出来るらしい。二つ買い、奥へと進む。
「じゃここで、」
男女の脱衣所へそれぞれ別れた。
卵を茹でるとこを見つけ卵投入。
湯船を見る。誰も先客はいなかった。貸し切り状態だ。
湯は乳白色、硫黄の匂いが漂う。
体を洗い湯船に浸かる。
「くぁ~」
思わず声がでる。気持ちいい。森下さんに感謝だな。
「大和」
遠くの方から、彼女な声がが聞こえる。
「どうした?」
「そちら、大和以外お客さんいますか?」
「いないよ。貸し切り最高。」
「そうですか。」
その会話のすぐあと人が入って来た。
「あのー。一華さん。何やってますか?」
「なんでそんなに冷静なの?」
「いやーたぶん、夢だと思ってるんで。」
「現実です。ほら。」
彼女に手を奪われ彼女の胸をさわった。
「だーーーーー!!なぜ。男湯にいる!」
「ここ、混浴ですよ。」
湯気と乳白色のお陰で詳細は見えてないが、裸の彼女がそこにいた。
「あ、上がる!」
「待ってください。少しお話しましょう。」
「出来るか!」
「他の男性入って来たら私。大変なことになります。」
「俺はいいのか?」
「大和が狼なら、めちゃくちゃにして、いいですよ。」
おい、なんだ、その信用。俺も男だ。ヘタレじゃないぞ。
彼女の体を自分側に引き寄せた。
「あ。」
驚きの声は上がったが抵抗はない。
「さっきの訂正です。Hはここではなく、帰りホテルにしませんか?」
ヤバい。冷静になれ俺。
「ごめん。やり過ぎた。」
その後、二人は無言。動きはなく。彼女の方から先に湯からあがった。
温泉に入る前に温泉に浸けた卵が茹であがっていた。
卵か。卵かけご飯のアイツ。