妹
自分の家に寄らず、直接、美咲の家に出向いた。
「ピンポン」
チャイムを鳴らす。音沙汰なし。昨日の今日だ。拒否されても仕方ないか。
諦めて自分の家に行く。ん?ドアが開いてる?美咲?いや、アイツは鍵持ってない。
中に入ると見慣れた女が座っていた。
「はあい。お兄様、お久しぶり。」
「あぁ。久しぶり。彼氏と仲直り出来たか?」
「おかげさまで。」
「ん、で何しに来た?」
「報告に。」
「何の報告?」
彼氏と結婚の報告か?
「美咲は実家に帰りました。」
「はい?」
何だそれ。
「誰かさんが恐いんだって。」
「俺か。」
「心当たりあるんだ。」
「ある。」
俺は美咲に怖がられていた。やっぱ、ただの幼馴染で恋愛対象じゃ無かったようだ。
「美咲に何したの?」
「お前のLINEの通りホテルで抱いた。」
「そっか。」
一言いい放つと妹はその場で何か思案を始めた。
「アニキこれだけは確認。美咲のこと好き?」
「好きだ。」
即答した。
「でも、手強いな。黄色い熊持ち出して来てるし。」
「今でもアレなのか?」
「アレなの。」
黄色い熊。美咲の精神安定剤。あれを持つと落ちつくらしい。逆に言うと今は精神不安定。昨日気づくべきだった。
「私からも連絡は取るけど。美咲のこと待てる?」
「待つしかないだろ。」
そう、黄色い熊を持つと美咲はしばらく誰も受付ない。
「浮気しないんだよ。あ、でも婚活中か。美咲と結婚する?」
「ああ、俺は美咲と結婚したいと思ってる。でも、望みはあるのか?アイツにとって俺はただの幼馴染だっんだろう。」
「ちょっと違うかな。大好きな、お兄ちゃんだっんだよ。」
予想外の言葉に驚いた。兄?
「兄は更に望み薄だな。」
「そんなことはない。あとは美咲の気持ち次第かな。」
今は待とう。彼女の気持ちが落ち着くのを。