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幻想冒険譚:科学世界の魔法使い  作者: 猫フクロウ
風塵遮視-サンドアウト-
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万人力

風喰(かぜば)み”の正体はアークを操作する魔法かもしれない。


それはマギアアークを守るシステムに連動されていて、それを使えばアークの落下は防げる。


しかしなぜ国はそれを使わないのだろうか?疑問が残った。




「こんな状況でも国のお偉いさん達はシステムを隠すことを優先しているのか?」


「それだけではないかもしれませんよー」


上空を見ていたナナが指摘する。


「え?見えてるの?」


トウヤもつられて上空を見るが、(ごう)で見ても何かあるな程度しか見えなかった。


「たぶんゲンボウさんも話を知っているから対策をしているんでしょうねー」


「何が見えるの?」


「アークを引く生体兵器が見えますねー」


「は!?それって…」


「システムを起動しても、それを破壊しないと落ち続けますねー」


「そんな…」


ジェットホークの面々からは絶望の言葉が漏れ出た。


システムはたぶん一度動いたらしばらく動かない。いわゆるクールダウン、または充電の時間だろう。


さらにこれだけの魔法だ、大量の魔力が必要だろう。


そうなるといずれ止めることが出来なくなる。


「となるとやることは二つね」


「はいー、生体兵器の破壊と防衛システムの起動ですねー」


ミオとナナが方針を固める。


「となると厄介なのは生体兵器の方ね」


「そんなのパパッと行って討伐すれば…」


トウヤの考えはすぐに否定された。


「相手は宇宙空間にいるのよ。いくら魔道士でもそんなところ行けないわ」


「たしかに。となると大気圏内に落ちてきた1~2分で討伐しないといけないわね。」


「たぶん対魔法シールドで守られている可能性は高いだろうな」


「おいおい、それじゃあ1~2分で討伐なんて不可能に近いぞ?」


状況は手詰まりに近かった。


「ならー、私の能力を全解放すれば宇宙での戦闘も出来ますし、数分で討伐も可能でしょうねー」


「え?それって…!?」


ナナの変身魔法が解けていくと、本来の姿が現れた。


「な!?あんた…いや、あなた様は…」


ナナの正体を知らなかったポーラ達はその姿にド肝を抜かれ、腰を抜かしてしまった。


「あーあ。まあ、正体を隠しながらの余裕は無さそうね」


ミオも変身魔法を解く。


「ひぃ!?やっぱり星歌(ほしうた)の君!?」


その呼び名は一般人も知っていたようで、ジェットホークの面々も驚きを隠せなかった。


「作戦はミイナを宇宙に送り出し、俺たちは地上で落下を防ぐって感じか?」


「んーそれもいいですけどー、いくら宇宙に行くとしてもチューブライン経由ですし、

戦闘に魔力を温存しておきたいので、防衛システムの起動が欲しいですねー」


「じゃあ、システムを起動してアークとミイナを宇宙空間に送り出さないとな」


まず初めに全員でシステムを探しださなければならない。




「♪~♪♪~♪」


突然、クルルが歌いだす。


一瞬、何事かと思ったが、その歌声は聞くものを魅了するほど美しかった。


「…きれい…」


リリスがトウヤの気持ちを代弁するように呟く。


その歌声に連動するようにクルルの手元が赤く光出す。


手には赤いカードが数枚。光はカードから発せられているようだ。


すると、光から何かが現れた。


「あれは…たしか“ウィル・オ・ウィスプ”」


漂うだけの小型生命体と言っていた。前に一体だけ召喚したのを見たことがあった。


だが今回は違う。クルルは大量のウィル・オ・ウィスプを召喚していた。


「これをみんなに。手分けして街中にばら撒くのよ」


「どうして……ああ、魔力が消える場所を特定するのか」


「ええ。次を召喚するからお願い」


今の召喚で数百体。手の平サイズの小型生命体とはいえ、数秒でこの量。


上級貴族は能力も桁違いだ。


「まかせてくれ!」


ジェットホークの面々が気合を入れてばら撒きに行く。


「私たちは遠方よ!一気に持って行って!」


魔法の能力が低いジェットホークは一人十数体ずつ、魔道士たちは百体ほど一気に運ぶ。


「こっちを集中的に!昔風喰(かぜば)みに遭遇しました!」


「こっちでもよく聞く!こっちにも集めてくれ!」


クルルが一人で一万以上のウィル・オ・ウィスプを召喚。


全員で街中にばら撒く。


(上級貴族は百人力…いや千…万人力だな)







「やっぱりチューブラインにありましたねー」


アークを押し返すシステムの魔方陣の一角は、ミイナの予想通りアークの真下、

つまり地上とアークを結ぶチューブラインにあった。


街を守る大型魔法。複数の魔方陣を錬成陣のように並べ発動させることで大きな効果を得る。


この魔法の仕組みはミイナがよく知る魔法と同じだった。


そしてその一つは対象と最も近い位置にあること、すなわちアークとマギアアークがもっとも近い場所。


アークの真下に設置している可能性は高いと予想していた。


ミイナは地面に手を付くと、目を閉じ、魔方陣を展開した。


「システムハック…オールクリア」


淡い光に包まれると何かを呟いている。


光が消えると、ふうと溜息を吐いた。


「んー案の定、面倒なシステムですねー」


空を見上げると、目元から何かが溢れ出た。


「あれー?…まあ、何十回繰り返した中で、今回が一番楽しかったからですかねー」


もう一度大きく溜息を吐く。


「わたしはマスターの人形です。でも、ごめんなさい。

初めてマスターから頂いた命を、マスター以外の人の為に使います。

どうか…どうかお許しください、マスター」




「みなさーん、一つ見つけてハッキングした情報でーす」


ミイナの声が念話で届く。


「システムはアークの真下のを中心に全十三個の魔方陣から成るシステムです。

起動には大量の魔力が必要になりますので、たくさん人を集めてくださーい。

さらに発動後押し返したら一時間のクールダウンが必要になりますので、

失敗した場合は諦めて、さっさと逃げてくださーい」


「十三個…多いな、探し出せるのか?」


ミナがミイナの声に反応して応える。


「大丈夫ですよー、形はおそらく左右対称で上下を回転させても形が変わらないと思いまーす」


「形も解かるの?」


「そのほうが安定しますからねー」


「左右対称で上下回転でも同じ形…もしかして六芒星か?」


トウヤは頭の中で図形を動かし、条件通りであることを確認した。


「六芒星?どんな形なの?」


「三角を二つ、上下逆さにして重ねた星のような形だよ」


「ああーいい形ですねー」


「となると町の外周が怪しいわね」


街はチューブラインを中心にほぼ円形。


ミイナの予想も、トウヤの予想もその通りなら、待ちの外周に六個ある可能性は高い。


そしてその六個を結んで六芒星にすれば、線が交差する箇所が六個。


中心を合わせて計十三個になる。


あとは……


「ミイナ!中央の魔方陣の大きさは?」


「チューブラインより拳一つ分大きいですねー」


「そにょ大きさにゃら外周から100mほど内側が怪しいにゃ!」


「よし!なら外周をジェットホークの皆さんと一緒に動いてばら撒くわよ!」


各々が得意な分野で力を発揮し、協力し合うことで予定の作戦は素早く完了した。


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