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幻想冒険譚:科学世界の魔法使い  作者: 猫フクロウ
風塵遮視-サンドアウト-
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風喰み

高速で逃げるターゲットを追い、捕まえる。


魔道士でもよくある基礎クエストだが、レーサーでも簡単に熟せるはずの内容。


のはずだった。


案の定、何か仕掛けがあるようで、ジェットホークの面々は苦戦を強いられた。


「くそっ!なんで縮まらないんだ!」


かなりスピードは出ているのに追いつけないでいた。


「もしかしたら他の人なら仕掛けが動かないかもしれないわね。

セレスはジェットホークの人達と一緒に追って。ティアは遠距離で砲撃よ」


仕掛けた人間は彼らを閉じ込めるためにこの結界を仕掛けた。


だから彼らでは突破出来ないように仕掛けたのだろう。


ならば別の人間が追えばいい。または遠距離砲撃も有効かもしれない。


「あれだけ豪語したのにすまない」


「大丈夫です。フォローお願いします」


高速で動いている分、砲撃を当てるのはかなり難しいので、

セレス達が追いながらティアが撃ちやすい位置まで持って行く。


パン!


ティアが撃った砲撃は見事命中したが、弾はかき消された。


「魔法系の弾丸は無効化出来るみたいね。次は実弾でいくわ」


パン!


再び銃声が鳴り響くと同時に実弾が命中。しかしターゲットは無傷のようだ。


「砲撃対策もされているみたいね」


「こっちも近づけない。ギアに反応してるみたいだわ」


ギアで近づけない、砲撃もダメ。


ならば…


「トウヤ、(かけ)で追える?」


「ああ、やってみる」


トウヤはふわりと浮きあがると、一気に駆け抜けた。


一般的な飛行魔法より速く飛べるトウヤなら、ギアよりも速く追える。


だがそれも相手には読まれていたようだった。


キーン


稼働音が鳴り響くとさらにスピードを上げて飛んでいく。


(まだ早く飛べたのか)


トウヤも負けじとスピードを上げる。


さらに、不意を突くように上下左右に逃げ回られるが、何とか追い続ける。


さすがにランダムに動かれると、距離を縮めることが出来ない。


縦横無尽に逃げ回る相手に四苦八苦しているとナナから念話が入った。


「トウヤさーん、罠を仕掛けましたー。上手くわたしの方へ誘導してくださーい」


位置を確認すると、ナナの隣には魔法で隠された何かがあった。


(あそこだな…(またたき)!!)


瞬間的な加速で相手の横へ移動し逃げる方向をナナの方へ向ける。


機械だから咄嗟の時の動きはわかりやすい。


ターゲットはナナの仕掛けの位置を通るとグシャっと潰れた。


「な…何をしたの?」


「空気を重くする錬成陣を地面に描いたんですよー」


空気を重くする、すなわち見えない空気の壁に高速で衝突したことで機体は壊れたのだ。


「おつかれさん。上手く破壊出来たわね」


「ああ、ナナのお陰だがな」


結界を維持する装置が消えたことで、結界も消え始めた。


「結局あんた達に全て任せた状態になってしまったな」


ノスリは申し訳なさそうに言った。


「いえ、みなさんが追ってくれたから追いつく算段を立てられたんです。

ご協力ありがとうございました」


ポーラはぺこりと頭を下げお礼を言った。


「じゃあ今度は情報だ。マギアアークはアーク落下に備えて、

アークを押し返すシステムが町のどこかに隠されているらしい。

国の機密とやらで真実はわからないが、都市伝説のように有名な話だ。

もし本当ならそいつを使ってくれ。国を守る為なら誰も止めないだろう」


「わかりました、情報ありがとうございます」


結界が解けると、そこはサンドーラの砂漠だった。つまり転移はされていなかったということだ。


「みんな!ようやく繋がった!」


解けると同時にウィンリーの念話が届いた。


「ウィンリー、状況は?」


「多少パニックになっているけど、なんとかマギアアークの住人の避難は進んでいるわ」


「アークは?」


「まだ地上に落ちる様子は無いわ」


「どういうこと?」


落とすから邪魔されないように閉じ込めた。なのにまだとはどういうことだろうか?


「まだ狙いがわからないわ」


「なら…俺たちも連れて行ってくれ!家族の元へ行きたいんだ」


まだ落ちるまで猶予があると知ると、ノスリは頼みごとをしてきた。


「一般人は立ち入り禁止です。局が用意した避難先に避難させますので、そこでお願いします」


「それにさっきの話に心当たりがあるんだ。あの場所なら国が仕掛けていても不思議じゃない場所だ」


「なら場所だけ教えてください。あなたが一般人である以上、もうあの国に入らせるわけにはいかないんです」


「場所が言えないんだ…なんというか…移動しているように思える場所だ」


家族の元へ行きたいから嘘を言っている…のか?判断しづらい感じだった。


「もしかして“風喰(かぜば)み”か?」


ふとハリスが聞くと、ジェットホークの面々は何かに驚き、気付いた様子だった。


「“風喰(かぜば)み”?何のことですか?」


「マギアアークで時々現れる(なぎ)、つまり無風地帯のことよ」


ポーラの問いに答えたのはミサゴだった。


「“風喰(かぜば)み”が現れたらギアも使えない状態になる。まあ一時的な物だからギアの異常と思っているのも多いが…」


「“風喰(かぜば)み”は神出鬼没。何の前触れも無く現れるから対処のしようがねぇ」


ハリス、チュウヒと知っている情報を教えてくれた。


「にゃは~ん。それ魔力操作をしているんだにゃ~、だからギアの風がにゃくにゃるんだろうにゃ」


「どういうこと?」


「あくまでおいらの予想にゃ。アークは地上からの遠隔操作魔法でも動かしていて、

その魔法が使われた時に、魔力同士がぶつかり相殺されているかもしれにゃいにゃ。

ギアの風は魔力の風。その魔法の影響を受けて、消えてしまっていたんだろうにゃ」


「つまり“風喰(かぜば)み”はアークを操作する魔法。

それを見つければアークを押し返すシステムもそこにある可能性が高いってことね?」


セレスはリンシェンの予想を要約し、確認した。


「そうゆうことにゃ!」


リンシェンはウインクとブイサインで正解だと答えたが、同時に新たな問題が現れる。


「でもその“風喰(かぜば)み”をどうやって探すの?」


ティアがその問題を問う。


話を聞く限り目に見える物ではない。


魔法なので(ごう)で見えるかもしれないが、話を聞く限り一時的に現れる物。


見逃す可能性が高いし、いつ現れるかもわからない。


「なあ、まだ落ちていない理由ってそれなんじゃないか?」


リーシャの発言に全員が驚く。


「た、確かに。ありえる!」


今なおアークが落ちないのは、マギアアークと言う国がアークが落ちないよう操作魔法を使い、

必死に留めているからだろう。


それはすなわち。


「今のマギアアークは街中に“風喰(かぜば)み”が現れているということ」


巨大な人工物を操作するのだ。一つではなく複数個で操作していることも容易に予想できる。


あとは人だ。十数人でマギアアーク全体を確認するのは不可能だろう。


ならば…


「ジェットホークのみなさん、あなた方の過去の経験が必要です。

過去に“風喰(かぜば)み”と遭遇した場所と、土地勘で捜索に協力してください」


ポーラはノスリ達に頭を下げ頼んだ。


「ああ、こちらからも頼む」


新たにジェットホークのメンバーを加えて、作戦の舞台はマギアアークに移る。


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