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幻想冒険譚:科学世界の魔法使い  作者: 猫フクロウ
風塵遮視-サンドアウト-
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仕掛けられた罠2

第一セクションへ突入するゲートを抜けると広大な砂漠が現れた。


「え?砂漠!?」


前もって伝えられたコースは石で作られたピラミッド状の迷路ようなコースのはずだ。


見渡す限りそのような物が見えない。


モービルを止め、辺りを再確認するが、目標のコースが見当たらない。


そうこうしているうちに、他の2チームも突入し、同じように止まった。


どうやら他チームも聞いていない状況ようだ。


「どういうこと!?何が起こっているの!?」


「こっちもわからない!」


ポーラ達が念話で話しかけてきたが、話せる内容は無かった。


「運営本部、応答してください」


ミオが何度か運営に問い合わせているが応答がない。


「おい、あんたたち。これどうなってるか聞いてるか?」


見慣れない男女数人が近づいてきた。


もう1チームのジェットホーク側も何が起こっているかわからないようだ。


「いいえ、こちらも何もわからない状況です」


ポーラが状況を共有する。


「運営に問い合わせているけど、全く繋がらないわ」


ミオが奥から現れて、結果を教えてくれた。


「何かのトラブルか?」


「そのようね。状況がわからないから、とりあえず待つしかないわね」


手を(こまね)いていると、空中に映像が現れ、一人の男が映しだされる。


「ジェットホーク諸君、久しぶりだな」


映っている人物はジェットホークの関係者だろうか?


「あいつは、ゲンボウ!?」


「知り合い?」


「あ…ああ、うちの……元メンバーだ」


何か事情があるような言い方だった。


「おまえたちには、しばらくそこで待っていてもらう」


「何が目的だ!ゲンボウ!」


「目的?ただ単にお前らの大切なものが無くなる様子を眺めてもらうのさ」


「は!?お前、何を言って…!?」


映像が切り替わると何処かの街の様子が映し出された。


「何処?」


「あのチューブライン、もしかしてマギアアークか?」


マギアアーク、確か大会前にポーラ達と行った機械都市だったか?


「ここにアークを落とす」


「?」「!?」「な!?」


アークの意味がわからないトウヤは理解出来なかったが、他のメンバーは理解出来たようだ。


「そ、そんなこと出来るわけが…」


「そう思うならそう思っていればいい。…ははっ!お前らの絶望する顔が楽しみだぜ」


「やめろ!そこには俺の子供が!」


「私達の家族だって…」


ジェットホーク側に激しい動揺が見える。どうやら皆縁のある場所のようだ。


「ねぇ、アークって何?」


状況がわからないトウヤはポーラに問う。


「“スペースコロニーArk(アーク)”。マギアアークの空に浮かぶ超大型人工衛星よ。」


「はあ!?それを落とすって、国どころか…」


「ええ。ある意味要塞となっているアークが落ちれば、

マギアアークと言う惑星全体が焦土となってもおかしくないわ」


本当に落ちれば大参事どころでは済まない。それをやろうとしているのだ。


「お前らはそこで指を咥えて眺めてな」


「ふざけるな!やめろ!ゲンボウ!!」


「ゲンボウ!お願い!やめて!!」


ジェットホークの面々が頼み込むが、それ以降の通話は無かった。


「ねえ、あんた達、何かあいつに恨まれるようなことをしたの?」


「そ、そんなこと…ねぇよ」


ジェットホークのメンバー、ノスリは否定したが、心当たりはあるようだ。


「ねぇ、やっぱり追放したこと恨んでるんじゃ…」


同じくメンバーのミサゴは心当たりを口にする。


「誰よりもレースで勝つことに拘ったあいつから、レースを奪ったんだ。恨まれても仕方ねぇ」


「じゃあチュウヒ!お前はあんなレースしたいのか!?」


「そうじゃねぇ、もっといい方法があったんじゃねぇかってことだ。

兄貴、昔から気の利いた言い回しが出来ねぇだろ?」


「ハリスまで…」


会話の流れから察するに、あのゲンボウというやつは何かやったのだろう。


そしてそれがチームの方針に合わず、仲違いして追放され、恨んでいるのか。


ある意味、トウヤ達は喧嘩に巻き込まれた感じだった。




「もし本気だったら急いでここを脱出しないといけないわね」


ポーラチーム、リンシェンチームで手を組み状況整理と脱出のプランを練る。


「ナナ?」


なぜか一人、モービルの上から辺りを見回している。


「ほっといていいよ、何か心当たりがあって探してるんだと思うわ」


ミオに言われ、ほっておくことにした。


「ゲートを通ってここに来たということは、何か空間魔法で移動させたのは間違いないわね。

何処かの国へ飛ばされたのかな?」


「いいえ、それなら運営と通信が出来るはずよ」


「ということは何処かに結界で閉じ込められたということか?」


「となると厄介だな。結界を操作する何かを探さないといけないぞ」


「…もしかしてナナが探してる物って…」


「あー!ありましたー!あそこを飛んでますよー!!」


ナナが指差す方向を見ると、かなり遠くだが、何かが動いているのが見える。


「あれが結界を操作するものか」


遠くだがかなりの速さで動いているのがわかる。


破壊されないように結界中を移動しながら維持しているのだろう。


「ならさっさとぶっ壊して行こうぜ」


「待ってくれ!」


ノスリはトウヤ達を引き止めた。


「あんた達は魔道士でアークを止めるつもりだろ?

なら魔力を残さなきゃならない。だからあれの破壊は俺たちに任せてくれ」


「どういうつもり?」


「故郷や家族を守ってもらうんだ、それくらいは手伝わせてくれ」


「…自分たちが原因なのに…」


「リリス」


リリスの頭を軽く小突く。


「確かに俺たちが蒔いた種だ。勘違いや逆恨みであんなことやらせちまった俺たちに責任がある。

それであんた達魔道士に迷惑をかけちまってるんだ。何かやらせてくれ」


例え微力ながらも、力を貸してくれる人の助けになりたい。


魔法世界特有の考え方はここでもあるようだ。


「じゃあ、お願いします。でもあなた達を捕えるための結界です。

向こうが何も手を打っていないはずはないので十分に警戒しながらお願いします」


「ああ、任せてくれ」


ポーラがそう返事すると、ジェットホークのメンバー達は一斉に走り出した。


「いいの?任せて」


「止めて私達に何かあったら彼らをさらに苦しめる事になるわ」


「…面倒くさい…」


「リリスも、思った事そのまま口にしないの」


ポーラはリリスの頭をくしゃくしゃに撫でまわす。


リリスは不満そうな顔をして振り払ったが、ポーラの言う事には逆らわなかった。


見た目は大人に近いが、まだ2歳くらい。中身はまだまだ子供。


まだ嫌なことを我慢するのは苦手だろう。


「私達は脱出と同時に転移してマギアアークに向かうわ。

外と連絡が取れないからどう動いているかわからないけど、

人命救助が第一、他が動いてたらアークの落下阻止にまわるわよ」


「おー!」と掛け声と共に準備に取り掛かった。


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