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幻想冒険譚:科学世界の魔法使い  作者: 猫フクロウ
風塵遮視-サンドアウト-
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仕掛けられた罠

「作戦はこうだ。まずスタートと同時にモービルで加速する。

それと同時にリリスの石化で相手のコントロールを奪うんだ」


「予選と同じだけど、対策してくるチームがいくつかいると思うよ?」


「もちろんそれだけじゃない。そいつら、どう動くと思う?」


「モービルにょ性質から、同時に加速するか上へ逃げるかにゃ?

後ろへは…遅いからしにゃいだろうにゃ」


「ああ、同時に加速するやつらはリリスの餌食だ。出し抜かれなきゃ無視していい。

問題は上に逃げた連中で、そいつらは確実に逃れられるだろうな」


「ってことは上に逃げた連中をどうにかすべきね」


「そこでこの砲撃だ」


トウヤは映像を見せる。先日参加した緊急クエストの時の映像だ。


「うわあー、大きな山を吹っ飛ばすなんて、すごいですねー」


「よ…よく怒られなかったわね」


「…怒られました…」


「あ…」


ポーラは胃を痛めているだろう。


「でもこの魔法を逃げた連中に向けて放つとどうなると思う?」


「おそらく…シールドで防ぐだろうな」


「エアーを奪ういい作戦ね。でも撃った後、大丈夫なの?」


「ほとんどデバイスの魔力をで済ませるから大丈夫だよ」


「デバイスの魔力?」


「俺のデバイスは魔力をデバイス自身に溜めることが出来るんだ。

もちろん、それを使って魔法を使うことも出来るよ」


「……魔力回復効果があるデバイスなんてすごいわね」


「そういう無茶苦茶な能力なんだよ」


「さすが”創造する神(クリエイター)”ですねー」


「脱線したけど、ほとんどのチームをこれで一掃出来るでしょ?」


「確かに、序盤でこれだけ荒らされるのは類を見ないわね」


「過去の記録でも全然見当たりませんねー」


「じゃあ、決まりだね」


「ふふっ、ほんと敵じゃなくて良かったわね」


「まあ、このメンバーが集まらなかったら私たちも参加しなかったし」


「そうね。底が見えないのがすっごく怖いわね」







「“出でよ、疾風の翼!天より降り注ぐ矢羽と成れ!”」


トウヤは上へ逃げた集団に狙いを定める。その中には同じギルドの仲間もいる。


(勝負は勝負。全力でやらなきゃ失礼だもんね)


「“フレース・ヴェルグ”!!」


魔方陣から特大な鳥の形をした砲撃が放たれる。


この魔法は真っ直ぐ進み、時間が経つと大爆発を起こす。


狙った場所まで爆発せずに進み続けるが、威力はかなり広範囲であるため、

大きな物や特定の箇所に複数ターゲットがあるときに有効な砲撃だ。


狙いは上へ逃げた連中、その中央付近に放つ。


到着と同時に爆発すると一帯を巻き込んでいく。


これで逃げ遅れたチーム、後ろに逃げたチーム、

そしてリリスの魔法の餌食になったチーム、全てを巻き込んだ形になった。




「これは…開始と同時にほとんどのチームがリタイアか!?なんて砲撃だ!!」


戸惑う実況と観客たち。期待していた光景と違うが、誰もが同じ結果が頭を過る。


「これは全てリタイアか?生き残ったチームはいないのか?」


爆発によって土埃と砂漠の砂が舞い上がり、視界が非常に悪い。


撮影している映像も、どこかのチームを探しあちらこちらと切り替わる。


そして、ある映像で歓喜の完成へと変わった。


「抜けたチームがいた~!!」


期待外れの結果から一変、待ちに待った光景が目に飛び込んできた。




「4チーム抜けた!優勝候補の2つとポーラ達ともう1つだ!」


「予想通り!急いで第一セクションに向かうわよ!」


案の定、今の砲撃を抜けるのは予想していたチームだった。


スタート直後はモービルで駆け抜ける。しばらくは走るだけだが…


「ねえ!もう砲撃していいんだよね?」


「距離があるから当てづらいぞ!」


高速で移動する物体にある程度離れた位置から狙い撃つ。熟練の狙撃手並の腕が必要だろう。


「当てなくても妨害は出来るだろ?」


「どうやってやんのよ?」


「こうやるんだよ」


そう言うとトウヤは何かを大量に投げ捨てた。いや、具現化系の魔法で大量に創り出しているのだ。


数千、いや、万を超えるか?数は多いが一つ一つは手の平サイズだった。


そしてそれをコースのあちらこちらに配置する。


明かに罠なのがバレバレだ。


「なにやってんのよ!」


「これで、どうだ!」


最後の一つを置き終えると、最初に配置した辺りを目がけて砲撃を放つ。


ボン!と小さな音が鳴ると罠から一気に白い煙が現れた。


そして連鎖的に爆発が続き、徐々に爆発の規模が増え、大きくなっていく。


そしてドーンと一際大きな爆発が起こると、コースは白い煙に包まれた。


「いや、あんなの目暗ましにもならないでしょ」


「あれはどんな狙いなんだ?」


ルーは呆れたが、ミナは何かの狙いに気付いた。


「あの容器の中には液体ヘリウムが入っていたんだ」


「は?」


まだ何を狙っているのかがわからない。


「はは~ん、クエンチか~考えたにゃ~」


この科学の仕掛けに気付いたのは、やはり科学人のリンシェンだった。


「クエンチって、あの気化爆発のですかー?」


意外にもナナも知っていたようだ。


マスターがホムンクルスを作るなど、科学的な知識がありそうなので聞いたことがあるのだろう。


「気体の中には絶対零度と言われている超低温で液体になるものが存在するんだ。

その中でも液体ヘリウムは気体のときの700倍の密度なんだって。

その液体が、この暑い砂漠に出るとどうなると思う?」


「えっと…気体になる?」


ルーも詳しいわけではないが、水などの液体の状態変化くらいは知っていた。


「そう。しかも冷たい空気だから空気中の水分を一気に氷にして、雲のような煙が出来るんだ」


あの白い煙の中は冷たい空気の塊で、中には大量のヘリウムがあると言うことだ。


「さ・ら・に、吸い込む空気にょ中から酸素が減るから、一時的に呼吸が出来にゃくにゃるぞ。

それに煙の動きをよく見てみるにゃ。」


煙は特定の爆発地点に留まり続けている。


「見えない壁があるのか?」


「風打ちの(はじき)で薄い膜を作っている。

所々に拳大の堅い部分を作っているから、突っ込むとモービルの一部を破壊するはずさ」


言っているそばから一台のモービルが煙の中に突っ込んだ。


ガンと鈍い音が響くと、突っ込んだモービルがクルクルと回り出した。


「衝突と、中の人たちが酸欠で一時的に気を失ったようだな」


コントロールを失った一台は、近くを走っていたもう一台に突っ込んで衝突した。


「ああっと!?また脱落!2台が消え、残り3台での争いだ!!」


実況の声が情報として届いた。


スタートして数分。


残りはトウヤ達、ポーラ達、そして前大会優勝チームの3チームまでに絞られた。


「ナナ!リンシェンちゃん!そろそろ着くわよ」


モービルを運転するミオの声で構える。


間もなく第一セクション。モービルでは進めないコースだ。


そこの走者はナナ、リンシェンの二人。前半で一気に差をつける狙いだ。


しかし、他の2チームのモービルもかなり速く、予想より距離が開いていない。


ポーラ達はこちらの手の内を警戒できるとしても、

優勝候補…ジェットホークと言ったか?あれだけの妨害をうまく躱している。


まだ油断は出来ないようだ。


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