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幻想冒険譚:科学世界の魔法使い  作者: 猫フクロウ
風塵遮視-サンドアウト-
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本戦前

「にゃんでおみゃあの方がおいらの魔法を上手く使うにゃ?」


「え~っと…そういう能力だからかな?」


「ひぃどぉい~にゃ~」


リンシェンは目を潤ませながらポカポカと叩いてくる。


「と言うより風で押しつぶす魔法がグラビティなんて、よくそんなこと言えたな」


「バカの発想はあたし達にはわからないわ」


毎度のことだがミナとルーは以下略。


「でも竜巻を横にしてブーストとして使うなんてよく考えたわよね」


「むしろその竜巻に乗っていた人たちがなぜ気付かないのかが不思議だよ」


魔法世界の飛行魔法は小さな竜巻を複数個作って体を浮かせている。


先程のブーストも向きが違うだけで理屈は一緒である。


「でもでもー、あの防御の壁は見事でしたねーあれが無きゃ衝突で大けがだったかもしれませんよー?」


「それでもしっかり避けてくれたナナもすごかったけどね」


「一応、わたしはその魔法のことをよく知らなかったので、念のためですねー」


予選を問題なく突破できたことで、全員盛り上がっていた。


「さって、次が本番だけど、今度はあんな風にいかないわよ?」


「次はモービル以外も走らないといけないですからねー」


「次もルールとして妨害はありなんでしょ?ならいい魔法があるんだけど?」


「え!?あれ以上にスゴイのあるの?」


「ああ、大きな山の一部を吹っ飛ばした実績があるぞ」


「あ~、あれかにゃ?」


その魔法を使っている場面の映像を見せると、さすがのミオも顔を引きつらせた。


「ほ…ほんとに麗王(れいおう)みたいなことを平然とやるのね」


「そういえばこの映像、マスターも見てましたねー」


「え!?なんでナナのマスターが?」


「そこはわたしも詳しく知らないんですけど、これに映っているのはトウヤさんだったんですねー」


「それよりも、この魔法を使ってどう攻めるかあたし達にも説明して」


「あ、ああ。作戦はこうだ」


トウヤの作戦はスタートダッシュとしては非常にいいかもしれなかった。







「リリスの魔法でしょうね」


予選開始直後、操作不能による衝突でほとんどのギアが走行できなくなった。


操作不能になったのはギアじゃない。それを操作する人が操作不能になったのだろう。


リリスの魔法、崩れる石像(ストーンアッシェ)は人の魔力に対しいて効力を発揮する。


それを大会用リングを通すことで命を奪うまではではなくなった。


実際、予選での被害状況はギアの衝突による破損が主で、人の怪我はその時の物ばかりだ。


リリスの仕業、そう考えると起きた状況と合致する。


人に向けても平気だと、どこでそれを知ったか…


実際に人に向けてやったのか、それとも他の動物で実験したのか。


さらにこの対策はかなり難しい。


効果範囲内であれば、どんな壁があろうと人は石化する。


空間を切れば避けられるだろうが、生憎それが出来るのはトウヤだけだ。


「確実に決勝でもやってくるぞ。どうする?」


一緒に予選の検証をしていたファイゼンが聞いてくる。


「どうするって言っても、対処の仕様が無いのよね」


元々は治療として使っていた魔法なので解除法はある。


しかしそれは使用者本人しか使えないようで、リリス自身もまだ時間をかけなければならない。


つまり他人にはどうすることも出来ないのだ。


「せめてもの救いはリリス本人が操作していることか?物理的に難しい速さじゃないだろ?」


「そうね。範囲も最大2kmほど。モービルなら挽回出来る距離ね」


「じゃあバック…は遅すぎるから上に飛んだ方が良さそうだな」


「地面に合わせてくれればいいけど…」


「それは…運しかないだろ」


作戦としては運任せでよろしくない。しかし他に手は無い。


「仲間としては心強いけど、敵に回るとこんなに厄介だなんて…」


「ほんと、悩ましいやつらだな」


「その割には嬉しそうね」


「そうか?まあそれだけ心強いと言うことだな」


「そして…」


「ミオとナナのことか?」


「ええ、予選の時に姿を見せなかったのは作戦でしょうね」


「仮にミオってのがあの星歌(ほしうた)の君だったら、どんな異能使ってくるんだ?」


「さすがに知らないわ」


魔法に詳しいポーラでも、さすがに異能まで知っていることはなかった。


「異能だとすると攻撃的な能力だろうから、妨害は恐ろしいことになりそうだな」


「そうね…ああ!めんどくさい!」


今すぐに考えることを放棄したくなってしまった。


「投げるな投げるな」


「だって…」


「個々で判断してたら纏まらない。リーダーであるお前が決めてくれ」


船頭多ければ何とやら。思わぬ方向に進まない為にリーダーが取り決め、他がそれを信じ突き進む。


これが理想的である為、リーダーは考えることを放棄しては何も出来なくなってしまう。


「俺たちも何かしら手がかりが掴めるようにするから、堪えてくれ」


そう言うとポーラの頭が背中に置かれた。


「一回やめて休むわ」


ポーラはそう言って目を瞑ると、すぐに眠りについてしまった。


「せめてベッドで寝ろよ」


眠ってしまって返事が無い。


「…よっぽど頭使って疲れていたんだな」


ファイゼンは起こさないようにゆっくり体を動かし、ベッドに寝かせた。


「…少し見てから寝るか」


明日は予選。対策を考えるのもいいが、体調を崩さないように休むのも大事だった。







「ふん、相変わらずお気楽だな、あいつらは…・」


映像を見ながら女は呟いた。


「マスター…フフッ…アハハッ!ふざけんな!!」


拳を叩きつけた石の壁に大きな亀裂が走る。


「私から奪って楽しくやってますって!?お前はいつもそうだった!!

私が苦労して手に入れた物を盗って行く。何もかも!!」


女の口からは怒りしか出てこない。


「ちょっと上手いからマスター候補?媚び売ってマスター候補?

あげくマスターになって楽しくやってます?ふざけんじゃねぇ!!」


どうやら相手は最近マスターになったようだ。


「私はもう全て失った…お前に全て奪われた。だから…」


写真を掴み、くしゃくしゃに握りつぶす。


「今度はお前から全てを奪ってやるよ…ポーラ!」


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