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幻想冒険譚:科学世界の魔法使い  作者: 猫フクロウ
それは甘く蕩けて灰になる
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外伝:修行と改良

「ほっ!…ふっ!…はっ!」


リンシェンにカンフーを教わって数日、基礎的な動きを繰り返し続けていた。


思った通り魔法に頼らない体術で、地球のそれと似たものに思えた。


そして…


「おみゃ~の今の特徴としては、体力の無さ、力、体格、全てが同年齢の女子にゃ」


「改めて言われると、すごくイヤだな」


「その日本人と言うのは小柄な人種にゃのか?」


「そうだな。よく欧米とかに体格で劣ると言う話は聞くな」


「とにゃると、おみゃ~がデカくなる期待は無さそうだにゃ」


「う……」


反論が出来ない。


昔、数回学校へ行き同年齢の男子たちと会ったことがあるが、みな自分より大きかったのはよく覚えている。


「そういえばここの人達もデカいよな。やっぱ人種か?

いや、リーシャは小柄だし、ルーも他に比べたら小柄だよな」


「リーシャは特殊にゃ体質だからチビにゃだけ、あのルーってのは小柄だにゃ」


「となるとポーラやリンシェンは大きい方だな」


「おいらはそうらしいが、ポーラは平均的にゃ」


「え!?平均的!?」


やはり体格的には欧米などに近いようだ。


「んにゃあ、修行の方針を決めるにゃ。攻撃面は今のところ魔法に頼るとして、

当面は防御面を上げることを目的にするにゃ」


「防御?魔法で強化する、回避する以外に何かあるのか?」


「チッチッチッ、回避でも反撃に繋がるようにするってのがコツにゃ!」


「反撃って、避けてドンじゃないのか?」


「これだから素人にゃ」


言われなくても、トウヤは素人だ。


「避けてドンにゃんて誰でも考えるにゃ。それを想定出来にゃいやつは素人にゃ」


つまり攻撃をして、避けられて反撃がくるのは当たり前としなければ即やられる。


これからはその反撃がきても避けるまたは防ぐなり出来なければならない。


「これからにょ相手は素人じゃにゃい。それにゃりに戦闘経験を積んだ魔道士にゃ。

今はおみゃ~の圧倒的能力で勝てるが、すぐに対策されるにゃ。うかうかしてられにゃいぞ~」


「た…確かに」


トウヤの戦闘経験は手加減したポーラと完全に見下していたセレス、そして地球にいた素人だ。


もうセレスはトウヤを見下さないので勝てる見込みはかなり低い。


そして同等と言われてるポーラにも勝てないだろう。


「でもそれなら攻撃の仕方を変えればいいんじゃねぇか?」


「その仕方に相手がどう防ぐかをいれにゃければにゃらにゃいぞ」


「あ、そうか」


相手がどう防ぐかを知れば自然とどう攻撃すれば当たるかに繋がる。


攻撃を当てたいなら、まず防ぎ方を知れと言うことだ。


「よくわかったよ。じゃあ早速教えてくれ」


「わかったにゃ。まずは基本の足さばきにゃ」


リンシェンの指導は、意外にも良かった。




「相っ変わらず好きだねぇ、修行ばっかで飽きない?」


ファイゼンは呆れながらも感心した。


「うるせぇ。この前のクエストはほとんど何も出来なかったから、体動かしたいんだ。

お前こそ、女のケツばかりで飽きないな」


リーシャは毒づきながら反論する。


「人聞きの悪い事言うなよ。男としての義務を果たしてるまでだ」


「ハッ。いいように使われてるだけじゃねぇか」


そんなことを言いながら訓練場に到着すると、すでに先客がいた。


「おう、お前ら!片方は珍しいが、もう片方は相変わらずだな」


「ってかトウヤとリンシェンって珍しい組み合わせだな」


「ああ。リーシャとファイゼンも修行?」


「うちはな。こいつは暇だからついて来ただけだ」


「まるで暇を持て余してるような言い方だな。その通りなんだが…」


「その動き…リンシェンのか?」


リーシャは動きを見ただけで、誰の動きか判断出来た。


「ああ、カンフーを教わってるんだ」


「なんでカンフーなんだ?」


「地球にも同じ名前の武術があったし、あまり魔法に依存しない動き方とかもいいと思ったんだ。

あと、この前のクエストで魔法が使えないとひ弱なガキだって痛感したから、基礎体力向上もかな?」


「どっかの軟派ヤローと研究バカよりよっぽど真面目だな」


その軟派ヤローと研究バカは何も言わない。


「ならもう一つ課題を追加してやろう」


「課題?」


「そうだ。魔法についてお前には改良の余地があるんだ」


「どんな?」


「デバイスとの兼ね合いだ」


デバイス。そう言えば最近使って…いや、アンクレットもデバイスか。


それくらいしか使ってないが…


「お前、今エンチャントのファーストに何を入れている?」


「え?え~と…一段階目の身体の強化と目の強化、

それと風打ちの“(はね)”、“(ふるえ)”、“(かけ)”を詠唱なしで使えるようにしてるな」


「あれ?」


最初に気付いたのはファイゼンだった。


「トウヤが創ったアンクレットって(かけ)と同じ効果だよな?」


「あ!」


「そうだ。デバイスと魔法の効果が重なっている。しかも付加ではなく同じものだろ?」


(かけ)は強化する点は速さしかないが、これは魔力の操作で十分出来る。


つまり(かけ)(かけ)を合わせても効果がほぼ無いのだ。


「せっかく“創る力”なんだから、こういう時に上書き出来るようにしないとな」


「みんなあれやこれやで苦労してるのに、全部自己解決とかまさにチートだな」


「嘆いても仕方にゃいにゃ。使えるもんは徹底的に使うにゃ」


「そうだ。得た物に羨みや妬みを言っても何にもならねぇ。そんな暇があるなら精進しろってことだ」


こういう時、細かい事を気にしない二人は好ましい。


「ってことは武術の修行をしながら付加魔法の改良をしないといけないのか…」


「せっかく良い能力持ってんだ。いいように使えよ」


そう言うとリーシャは去って行った。


と言うより離れた場所で自分の修行をするようだ。


「何だかんだで面倒見がいいよな、あいつ」


「…羨ましい…」


「え!?」


「羨ましいにゃ!にゃんでおみゃ~にはあんなに優しいにゃ。おいらの…おいらのときは…」


リンシェンは目を潤ませながら訴えてきた。


「不公平にゃ~!!」


手足はまるで駄々を捏ねる子供の様にバタバタさせている。


「…知らん」


相手にするのも面倒になってしまったトウヤは、勝手に修行を始めた。




ギルドの談話室に行くと、トウヤが何かを動かしながらブツブツ言っていた。


「おつかれ、トウヤ。何してるの?」


「ああ、ポーラおつかれ。リーシャに言われて能力の改良をしてるんだ」


「…普通はそんなこと出来ないけど、そういう能力だったわね」


常識が通用しない能力にまだ慣れず、ド肝を抜かれてしまう。


隣にはうたた寝をしているリリスが居た。


「リリス、寝るなら部屋に戻りな」


「本人が嫌だって言ってたから、後で俺が連れて行くよ」


「そう。で、どんな改良をしてるの?」


テーブルには用紙を張り付けた駒があった。


「エンチャントの改良だよ。リーシャにデバイスと能力が重なってるって言われてね」


「ああ、そうか。(かけ)が重なっているのね」


「そ。だからデバイスに移動系の能力を、ファーストに強化系の能力をって分けたんだ」


用紙にデバイス、ファースト、セカンド、サードと四つに区切り、

デバイスと区切った場所に(はね)(かけ)(そり)と書かれた駒があった。


(そり)って攻撃魔法じゃないの?」


(そり)は鎧みたいなものを纏って突進してるんだ。だから移動の時に身を守るって感じだ」


固い鎧はそれだけでも攻撃になり得る。


「ファーストの魔道士の基本的な強化ってことは、この時はあまり戦わないつもり?」


「そう。だからセカンドまでの時間は短めにする予定だよ」


「それは弱みになるわね。だから基本的な(きり)(ぬき)はファーストにして牽制ってのはどう?」


「なるほど。牽制が出来るなら少し時間を延ばしても良さそうだね」


「そうね。そこに武器デバイスが加わると効果的じゃない?」


「ああ、ここでデバイスか」


こう見てると、とても真面目で素直な様子が見える。


この子を選んで正解だった。


ポーラはそう思えた。


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