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幻想冒険譚:科学世界の魔法使い  作者: 猫フクロウ
それは甘く蕩けて灰になる
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君の匂いのせいだよ

リリスは嘘をつくと言うことを知らないせいか、誰に対しても本心で接している。


俺、ポーラ、リーシャ、ソニアさんに対しては至って普通である。


特に俺とリーシャに対しては抱きつくほど親しくしている。


一応リンシェンも不思議な物を見るような感じだが、普通に接している。


そしてジェシーさんを始め生活に関わる人達にも普通に接していた。


のだが…




「あ…あの~、二人とも?何で俺を挟んで睨み合ってるの?」


リリスとルーはトウヤを挟んで睨み合いながら食事をしていた。


「……」

「べつに~」


(く…食いづらい…)


この二人は初対面からぎこちなかった。


何か…お互いを敵と認識しているような感じだ。


この状況から抜け出すためにミナに助けを求めたいが……




ジトーー




ミナの目が冷ややかで怖い。何かやらかしたか?


あいにく、全く覚えが無い。


そういえばミナはリリスと初めて会った時から冷ややかな目をしていた気がする。


ああ、なぜだかさっぱりわからない。わかる人よ、教えて欲しい。


そんなこと願っても何も変わらないので諦めると同時に切り替える。


「へ、部屋で食べることにするよ」


基本的に食事はどこでとっても許される。


ただ、食器だけはその都度返さないといけないので、食堂でとる人が多いのだ。


部屋へ向かおうと立ち上がると、二人も立ち上がった。


「……」

「一緒に食べるわよ」


「いや来るなよ、一人にさせて」


「一緒…」

「一緒じゃなきゃダメ!」


意見が合うあたりは仲が良いのか?


埒が明かないので、向きを変え席に座る。


座ると言っても元の席じゃない。ミナの隣だ。


「ちょ!?私を巻き込むな!」


そう言い席を空けようとするミナの肩を掴み無理矢理座らせる。


「俺はここに座る。お前らはそこに座れ」


ぐぬぬと口を紡ぎ、トウヤとミナを交互に見るルーとリリス。


ミナはこっちを見るなと目を逸らしていたが観念し食事を続けると、ルーもリリスも観念し着席した。


険悪なムードの中、トウヤは切り出した。


「なんで二人ともそんなにいがみ合ってるの?」


((いや、あんたのせいだから!))


ルーとミナは心の中で盛大にツッコんだが、リリスはあっけらかんと答えた。


「トウヤ、取るやつ。こいつ、見張る」


「ば!?ばか!そんなにはっきり言わないでよ!」


「「……」」


嘘をつくことを知らないということは余計なことも平然と言ってしまう。


しかしそれに過剰反応して大声で言ってしまう方も同類かもしれない。


「取らないよ。リリスと一緒だよ」


「私と…一緒?お前…トウヤと一緒にいたい?」


「い、いたくないわよ!」


「いたくないって…」


リリスは不満そうにルーを指さす。


「それは嘘。正直に言うのが恥ずかしいだけ」


「恥ずか…しい?」


「そ。まだリリスには無い感情だよね」


先日もリリスは平然と人前で着替えようとしていた。


ポーラが教えていたが、まだよくわかっていないようだ。


「…羞恥心が無いってのも困るな」


「それな」


ミナが耳打ちで話してきたことに同意する。


ルーとリリスはまるで真反対だった。


「リリスにとって俺は外の世界に連れ出してくれた恩人なのかもしれない。

だからずっと一緒にいたいって思ってるのもわかるよ。

でもせっかく外に出たんだから他の人とも仲良くなってみないか?」


「ん~ん?」


「よくわからないか?ルーにもハグハグするのは?」


そう言うとリリスはルーに抱きついた。


「ちょ!?え!?」


スンスンと抱きつくと同時にルーの臭いを嗅ぐ。


「ちょ!?や、やだ!」


そう拒絶するとリリスは嗅ぐのをやめた。


「へ…変な臭い…」


「はあ!?あたしが変な臭いとかふざけたこと言ってんじゃないわよ!」


そう反論するとルーの背後に肩を抑えるように立つ人影が現れた。


「これはフローラルの香りよ。というかレディの匂いを嗅ぐなんてマナー違反よ」


その人影、ジェシーさんはそっとルーを座らせた。


「あんたたち、騒ぎ過ぎよ。あとトウヤ君、この子に一般常識ってのを早く教えなさい」


「はあ…ルーの匂いっていい匂いだからリリスも気に入ると思ったんだけどな」


「!?」

「う!?!?」


さらりとトウヤが発した言葉に、ルーは顔を真っ赤にし俯き、ミナは口にした食事を吹き飛ばしそうになった。


「あ…あんたも常識が欠けてるところがあるから一緒に勉強しなさい」


ジェシーはドスの効いた低い声でトウヤを睨み付ける。


「は…はい」


あまりの威圧感に顔が引きつってしまった。


ジェシーが厨房に戻ったのを確認すると、再び話をする。


「と、とりあえず、リリスだってポーラやリーシャみたいな人がたくさんいると嬉しいだろ?」


「ん~たくさん、いる、いいの?」


「そりゃいいよ。出来ることがたくさん増えるし、いろいろ知ることだって出来るだろ」


「ん~んっ!ルー、トウヤ取らない、なかま」


リリスはそう言うとルーに両手を出した。


「え?これって手を繋ぐってこと?」


「じゃないかな?」


そっと手を繋ぐと、リリスがグイッと引っ張った。


「なかま、なかま、なかま」


ぴょんぴょん跳ねながら回り出すリリスと引っ張られ戸惑うルー。


「まるで子供のおままごとだな」


「あー友情ごっこってやつ?」


冷ややかな目で眺めるミナにトウヤは納得してしまった。


まだ幼さを残すリリスとそれに振り回されるルーで仲良し姉妹といったところか。


いがみ合った二人は一方的な感じだが、多少は関係が良くなったと言えるだろう?




「ああ、そうだ。匂いの(くだり)だが、香水って言うのは持ってる?」


「香水?コロンのことか?」


「ああ、コロンはあるけど香水は無いんだな」


「違いはよくわからないが、部屋や室内で使う匂い水ならあるぞ」


「十分。あとで部屋に持ってきてくれないか?」


「なにに使うんだ?」


「リリスってかなり匂いを嗅ぎ分けられるみたいだから、いろんな匂いに慣れさせようと思って」


「そう言えばルーの匂いを嗅いでたな」


「そう、俺もリーシャもポーラもやられた。たぶん匂いで人をある程度判断してるんだと思う」


「そうなのか?それは個人の能力として役立ちそうだな」


「それと匂いでパニックにならないようにさせないとな」


「ああ…刺激臭とか大変そう…」


「それな」


「それに…風上にあるものなら匂いで何があるか判断出来るかもしれない」


特定条件下ではあるが、かなり有利な能力であると言える。


「あと匂いの好みとか知っとかないと、変な臭いのとこに連れて行っちゃうかもしれないだろ?」


「ああ、嗅ぎ慣れないから嫌なだけかもしれないしな」


リリスの鼻を活かすことが出来れば、危険をいち早く知ることも出来る。


ふとミナが自分の匂いを嗅いでいることに気付いた。


「なにやってんの?」


「!?べつに!」


そう声かけられ慌てて元の姿勢に戻るミナ。


「ああ、ミナもルーと同じフローラルだけど少しハーブが入っていていい匂いだよ」


ミナはポンと赤くなると拳をトウヤの頭に押し付け、グリグリと捻じ込んだ。


「そういうのは言うな!」


「いだだ、臭くないからいいじゃん」


「そういう問題じゃない」


トウヤにはまだ問題解決にはほど遠かった。


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