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幻想冒険譚:科学世界の魔法使い  作者: 猫フクロウ
それは甘く蕩けて灰になる
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リリス・フランベール2

ボロニアの地震被害は、魔道士の到着が早かったこともあり、かなり抑えられたらしい。


ポーラにそんな話をされながら、リリスと共に局へ戻った。


「リリスさんはこちらへ」


局へ着くなり病室のような部屋に案内された。


「これはどういうことですか?」


問答無用な姿勢に少々不信感を抱きながら説明を求める。


「封印したとは言え、能力で被害者が必ず出るものです。

経過を見て問題ないと判断されない限り、自由にすることは出来ません」


「彼女にとって最高の環境である場所で問題なかったんです。

今さらこんなところでやっても無駄では?」


「これは彼女の能力を確認する意味もあります。どうかご理解を」


まるで幽閉するようなやり方に不快感があった。


「なら、私が参加するわ。それなら彼も納得出来るでしょ?」


突如現れた女性に、案内人とトウヤは驚いた。


「ソニア様!?どうしてここに!?」


「ポーラが珍しい能力を持つ亜人の子を保護したって話を聞いてね。

あたしも確認したくなったのよ。何か問題でも?」


「こ、このようなことに貴方様のような方が参加されなくても…」


案内人の言葉がシドロモドロな感じになってきた。


「あたしは自分の目で見て確認したいの。知ってるでしょ?」


「で…ですが…」


「それにトウヤ君とは顔見知りだから、あたしが直接説得してあげるって言ってるのよ」


反論出来なくなった案内人は渋々了承するしかなかった。




「局の中では魔族は敵対勢力なの。だから検査と言う名目で実験して抹殺するつもりだったのよ」


「そうだったんですか?」


「ええ。だからポーラは予めあたし達に連絡していたのよ」


「なるほど。ありがとうございます」


「いいのよ、検査したいってのはあたしも同じだし。

その石化の魔法も魅了(チャーム)の魔法も使用を禁止されているの。

でも悪い方に使わなければ強力な魔法よ。だからしっかり教えてあげてね」


そう言うとソニアは退出した。


「トウヤ、あれ…なまえ…」


「ああ、ソニアさんだよ」


「そ…に…あ?」


「そう、ソニアさん」


「そにあ…そにあ…」


「局では有名で力のある人だよ。あとでお礼を言わないとね?」


「おれい…ありがと?」


「そう、ありがとう」


「…うん」


稚拙ながらも覚えた言葉で会話するリリス。


(局内は思ってた以上に黒いよな)


局ではマスターよりも上の立場の人間がいて、そいつらの中にはどす黒い野心を持った輩がいる。


知らないうちにリリスの身に襲い掛かるかもしれない。


(ポーラってそれを知ってて封印をしたのか?)


今になってリリスが魔法を使えるように封印したことが、良い方向に進んでいると理解出来た。


「こりゃポーラには頭が上がらないかもな」




検査が終わりソニアと別れると、訓練場へ向かった。


道中、なぜかいつも以上に視線を感じたがリリスが原因だろうか?


(見た目で亜人と判断出来ないほどなんだがな。噂が広まったか?)


そこは気にしても仕方ないので、目的を優先した。


「ミナ!ルー!」


訓練場に到着すると、予め連絡していた二人が準備してくれていた。


「あ、トウ!?……」


「ん?どうしたんだよ、ルー」


なぜかルーは顔を引きつらせていた。


「…言っただろ、ふつーに誰でもやるって」


ミナはジトっとした目でトウヤを見ながら言う。


「なに?何か変か?」


両手を上げ、自分の身体を確認するが、変な所は見当たらない。


と言うか二人の視線が上に上がった気がする。


その視線の先を見ると、互いの手をしっかり握った手があった。


(あ!)


前に手を繋いだとかで何だかんだあったのを思い出し、急いで手を離すがリリスが離さない。


「そ、それよりも頼んだこと出来てる?」


「…ああ。出来てるよ、こっちだ」


そう案内されると同時にお腹をど突かれた。


「君は天然か?ハーレムでも作るつもりか?」


「すみません。…うっかりしてました」


それ以上は何も言わないミナの圧力が強かった。


そして刺すような視線が二つ…


え?二つ?


どうやらこの視線はルーとリリスからのようだ。


いや、ルーはミナの言う通りだろう。でもリリスも?なぜ?




目的地に着くと、巨大なワイヤーネットが敷かれていた。


中心にリリスを立たせると、目的を説明した。


「リリスの封印には、封印した力の一部を制御出来るように出来ている。

だから早速で申し訳ないが、早めに力の操作を覚えてもらいたいんだ」


「おおきさ…かえる?」


「そう。このネットは俺が魔力を送ることで光る物質がついている。

それを目印にして、操作してほしいんだ」


「まる…だめ?」


「それだと俺が隣に居たら使えないだろ?」


コクリと頷く。この練習の意図がわかったようだ。


「初めは丸でいい。でもそこから一部を凹ませるようにしてほしいんだ。出来るかい?」


そう聞きながらネットを光らせると、リリスは結界を操作した時のように両手を握った。


パリンと音がするとネットの光が消えた。今はまだ丸のようだ。


そしてここから結界の大きさを変えられると言うことは、ある程度の操作は受け付けるということ。


つまり全体を操作するのではなく、一部分だけ操作するようにする。


その感覚はリリスにしかわからない。


「しかしほとんど喋れないと聞いたが、今はだいぶ理解しているな」


「ああ。ものすごいスピードで言葉を学習しているよ」


「産まれて二年で人間社会に溶け込めるようになるんだ。スピードはあれで普通かもしれないぞ」


「たしかに…」


「そしておそらく…」


そう言っているうちに光が消えた部分の一部が再び光出した。


そしてその光は徐々に広がり、リリスの前半分を照らした。


「これで…どう?」


予想以上の速さにトウヤ達は驚いた。


「さすが魔族だ。亜人の中で最も人間に近く、魔法に長けた存在」


魔法世界で知られている魔族のイメージか。


「ねぇ、あんた。もしかしたらそれを線のように放つことも出来るんじゃないかしら?」


ルーがそう進言すると、リリスはなぜか不満そうな顔をしていた。


「どうしたの?リリス?」


ルーを見ているようだ。


「ん?顔に何かつ…!?」


「え!?」


「は!?」


突然リリスがトウヤに抱きつく。


「え!?ちょ!?なに!?」


トウヤは訳も分からずにいた。


「へ…へぇ…」


「あ~あ、私し~らないっ」


「え!?ミナ理由わかったの!?」


ミナはそっぽ向いて答えない。


「さっさと離れなさいよ!!」


ルーはトウヤからリリスを無理矢理離そうとする。


「や!やあ!!」


リリスは力一杯抱きつく。


「ちょ!?ケンカは止めろ!ってかミナ!助けて!」


「しらな~い」


魔法による攻撃はしなかったが、物理的なひっかき傷は残った。


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