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幻想冒険譚:科学世界の魔法使い  作者: 猫フクロウ
それは甘く蕩けて灰になる
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トウヤ救出作戦

「な…なんだここは!?」


森の中だというのに辺りの木々は薙ぎ倒されていた。


「これは…断層か?地震で地面が割れたのか」


最悪のシナリオがリーシャにも理解出来た。


「トウヤ!トウヤ!!何処だ!!」


魔法無しでこの場から探し出すのは難しそうだ。


「とーや!とーや!」


一点を見ながら彼女は名前を叫んだ。


(まさか、こいつには場所が解かるのか?)


住んでいたと聞いたが、これだけ変わっても解かるのは何かの力だろか?


「…誰か…来たのか?」


絞り出すような声が聞こえた。


「トウヤ!?うちだ!」


やはり生き埋め状態になっていたようだ。


「リーシャ…か?…木に…潰される…」


「わかった!待ってろ!」


倒れた巨木を動かす。


ポーラの勘は正しく、魔法が使えない環境下ではリーシャの怪力が役に立った。


最後の木を退かそうとした時…




ミシッ!




「くっ、これを動かすと周りが崩れそうだ」


この木を退かせばトウヤを助け出せる。


しかし、退かせば奥の木が倒れて、また埋まってしまいそうだ。


「なんとか這い出られねぇか?」


木を支え、トウヤの居られる空間を確保する。


「足が引っかかって動けないんだ」


じわじわと押し潰されていたが、そこはなんとか解放された。


「チッ、町の被害も甚大で人が足りてねぇんだ」


「はは、運無いなあ」


「せめて魔法が使えたらなぁ」


「…あの子は?」


「ん?ああ、そこにいるぞ」


リーシャは彼女に合図を送った。


「おい、こっち来な。トウヤと話せるぞ」


「…とーや…とーや。とーや」


泣きそうな声を出しながらトウヤの腕を掴む。


「こいつ、お前の名前だけは解かるんだな」


「ああ、初めに名乗ったのが良かったみたい…っていででででで!」


彼女が力一杯トウヤを引っ張り出そうとした。


「止めてやれ、足が引っかかってるんだ」


「とーや。とーや」


彼女の気持ちは解るが、手の打ちようがない。


「せめて言葉が通じれば指示出来るんだな」


話すことが無かった彼女は言葉を知らずに育った。


「いや彼女がここにいるなら、いけるかもしれないぞ」


「ん?どういうことだ?」


「リーシャ、俺を脱がしてくれ」


「……」


「どうした?はやくしてくれ」


「は!?はあ!?お前こんな時に何言ってんだよ!」


「ん?何がだ?」


「だ、だだ…だから…何でこんな時に素っ裸になるんだよ…」


「…いや、脱ぐの上だけだよ!?」


「へ!?」


「上着にAMSのサンプルが付いてるんだ。それを取ってくれって意味だよ!」


「あ、ああ!そう言う事か、ビックリしたぜ」


「こっちがビックリだよ」




「どういう作戦だ?」


リーシャはトウヤの上着を引っ張りながら聞く。


「俺らが魔法使えないのはAMSがあるからだ。でもAMSが無いとあの子の暴走で石化する。

なら俺らのAMSをあの子に持ってもらい、離れたところに待機してもらえばまた魔法が使えるだろ?」


「ああ…でもあの子大人しくしてくれるか?」


言葉が解らないので離れて待ってくれと言っても理解しない。


「今、木はどんな風に積み重なっている?」


「ん?この木に乗るように倒れているぞ」


「ああ…俺の質問が悪かった。俺がどの方向に砲撃を打てば助かりそうだ?」


「は?お前今、魔法が…そういうことか」


リーシャも狙いがわかった。


伸ばせてる腕を使い、砲撃の方向をイメージする。


「ここだな。ここで指先から放射状に放てば吹っ飛ばせる。属性は風で十分だ」


上着を取り除き、人差し指の形を固定させる。


「OK。あの子を頼んだ」


「ああ、少しだけ踏ん張れよ」


そう言うと即座に駆け出した。


「やれぇ!」


そう叫び、離れる。


リーシャが離れた瞬間、ミシミシッ!と大きな音がする。


「!?とーや!とーや!」


AMSの範囲から出ればトウヤは魔法が使える。


そして全てのAMSを持つリーシャが彼女を抱えることで彼女の暴走も抑えられる。


一番重要なのはリーシャが彼女と共にどれだけ早く離れられるかだ。


「暴れるな!トウヤを助けるためだ!」


暴れる彼女を抑え、大急ぎで離れる。


(まだか!?)


そう思った瞬間だった。




ドーン!




鈍く何かがぶつかるような音がした。


「トウヤ!?」


「とーや!とーや!」


しばらく待っても変化が無い。


「トウヤ!!」




「うっへ~、泥まみれになっちった」


歩いて姿を見せたのはトウヤだった。


「とーや!とーや!」


リーシャの腕をすり抜け、彼女は走り出す。


「ちょ!?」


「いい!?」


トウヤとリーシャは慌てて彼女に駆け寄る。


何ともない。大丈夫なようだ。


「とーや。とーや」


すり寄るように抱きつく。


「ようやく、連れ出せるな」


「ああ、これならあの機械で大人しくしてくれそうだな」


「あの機械?」


「リンシェンが作った、こいつの暴走を止める機械だ」


「そうか、うまくいきそうか。よかったな」


そう笑顔で言うと、彼女も笑った。


「あ、初めて笑ったな」


「ん。あうあ」


そう彼女は答えると、リーシャに抱きついた。


「は!?ちょ!?何だよこいつ」


「この子なりの感謝のしるしだよ」


「そうなのか?」


スンスン。スンスン。


「ちょ!?匂いを嗅ぐな!」


彼女は人を匂いで判別するようだ。


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