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幻想冒険譚:科学世界の魔法使い  作者: 猫フクロウ
それは甘く蕩けて灰になる
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大災害

「にゃっはっはっは~。待たせたにゃ!」


地面に描かれた転送用魔方陣からゆっくりと現れるリンシェン。


そして一緒に現れたのは大きな鉄材…もとい足の生えたボール状の機械だった。


機械はかなり大きく高さ、横幅、奥行共に数十mはある。


壁は無くスカスカな骨組みだけだが、正方形の箱の中にボールが入っているような形だった。


「…何なの?この巨大な機械は」


ポーラ達は顔が引きつってしまっている。


「時間にゃくてそのまま使ったから、デカくにゃり過ぎたにゃ」


「これはどういう機械なんだ?」


「周りにサンプルでも使ったAMSがあってにゃ、それを起動すると巨大にゃAMS空間が出来るにゃ。

そして中央の台座にょところはAMSの範囲外にゃんだにゃ。ここで石化魔法を使わせるにゃ」


つまり起動すると巨大な球状のAMS空間が出来上がる。だが中心部分ではその空間が無い穴が出来る。


そこに暴走状態の彼女が入ると、魔力の供給を断った状態で暴走状態にさせることが出来る。


そして時間が経つと魔力を失い、暴走を止めることが出来るのだ。


「なんでこんなにでけぇんだよ」


「範囲制御が上手くいかにゃかったから、デフォルトの範囲でやったらこんにゃデカくなったにゃ」


「まさかこれある意味で未完成なのか?」


「うにゃん!制御出来て初めておいらにょもにょにゃ。時間にゃいから今回はこんにゃ感じにゃ。

にゅっふっふっふっ。まだまだ楽しみにゃ~!」


ゲスく嬉しそうなリンシェンの顔に思わず引いてしまった。


「うにょ?そういえばトウヤはまだかにゃ?」


「ええ、まだ中で接触してるわ。上手く連れてきてくれるといいのだけど」


森の結界は消えている。レーダーによると一緒に動いているらしい。


入れ違いにならないためにも、こちらは動かない方が望ましい。


ふと足元に揺れを感じた。


「?」


「ん?地震か?」


その声と同時にズンと激しい揺れに変わった。


「うお!?」


ポーラ達は思わず飛行魔法で浮かび上がる。


「うにょ!?壊れる!!持ち上げてくれ!」


身の心配より機械の心配をするリンシェンにつられ、慌てて一緒に持ち上げる。


「かなり大きいわね」


屋外なのに地鳴りのような音がする。


ドン!


という鈍い音に合わせて真下の地面が割れる。


「うにょ!?持ち上げて正解にゃ」


持ち上げてなければ地割れで破損していたかもしれない。


「町は?住民は平気なの?」


「災害援助要請を出しました。現在、行ける魔道士を集めています。

また家屋が崩れてる可能性があります。至急救助へ向かってください」


「トウヤはどうする?誰かここで待ってないとまずいんじゃないか?」


「…レナ!トウヤの監視をお願い」


「私が…ですか?通信手段が無いのに?」


「レーダーで森から抜け出るようなら私達に連絡して。それで向かえばいいわ。

それとこの機械も一度戻して、サポーターもある程度こっちにちょうだい」


「わ、わかりました」


「まともに動けるのは限られてるわ。全員で住民の救助にあたるのよ」


「「「おお!」」」


リンシェンの機械を一度片づけ、動ける四人で救助にあたる。


これが最も良い選択だと思っていた。




痛い


それと同時に震えが止まらない。


それは彼女も同じだったみたいだ。


震えてる、つまり生きている。


「あっ!…う……」


身体を動かそうとすると痛みが走る。


状況は?


足の上に何かが乗っていて動かせない。そして地面?


倒木で塞がれているが、凹んだ地面に体があるようだ。


そして…身を守るように彼女を抱いていた。


そうだ、木が倒れてきたから助けたんだっけ?


「大丈夫?」


そう問いながら彼女の体を揺する。


「ううっ。ううっ」


泣き出しそうな声で返事をする。


「どこか痛むところあるかい?」


「ううっ。ふぇ、ひっく」


「ごめん、泣くのは後にして…」


トウヤは手を動かし、倒木を押してみる。


頭の方が少し動いた。一人なら出られそうだ。


抱いている彼女を動かし、出口に押し出す。


「あっあっ、あう~ふぇあ~」


彼女が嫌がって出ようとしない。


「いいから行け!!」


怒鳴りつけるように言うと、彼女が大人しくなった。


背負っていた荷物も上手く持ち上げ、彼女に渡す。


「うっ…ふっ!…くっ!やっぱり足が取れねえか」


身体が痛いこともあり、力がそんなに入っていないのかもしれない。


トウヤは抜け出せずにいた。


「あう!あう!」


彼女がトウヤの手を掴み、引っ張り出そうとする。


「ああっ!!」


無理矢理引こうとすると痛む。


「これは自力では無理だな」


助けを呼びたいがAMSの影響で魔法が使えないので連絡のしようが無い。


「そうだ…外に出て俺の仲間を連れてきてくれないか?」


だが彼女は話すことも相手の言葉も理解できない。


「一か…八かだな」


幸い彼女に荷物を渡すことは出来た。


つまり彼女を中心にAMSを使うことが出来ている。


なら彼女がポーラ達の所へ行き、連れ戻ることが出来れば脱出できる。


いけるか?いや、絶対に出来ないといけない。


「頼む。それを持って外にいる仲間に伝えてくれ」


トウヤは荷物を指し、外と思われる方向を指した。


「ふぇあ。うう。とーや!」


やはり彼女には伝わらず、無理矢理引っぱりだそうとする。


「外に行け!!…頼むっ……頼むから外に行ってくれ!」


「あう!やぁ!とーや!とーや!!」


「泣くな!外に行け!!」


腕を掴もうとする手を振り払う。


「ああ!とーや!とーや!!」


何をしても彼女は一緒に連れ出そうとする。


(そりゃそうだよな。せっかくまともに接する事の出来た人だもん。一緒にいたいよな)


一緒にいれる人といたい。一人で外は出たくない。


彼女の気持ちはわかるけど、今は一人でも外に出てポーラ達に伝えてほしい。


どうすれば……どうすればいい?




ズズッ!




かすかに嫌な音がした。


まさか…崩れる?


倒木、地面の隆起、絶妙なバランスで守られたトウヤの空間。それが崩れたら…


「おい!急いで離れろ!崩れるかもしれない」


だが彼女には伝わらない。




ズズッ!




さっきよりも音が大きくなった。


「行けぇ!!」


思わず彼女を突き飛ばすと、倒木が崩れた。


「ああ!とーや!とーやぁ!!」


「大丈夫だ!生きてる!」


「とーや!とーや!!」


「さっさと行けぇ!!」


力いっぱい怒鳴り、彼女を外に行かせる。


とっさに身を縮めたおかげで逃れられたが、上から押さえつけられた状態になってしまった。


本気で時間が無いかもしれない。


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