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幻想冒険譚:科学世界の魔法使い  作者: 猫フクロウ
それは甘く蕩けて灰になる
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考え

「あ~便利すぎて他が使えなくなるぅ~」


ファイゼンは足に装備したデバイスを褒め称える。


「だからって落ちるなよ」


今まで風に乗って飛んでいた飛行魔法は、必然的に風の衝撃を受けていた。


しかしトウヤが作ったデバイスに入っている飛行魔法は空間を切り取り移動する。


それは身体への負担が今までよりもずっと軽くなったため、多少体調が悪くても楽に飛べている。


「荷物も簡単に運べるし、よくこんな風に考えたな」


「俺からすると思いつかないんだなって感じだけど」


「はは、国や考え方が違えば思いつくものも変わる。戦争の英雄も国や考え方が変わればただの殺人鬼だ」


「…たしかに」


「その国では常識でも、他国では異端なんてこともよくある。だから思いつくものも違うと思うぞ」


「……へぇ、意外としっかりした考え持ってるんだな」


ファイゼンは軟派者と聞いていたが、根の部分はしっかりしている。


トウヤはファイゼンのことを勘違いしていたと反省した。


「意外とは余計だ!でも考えをしっかり持たないと女の子にモテないぞ」


「結局そこかよ」


前言撤回。


「特に大事だろうが。お前も男ならわかるだろ?」


「……」


「そういえば地球は一夫一妻って考えで、多数の交際は蔑まれるんだったな。

俺らからすると人間を脅かす脅威が無い国ならではの考えだな」


「ん?それって他の国は違うってこと?」


「ああ、一夫一妻ではないな」


「はぁ!?マジで!?」


「ああ、言ったろ?人間を脅かす脅威があるんだ。人間を繁栄させる為に最善の手を打つのは当たり前だ」


「だからって…」


「それも環境や考え方の違いだ」


「…そう…なのか?」


「俺らの国では人間の数が徐々に減っているんだ。そうでもしないと子供が増えないだろ?

街でモンスターが現れた時、真っ先に救われるのは子供だ。大人はみんな子供を守る為に戦う。

特に高齢者は自分にある未来は少ないと思っているから、体を張ってでも必死に子供を守ってる。

みんなそうやって未来の人間のために生涯を捧げている。

それなのに俺らが未来のための行いをしないって、ご先祖様たちに申し訳ないだろ?」


妙に説得力があった。


「…すぐには受け入れられないな」


「そりゃそうだ」


「でも…俺ら地球人にはないものを背負ってる気がする」


「そうか?…地球人にも背負ってるやつはいるだろ。お前はまだ世界を知らないだけだ」


「…うん」


「っつっても俺も知らないことは多い。

これから知って、学んで、考えて、正しいと思う道を行けばいいんじゃないかな?」


ファイゼンの意外な一面を見たと同時に、自分は浅はかだったなと痛感してしまった。




例の森に到着すると、メッセージを結界内に投げ入れた。


幸い、魔法とは関係ない物であれば石化しなかったので助かった。


読んでくれるか、応えてくれるかわからないが、出来る限り奥に届くように投げた。


「あれ?」


「どうした?」


「いや……リンシェンと見た時より結界が小さくなってる気がする」


「は!?ちょっと待ってろ。…ウィンリー!」


ファイゼンは急いで念話を繋ぐ。


「はいはい!どうしたの?」


「トウヤが結界が小さくなってる気がするって言ってるんだ。位置確認できるか?」


「ええ。ちょっと待って……」


ウィンリーはあれこれ操作する。


「出たわ。これがその辺りの生体反応の位置よ」


二つのレーダー画面が現れた。


「真ん中の一つがあの女性、この複数あるのがトウヤ達だな?」


「ええ。距離を測定すると……ホントだ。距離が短い」


どちらも自分たちは結界の淵にいる。単純な直線距離は明かに短くなっている。


「もしかして中の人に何かあった?」


「いいえ、結界は基本的に術者から離れるものだから、影響が出ないはずよ」


「なら何で…!?ファイゼン!!」


「ん?は!?」


トウヤとファイゼンは目の前の光景に驚きを隠せなかった。


「どうしたの?」


「…結界が……小さくなっていく」


「は!?どうして!?」


「わからない……でも…森の中に入れるようになったぞ」


「ああ。もしかしたら中の人に会えるかもな」


「待って!」


ウィンリーは進もうとする二人を制止する。


「中の人が動いた。…しかも…そっちに向かってる!」


「!?気付かれた?」


「いや、なら結界を小さくする理由がわからねぇ」


結界の外に誰かいるとわかったなら、身を守る為に大きさを変えないはずだ。


ふとトウヤが空へ飛ぶ。


「トウヤ!?どこへ!?」


「綺麗な円状なら上からの方が見やすいだろ!」


トウヤとリンシェンの測定から結界は綺麗な半円だった。なら障害物の少ない上空なら目視出来るということだ。


案の定、上空であれば結界が目視出来た。


「ウィンリー、俺の今いる高さが結界の高さと同じだ。何mある?」


ファイゼンは冷静に新たな情報を伝える。


「およそ50mね。形は綺麗な半円なの?」


「ああ、もしかしたら大きさを変えられるのかもしれないな。動きはどうだ?」


「今いる辺りをウロウロしてるわね。……何かを探してるのかしら?」


「結界を維持するための何かか?彼女にとってはそれが生命線だし」


「確かに。あ、森の外に向かってる」


「このまま話しかければ…」


「ダメよ!彼女は敵か味方か判断できない。メッセージを読ませてからにしましょ」


「ああ、そうだな。トウヤ!地上に降りるぞ」


「え!?何で?このまま様子を見ながら近づいた方が…」


「空からよりも地上から近づいた方が不審者と警戒されにくい。物陰に隠れて様子を見るぞ」


「ああ、わかった」


トウヤとファイゼンは地上へ降り、物陰に隠れて様子を伺った。




数分たっただろうか?彼女はウロウロしながらも森の外へ向かっているようだ。


「そろそろ、外からも見える位置よ」


ウィンリーが位置を知らせると共に緊張が走る。


仮に敵と見なされた場合、結界の大きさを一気に変えられ石化して死にかねない。


慎重に、警戒されないように彼女と接触しなければならない。


「おかしいわね。いくつかメッセージの辺りを通ったはずよ。彼女の動きが変わらないのはなぜかしら?」


不意にウィンリーが問いかける。


「気付かなかったんじゃねぇか?森だから障害物は多いし」


「だとすると接触は難しいわ。警戒されたままだもの」


「あ!」


ふとトウヤが気付いた。


「あそこ。あの人じゃね?」


森の中に人影が見える。女の顔だ。


「あれが…ターゲットか」


ふと女が何かを見つけ、拾い上げる。


トウヤとファイゼンが投げ入れたメッセージの紙だ。


しかし女は紙を確認すると投げ捨てた。


「あれ?メッセージに気付いてない?」


「いや、見てたはずだ。見て投げ捨てたように見えたぞ」


「どういうことだ?」


理由は解からない。信用されていないのだろうか?


「トウヤ、接触するぞ」


「え!?大丈夫なの?」


「メッセージは見ていた。でも投げ捨てたのは信用していないからだ。なら直接話して訴えるしかない」


「そんなことしたら結界が…」


「そしたら全力で逃げる。小さくしたとき徐々に小さくなっただろ?

なら一気に変わらないタイプだ。全力で逃げれば逃れられるだろう」


「うん…まあそうするしかないか」


トウヤとファイゼンは一か八かの賭けに出た。


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