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幻想冒険譚:科学世界の魔法使い  作者: 猫フクロウ
それは甘く蕩けて灰になる
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ボロニアの怪奇

「うひょ~、古いな~。見慣れなくて逆に新鮮だよ」


「前時代的でわくわくするにゃ!」


町を見下ろす高台で、一行は初めて来る町“ボロニア”を眺めていた。


「…やっぱり…お前らは…へ…なんだ……うぷっ」


「おい、吐くなよ」


生き生きとしているトウヤとリンシェンに対し、

ポーラ、ファイゼン、リーシャは吐き気を懸命に我慢している。


移動中に聞いた話だと、ボロニアは地球とは反対に空気中の魔力(マナ)の量が非常に多い。


それは魔法を使っても回復が早い反面、あちらこちらから魔力(マナ)の刺激を受けることになる。


それは個人差にもよるが、常に酔っているような感覚になるらしい。


「おいら達がにゃんともにゃいってことは、噂通りってことにゃ」


科学世界の人間はこの感覚が鈍く、酔いづらいようだ。


「こりゃ俺らで済ませるしかないな」


このクエストがなぜうちらに回って来たか、よく理解出来た。


局の中でこの環境に耐えられ且つ達成できる可能性があるのは、トウヤとリンシェンだと言うことだ。


「三人は帰った方がいいんじゃね?」


「そうだにゃ、その方がいいにゃ」


「…いや…慣れる…も…いるよ…」


非常に心配だが、やはり慣れることは出来るようだ。


「とりあえず拠点としての宿を探さないとな」


「そうするにゃ」




依頼主が町長だと知り、尋ねるとすぐに宿へ案内された。


「すみません、魔道士の方々には難しい環境だと存じていますが、なにとぞこちらも被害が多くて」


町長のおじさんが平謝りしっぱなしだ。


「いえ…こちらも出来る限りのことは…したいので」


三人の中で一番症状の軽いファイゼンと、トウヤとリンシェンで話を聞く。


「で……討伐の依頼…でしたが…被害は…」


ファイゼンはまだ辛そうだが、話を進める。


「はい、ここ数カ月で70人くらいです」


「くらい?」


トウヤが返す。


「実は遺体が見つかっていないのですよ。ほとんどが行方不明で…」


「行方不明なのに、なぜ対象のせいだと?」


「場所です。全て町の西方の森なんです」


町長は続けて説明する。


「西方の森は我々にとって必要な資源が手に入るので、定期的に採掘の仕事があるのですが…

二年ほど前から消える人が出始めて、先日ついに行方不明者の石像が見つかったんです」


「石像?」


「はい、髪の毛一本一本まで作られた不気味な石像だったのですが、

その石造、行方不明者がそのまま石になったように精巧に作られているんですよ」


「石に…ですか?」


なんともきな臭い話である。


「そしてもっと不気味なのが、その石造は行方不明になった時に着ていた服を着ているんです」


「服…着せたとかは?」


「姿勢からして考えづらいです」


となると行方不明者がそのまま石になったと考えるのが自然か?


「それから森に監視を立てたのですが、その監視も道具を残して行方不明になってしまって…

そして遠くからの監視でようやく女がいることがわかったんです」


「そいつが討伐対象の女ですね?」


「はい…」


話の流れだとその女が行方不明の原因のように聞こえる。


「人を石にする魔法なんてあるの?」


トウヤがファイゼンに問う。


「…悪い……俺は…ポーラみたいに…詳しくねぇ…」


「魔法だとすると何か痕跡があるのかな?」


まだ魔法事情に疎いトウヤにはわからないことが多い。


「にゃら実際に見てみるにゃ」


「確かに、現場百回とも言うし行ってみるか」




「うわぁ、見づらいな」


「でもあの辺りだけ綺麗に見えるにゃ」


ファイゼンをポーラ、リーシャへの報告兼休憩として宿に置いて、問題の森へ来ていた。


「ここにも魔道士っているんですよね?」


「いいえ、存在は認知していますが魔法を使う利点がありませんので、ここで使う文化はありません。

それに局の環境はわれられには酷な環境です。なろうという人もいませんよ」


メリオルから地球へ行くことに近いことが起きるのでボロニアからメリオルへ行く人は少ない。


それが魔法文化から離れている原因だと、この監視官は説明した。


さらにボロニアは魔力(マナ)が非常に濃いため、(ごう)で見ても砂嵐のように見づらい。


しかしそのおかげか、対象の魔法と思われる結界内はハッキリと綺麗に見えるので一目でわかった。


その結界に魔法で作った金属棒を指すと、刺した部分が石になった。


「決まりだな」


「にゃ」


この結界が石化の原因だ。


だが疑問が残る。


「なんでこんな結界を作ってるんだ?」


「それに森の植物はにゃんともにゃさそうにゃ」


「ってことは魔法と人間にだけ反応しているのか?」


「どうやってるにゃ?魔法と人間だけにゃんてルールは作れにゃいにゃ」


「人間も大きく括れば動物だ。他の動物を探してみよう。何か手がかりがあるかもしれない」


結界の周りを探ろうとした瞬間、結界が動き出したので思わず飛び退いてしまった。


「ど、どうしたのですか?」


突然のトウヤとリンシェンの行動に、監視官は困惑した。


「結界が動き出したんです。今も動いている」


「一回離れるにゃ」


「そうだな、気味が悪い」


捜索を打ち切り、監視拠点へ戻ることにした。




拠点に戻るとファイゼンが来ていた。


「大丈夫なのか?」


「ある程度動ける。…監視ぐらいは任せろ」


(任せろって大丈夫なのか?)


ふと通信が入った。


「私よ……とりあえず…話だけは聞けるわ」


声の主はポーラだった。


「じゃあ一応報告するけど、調べた結果、結界魔法で石にしていたようだ。

(ごう)で見ると砂嵐の中に綺麗な場所がある。それが結界みたいだよ」


「目を見るとか…そんなんじゃないのね」


「ああ、それとその結界、動くみたいなんだ」


「え?……動くの?」


「ゆっくりと動いたにゃ」


「動くタイミングは?」


「わからねえ。近くにいた時に急に動き出したし、

見えていない監視官さんが一緒だったから避難してきたんだ」


「賢明な判断ね…一般人に被害を…出すわけにはいかないわ。

……まだ情報が足りないから…何とも言えないけど…その女が作ってるか…確かめないとね」


「思い当たる能力は無いのか?」


「……目で見るなら…存在するけど…結界は知らないわ」


「存在はするんだ」


「ええ…蛇の亜人に伝わる…呪いにあるわ」


「もしかしてメデューサ?」


「地球にも話があるのか?」


「ああ、目を合わせると石になって死ぬってね」


「その呪いも…同じ感じよ」


「ってことは人間を石にする仕組みがあるってことか?」


「…人間だけじゃないわね」


「じゃあこの後やらなきゃいけないのは、他の動物が石化してないかの確認と、

話にあった女がその結界を作っていることを確認しなくちゃいけないのか」


「ええ……悪いけど…お願いできる?」


「わかった」


ファイゼンは監視拠点での監視。


トウヤとリンシェンは結界へ近づき、突破の手がかりを探ることになった。


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