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幻想冒険譚:科学世界の魔法使い  作者: 猫フクロウ
局と魔法と原石たち
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限界突破

壁に大きな亀裂が入ったと思ったら、すぐに割れてしまった。


そして割れると同時に白い光に包まれる。


(まずい!死……)


動けずにいたが魔法の壁に守られた。


「こっちよ!」


身体を引かれながら状況を理解した。


ティーナの魔法の壁で光線を防ぎ、ソニアが地面に穴を空けそこに全員を避難して光線を避けようとしたのだ。


ティーナも逃げるが、壁が壊れ光線が襲う。


が間一髪ティーナはソニアに引かれ穴に逃げ込むことに成功した。


「あらあら~、ギリギリだったわね~」


真の抜けたような話し方に危機感が感じられないが、バリアジャケットの一部は燃えたように消えていた。


「アグリッター、構えるのよ」


光線の発生元を確認したソニアはミナに伝えた。


それはポーラが失敗したことを示す。


そして視界を奪われた。


「さっきの砲撃が局のシステムを壊したみたいね」


局の会場に施されていた拡大の魔法が解かれたと同時に照明の魔法も消えた。


だが真っ暗な視界の中、彼の放つ白い光は大いに役立った。


「いくわよ、アグリッター!」


「はい!」


ポーラ達が倒れたからには、ソニアとミナでやるしかない。


あわよくば後衛のアルフォートとティアと協力して止める。


「純粋な涙は穢れを嫌う。純白のその身は全てを阻む。“デウス・プロテア”!」


ティーナによる防御強化魔法がソニアとミナの全身を包む。


これで高い防御性能を手に入れたので多少の攻撃には耐えられるだろう。


幸いポーラ達のおかげでトウヤの息はかなり上がっている。


これなら封印することは出来るかもしれない。


ソニアとミナは勝利を確信していた。




「ティーナさん…回復を…リンシェンに回復を…」


ポーラのものと思われる通信が届いた。


「ポーラさん?何処?見えないと回復出来ないわ」


ふと足元の土が盛り上がるのが見えた。それは何かを伝えるように奥へ進んで行く。


その盛り上がりに従い、ついて行った先にポーラ、ファイゼン、リーシャがいた。


ポーラは魔法での防御が間に合い比較的怪我が軽いが、衝撃から身を守れなかったのか苦しそうである。


隣のファイゼンは頭から血が流れていただけでこちらも目立った外傷はない。


おそらく一番問題なのがリーシャ。彼女はぐったりとうつ伏せに倒れていて反応が無い。


「あっち側に…リンシェンが…」


「わかったわ。でも見えないからあなたたちが先よ」


ティーナは簡単な回復魔法をポーラとファイゼンにかけた。


比較的軽症の二人はすぐに体を動かせるようになった。


「ファイゼンはティーナさんと一緒にリンシェンの元へ、私はトウヤの方に行くわ」


そう言い残すとポーラは即座に駆け出した。


「あらあら~、痛み止めをしたら死ぬまで戦いそうね~」


「あいつはあいつで責任を感じてるんですよ」


ファイゼンはそう言うとリーシャを担ぎ上げる。


「あなたが守ってあげないといけないわね~」


「は、はい。そのつもりです」


そう言うと二人はリンシェンの元へ急いだ。




「く、息が上がってるのに何てスピードで動くのよ」


息も上がり魔力も残り少ないと思われる状況。


それでも機敏に動き攻撃してくる様子は、自分の身体の限界を無視しているようでしかなかった。


ソニアもミナも好条件下で戦闘を始めたのに一向に好転しない。


これがトウヤの潜在能力だとすると、推定S+(オーバーエス)ランクなんて結果は納得せざるえない。


「プラズマ・フィスト!」「火纏(かてん)剛槌(ごうつち)!」


そこへ援軍が駆けつけ、重い一撃をお見舞いし吹っ飛ばす。


「セレス!?大丈夫なの?」


応援に駆け付けた友人をポーラは心配した。


「大丈夫…と言い切りたいが自信は無い。でも出来る限りのことは精一杯やるわ」


吹っ飛ばされたトウヤがセレスに飛びかかるがパンと数発音が鳴ると、トウヤはまた吹っ飛んだ。


「狙撃、ってことはティアも行けるのね」


「ええ。相棒の援護は任せて」


戦力が再度揃いつつある。


「待たせたな。俺も参加できるぜ」


アルフォートも狙撃できる体制になったようだ。


「力の出し惜しみは無し!全員で全力で止めましょ!」


ポーラの掛け声に合わせて全員が「オー!」と返事する。


そして前線の四人は同時に呪文を唱える。


限界突破(オーバードライブ)!」




限界突破(オーバードライブ)は一時的な強化である為、この数分が物を言う。


火纏(かてん)刺蜂(しほう)(まい)!」


セレスは炎を纏ったデバイスで突き刺す。その突きは威力こそ軽いが凄まじい手数で相手を襲う。


そして舞が終わると同時にポーラと交代し、攻撃の手を緩めない。


「トライデント・スマッシャー!!」


強力な砲撃が零距離で放たれる。


ポーラとセレス、好敵手(ライバル)同士のコンビネーションは素晴らしく息の合ったやり取りだった。


吹っ飛んだトウヤは宙で止まり反撃に出る。


身体はボロボロ、かなり疲弊した様子が出ているのに動きを止めないのは暴走の影響だろう。


反撃に出たトウヤの位置で大きな爆発が起こる。ミナの魔法“爆滅浄化(エクスパージ)”だ。


トウヤに直接ダメージを与える爆発と、力を逸らす爆発を巧みに使いわけ、トウヤを誘導する。


そして誘導された先ではソニアが用意した魔法に襲われる。巨大且つ無数の槍状の氷が地面から突き上げトウヤを宙に舞わせる。


舞った体勢を整え直おそうとするトウヤだが、アルフォートとティアの狙撃がそれを許さない。


銃のデバイスで乱射され、トウヤは地面に倒れて動かなくなった。




風打ちの(しずめ)、ソニアの檻を破壊した砲撃、そして長時間の暴走。


魔力を大量に消費する魔法をこれだけ使わせても暴走が収まらないのは予定外だったが終わりが見えてきた。


獣のようだった黒い魔力も消えそうになっている。


セレスとポーラが確認し今が封印のチャンスだと確信した時、トウヤはセレスに飛びかかった。




ドクン




一瞬恐怖心に襲われ身動きがとれなくなってしまった。


「しま…!」


その瞬間、トウヤとセレスの間に誰かが立ちはだかった。




ポタッ




ポタッ




トウヤの腕から鮮血が落ちる。


腕は立ちはだかった少女のお腹を突きぬけていた。


「っ…はっ…」


口からも血を吐いてしまう。


「ルー!!」


少女の行動に誰もが身動き出来ずに驚き、言葉を失う中、ミナだけは少女の名を叫び駆け出した。


ルーはトウヤを抱くように倒れる。


「…あんた…まだ暴れるなんて……バカ…じゃないの…?」


ルーは力尽き、そのまま地面に倒れた。


「あ…ああ…ああああああ!」


突如トウヤは叫びだし頭を抱える。


その叫び声で我に返ったポーラは即座に封印魔法を展開し、トウヤの力を封印した。




「ルー!ルー!!」


ミナの呼び声に反応は無い。


「ティーナ!急いで回復を!」


ソニアが回復魔法が得意なティーナを呼ぶ。


後方にいたティーナは急いで駆け付け、ルーの傷口を確認する。


「か…貫通したように見えたけど掠めただけのようね」


全員腕がお腹を貫通したと思っていたが、実際は脇腹を切っただけのようだ。


しかしその傷は内臓のいくつかを損傷。出血も多かった。


「ここでは止血して汚染させない事しか出来ないわ。あとは局内の病院で手術しないと」


回復魔法は表面的な傷を治すことは出来るが、切れた血管を繋ぐなどの行為は手術でなくてはならない。


あくまでも自然の回復力を活性化させることが基本である。


魔法と言っても自然の(ことわり)を壊すような真似は出来ないということだ。


ティーナの応急処置が終わるとミナはルーを病院へ運んだ。


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