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幻想冒険譚:科学世界の魔法使い  作者: 猫フクロウ
局と魔法と原石たち
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模擬戦開始2

トウヤは大きく息を吸い吐いた。


もうすぐ模擬戦が始まる。手加減無しの魔道士とどれだけ戦えるかわからないが、出来る限りやろう。


ストレッチも入念に済ませた。相手のセレスは反対側にいる。まずは見える位置まで移動しないとな。


そうこう考えているとプロペラで浮いた小さな機械が飛んできて、スピーカーから模擬戦のルールが説明された。


要約すると


1.制限時間は2時間。勝敗がつかなければ引き分けとする。


2.勝つための手段は問わないが他人からの信用を失わない程度に止めよ。


3.勝敗は相手の左手に付けたブレスレットを破壊したら勝ちとする。


4.さらに敗北を宣言させることでも勝利とする。


だそうだ。


相手も自分と同じブレスレットを身に着けてるなら簡単に壊せそうだが、

逆に自分の魔法で自滅してしまわないか不安である。


(空間転移で簡単に壊せると思うけど、それじゃつまらないか)


強敵相手に瞬殺出来そうとか、もっと遊んだ方がいいとか考えられるのも何かしらの余裕だろうか?







「レディ?ゴー!」


スピーカーから開始の合図が響き、模擬戦が始まった。


会場が半径3kmと言っていたので相手までの距離は6kmあることになる。


「空に行かれると厄介だな」


トウヤはそのまま空へ移動した。ある程度上がると人影が見えた。


その人影はどうやら観客たちのようで、その中に見知った顔もあった。


(結構人がいるな)


こういうのを好むなんて魔道士は血の気が多いなと思いつつセレスを探すことに切り替えた。




セレスは岩陰に隠れながら地上を進んでいた。探知魔法に反応は無い。


相手は地球の平和ボケした地域の育ちと聞いていたので、

このようなハンティングはこちらの方が上手(うわて)だと予想していた。


岩陰に隠れつつ動き回り、探知魔法で位置を特定する。


そして位置がわかれば一気に攻め立てて優位に立つ。


地球人の魔法は異質な場合が多い。現に相手は制限が少なすぎる具現化系の魔法と聞いた。


そればかり注目されるが、地球人も所詮は人間。育った環境による能力の差は出てるだろう。


昔の文献であった地球人は低酸素、高重力による身体能力は凄まじかったが、

常に戦場にいる人間の感や警戒心と言ったものは低かったとある。


つまり罠を張りながら待ち構えてるだけで、相手が勝手に罠に(はま)るということだ。


平和ボケしたところで育った子供ならこの警戒心はさらに低いと言えよう。


もちろん罠に(はま)っても、地球人の能力なら何も影響無いだろうが位置はわかる。


そこに魔法を使う暇も無いほどの攻撃で攻め立てれば簡単に勝利する。


私はちょうどいい噛ませ犬じゃない。あんな地球人では相手にならない存在だ。


そう自分に言い聞かせ、警戒しながら進んでいった。




2kmほど進んだだろうか?まだ罠に(はま)らない。


時間にして2~3分。そろそろ何か動きがあってもいい頃だ。


そう思った瞬間、空が一気に暗くなった。


上空を確認すると驚愕した。


「何か仕掛けてるみたいだから一掃させてもらうよ」


超巨大な水の塊を両手で持ち上げるようにトウヤがいた。


空の制限があるので丸状ではないが1km以上の範囲を完全に覆い隠せそうなほどの水量である。


「くっ!」


セレスは瞬時に自分の状況を理解した。あの水の塊を落とされたら無事じゃ済まない。


「適当にブルーフォールでいいかな?」


セレスが駆けだすのと同時に水の塊を落とした。


水は滝のように落ち続け、半径3kmの会場全体を深さ数mの水たまりに変えた。




落ちる水を消し、駆け抜けたセレスを確認すると息を切らせながら水面に膝をついていた。


全身びしょ濡れだが間一髪逃げれたようだ。


(魔道士はみんな水の上に立てるんだな)


しかしポーラのように水面に渦が発生していないので、別のやり方があるんだろう。


思わず感心してしまったが、このやり方は好都合である。


当初の目的である相手をびしょ濡れにすることは出来た。これで雷魔法の効果が上がる。


セレスは強化・放出系魔道士だと聞いたので多少の攻撃でもビクともしない堅さを持っているものと予想し、

これくらいやらないと効果は低いだろうと考えていた。


(さあ、次だ)


右手でセレスを指差し、使う魔法のイメージを固める。


地球でも使ってた魔法なのですぐに(こな)し、狙いを定める。


どこまで堅いか、もしくは当たらないか、いざ勝負!




魔法を使った瞬間、ドーンと言う大きな雷鳴と共に大きな稲妻が発生した。


思わぬ爆音に耳がキーンとなってしまったし、あまりにも強い光だった為少し目がチカチカしてしまった。


(思ってた以上だな。次は目と耳を守らないと)


そう自分が使った魔法に反省しつつも、すぐに回復し相手を確認する。


落雷の影響で水煙が舞っていてあまりよく見えない。さらに爆発の衝撃で水が飛んで雨のように降っていた。


手を横に振り、風を起こす。これで水煙は飛ぶだろう。


視界がはっきりとしてきてセレスの様子が見えてきた。


正面に壁のような膜があった。魔法の盾だろう。これで雷を受け躱したと思われる。


しかし落雷の怖さは稲妻の直接的な脅威だけではない。


着地点から数mにかけて感電の恐れがある。そこが水場ならさらに範囲は広がるだろう。


セレスは受けたとき水面に着水していたし、全身も濡れていた。


稲妻自体は魔法の壁で防げても、水面経由での感電は免れられなかったようだ。


現に手足が少し痙攣し、足は水面からやや下がっている。


しかし目は鋭くトウヤを睨み付けていた。


(おおう、こわっ)


そりゃ痛い目に会わされた相手に怒りを覚えるのは当然である。


しかしこれは模擬戦。逆恨みはしないでいただきたい。


身を守る為にも近づかないようにしよう。遠距離攻撃でたたみ掛けるか。


さらに別の雷魔法をイメージする。と言ってもこれはただの雷魔法じゃない。


科学の世界では大掛かりな装置が必要になるが、魔法では小さな鉄くずだけで済む。


しかもトウヤならその鉄くずも創り出せるので、手ぶらで使える魔法。


さっきの雷を受け止めたセレスなら簡単に受け止められるだろうが、実弾で盾の堅さを調べなければ近づけない。


さあ突破口になってくれよ。


そう願いつつセレスを指差すと同時に鉄くずを生成。


そして鉄くずは一筋の閃光となりセレスへ飛んで行った。




「うにょぉぉぉ!あいつやばいにゃ!やばすぎにゃ!」


リンシェンが興奮してガラスを叩きながら覗き込んでいた。


騒がしいリンシェンを他所に一同はモニターをチェックしていた。


「使った魔力に対して威力が桁外れね。今のも鉄くずを生成したのはわかったけど、なんで飛んだのかがわかならいわ」


「放出系ではないのか?いや、なら鉄くずは必要ないか」


「操作系かしら~?」


アルカナフォートから視察に来たステラ、ティーナ、ソニアは論議していた。


特にソニアは戦闘の調査に来たこともあり、自身のPCへの打ち込みは止まらない。


画面上には人の体をした形の物に光が上下したりしている。


「あいつ雷属性か?」


リンシェンがポーラに問いかける。


「いいえ、氷属性だったわ」


「こお!?え?これだけの雷を操って雷属性(ザンガー)じゃないの!?」


ポーラの答えに一番驚いたのはソニアだった。


「うにゃ~ん。ならあいつは具現化・変化系の氷属性だな」


「よ、よくわかったわね。あの子が放出系でも操作系でもないなんて」


「そりゃ電磁砲(レールガン)はただの発射装置。砲撃の要素はじぇ~んじぇ~んにゃ~いにゃ」


言いたいことが言い終わるとリンシェンはまたガラスから会場を覗き込んだ。


「ホントなの?さっきの」


いまいち釈然としないソニアはポーラに再確認する。


「私もレールガンってのは何かわかりませんが、タイプも属性も言った通りです」


ポーラにも科学の知識はあまりない。


「おい、リンシェンと言ったか?説明してくれないか?」


ステラがリンシェンに説明を求めるが、リンシェンは手を振って返事をする。


「あとにして欲しいんに゛ゃ゛!?」


「てめぇ、いい加減にしろよ?」


怒りに満ちたリーシャがリンシェンの頭を鷲掴みにし、今にも握り潰そうとしていた。


「訓練の次は礼儀を叩き込まねぇといけねえようだな」


「にょにょにょにょの~!」


油汗を垂らしながらリンシェンはすぐにステラの方を向き姿勢を直す。


「すみません」


と小声で謝るポーラをステラはクスクスと笑いながら制した。


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