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幻想冒険譚:科学世界の魔法使い  作者: 猫フクロウ
炎と氷の鎮魂歌
198/303

外伝:人心掌握

「!?!?!!!!!」


何かに悶え苦しむようにゴロゴロ、あたふたしている。


「リヤナは大丈夫なの?」


「……知らない」


リヤナの奇行にトウヤとスプニールは無視を決めた。


当のリヤナも少し小さく頼りなかった抱かれ心地が、

大きくしっかりした感じに変わることを想像してしまい、一人勝手に悶えていた。


「こんな短期間でこれだけ変化した人は、こっちでも珍しいんじゃないかな?」


クルルはつま先立ちで目線を合わせようとしてしまっているが届かない。


「そうですねぇ~一般的には兆候があるらしいのですが、

かなり忙しくて見逃した可能性が高そうですねぇ~」


ミイナは自分の身長を変化させ、今まで通りの目線に変えようとしている。


「いや、待ってミイナ。元の身長に戻してくれる?」


「あ、トウヤさんは小柄な方がお好みでしたかぁ~?」


ミイナの身体がシュルシュル縮んでいく。


「違う。他の人に変化あったのにミイナだけ変化なしは逆にわからなくなる」


「ん~?」


よくわからないと首を傾げている。


「例えばトウヤ君から見て、私とミイナが同じくらいだったのに、

ミイナだけ大きくなったら、違和感が大きくなって解りづらくなるでしょ?」


「そこは私も成長したということですねぇ~」


「そ、それは……」


「いや、いいや。もう好きにして」


なんとなくの感覚を説明するのは難しいので諦めた。


「でも困ったことになったわね」


「体格が変わったこと?ファイゼンにも言われたが、そこは場数を熟さないと解らないよね」


「それを戦場でという酔狂なことは出来ないから、

チームとしてクエストを受けるのはしばらく出来ないわね」


あくまでもトウヤに同行する形なので、クルル達が勝手にクエストを受けて、

全て熟すなんてのは話が変わってしまうので出来ない。


トウヤが戦場に立てない以上、暫く休業するのが妥当だろう。


「私は君を監視する人間、だから修行に協力するのは問題ないわ」


スプニールから意外な提案が出た。


遠回しに修行を手伝ってくれるということだ。


「じゃあ、お言葉に甘えさせていただきます」


トウヤ自身も七剣徒(セプトレア)の修行には興味があった。


そして


「わ、私も協力する!」


トウヤとスプニールのやり取りに妙に敏感なリヤナも名乗りを上げた。


「うん、リヤナにもお願いするよ」


トウヤは笑顔で答えた。


二人の七剣徒(セプトレア)に協力してもらえるのは有難いことだ。


そんな思いを知ってか知らずか、リヤナは大きくガッツポーズをして喜んでいる。


「ホント、君は人の心を掴むのが上手いね」


スプニールがポツリと呟いた。


「?」


どういうことか、トウヤには理解出来ない。


「しかも天然とか危険でしかない」


クルルもスプニールの言葉の意味を理解したようだ。


「どういうこと?」


「何気ない言葉や仕草で相手を喜ばせるから、トウヤ君に協力的な人が多いということよ」


「そう……かな?」


言われてみれば意外な人物が協力的になる場面が多い。


と言ってもそれがトウヤの力なのかは分からない。


「なるほど~トウヤさんは天然たらしなんですねぇ~」


ミイナの翻訳に吹き出したと同時によく理解出来た。


「こ、今後は気を付けます」


「いや、気を付けるのはいいけど、それはいい武器になるわよ」


「そうなの?」


「相手を協力的にしやすいということは、不要な戦闘を避けたりと役立つわ」


確かに、前のクエストで非協力的だったマリアの協力を得て、

難航していた王宮内部の正確な情報を簡単に得ることが出来た。


いわゆる人心掌握術は仕事の難易度を下げるのに有効な手段だろう。


そして今、七剣徒(セプトレア)の協力を得て、自分の能力強化の機会がある。


(人の心理を上手く利用した動きか)


あとでそういう本を見て、勉強してみることにした。




そろそろこの大きくなった体を見せていない最後の一人が目覚める頃だ。


心なしかこちらの方が落ち着かない。


「そういうのを見るのが初めてなんだっけ?」


「そ。一応、私達もいるけど理解してくれるかな?」


付き添いとしてポーラと、妙に仲良くなったマリアが一緒にいる。


気休めだが、お世話になってる人と仲の良い人がいれば大丈夫だろうとの計らいだ。


ふと、転移装置が動いた。


この転移装置はギルド内のメンバーが自室と行き来するためだけのもの。


他のメンバーが外に居るので、使われるとしたらリリスのみだ。


そして案の定リリスが現れた。


「おはーリリス」


マリアが声をかける。


少し寝ぼけているのか、しかめっ面でこちらを見て手で答える。


そしてこちらに近づくに合わせて目が大きく見開く。


「え……え!?」


ちゃんと全身が見えるよう立っているので、立っている高さは一緒。


だが今まで少し見上げる程度だったのが、大きく見上げるようになった。


「や、やあリリス」


ちょっと不安気なトウヤが挨拶する。


「……」


一瞬誰?という顔をした。


「……」


「……」


どんな反応になるかわからないので暫く沈黙が続く。


「ああ、トウヤか。大きくなったのね」


意外と反応が薄い。


「あれ?もっと驚いたりしないんだね」


マリアは意外な反応に不満気だ。


やはり騒ぐくらいの反応を欲しがっていたようだ。


「前にトウヤはまだ子供だから大きくなるかもしれないと聞いてたし、

ファイゼンみたいになるかなって思ってたから、予想通りって感じかな」


「滅茶苦茶大きくなったんだよ?」


「私の時間が遅いから、一晩で変わるのもおかしくないよね」


意外にもメンバーの中では一番冷静な反応だった。


思ったより騒ぎにならなかったことに安堵したトウヤとポーラだが、

マリアはこの反応に納得がいかないようだ。


「もっとこう、かっこいい!とかないかな?」


「……よく聞くけど、かっこいいってどんな感じなの?」


そもそも感覚が違うため、抽象的な表現はよくわからないようだ。


「こう、この人なら全て許す!って感じや、一緒に居たいって感じよ」


「それがかっこいい?」


「そう!内側から溢れんばかりの熱い想いよ!」


なんだか何かの宗教の勧誘のように見えてきた。


さすがに暴走しそうなので止めておく。


「マリア、そのへんで――」


「それならあるよ」


「「!?」」


思わぬ言葉にトウヤとポーラは驚き目を丸くする。


そしてその言葉に大きくガッツポーズでマリアが喜ぶ。


だがマリアの感覚とリリスの感覚は違った。


「私の恩人であるトウヤには感謝してもし足りない。

だからトウヤの願いなら全部従うし、ずっと一緒に居たいから」


あまりにも真っ直ぐ答えるので逆に照れてしまうが、やはりマリアの期待する答えではない。


「もちろん、ポーラにも感謝している。あれ?と言うことはポーラもかっこいい?」


「違う……違う、そうじゃない!」


マリアの叫びだけが木霊(こだま)した。


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