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幻想冒険譚:科学世界の魔法使い  作者: 猫フクロウ
炎と氷の鎮魂歌
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外伝:成長期

最近の激務に体が悲鳴を上げた。


「う……ん……」


久々のまとまった休みだ。


リリスが寝たと同時に自分も倒れてしまった。


スプニールとリヤナが一緒とはいえ、連日の高ランククエストは疲れた。


それにリーダーとしての雑務、ポーラと一緒に局との調整。


さらにセレスのギルド立ち上げの協力。


目まぐるしい毎日を過ごし、限界がいきなり訪れたのだ。


十四歳とはいえ、体はまだ子供。そして精神面も……


「なんか、この国って大人になるのが早いよな」


この国で十四歳は大人。ある程度自由な権利があるが扱いきれない。


子供の頃からある程度、自覚させられて育つんだろうが、生憎トウヤはそのように育っていない。


いきなり降ってきた責任や気苦労に潰されてしまったようだ。


ポーラの「いい機会だからしっかりと休んどきなさい」と言う言葉に甘えて長期休暇をとったが、

初めの一週間は起きるのも億劫な程で、ほぼ布団の上で過ごしていた。


その後は起き上がれたが、自堕落な生活と言わんばかりのぐうたらした生活をしている。


一日一回、スプニールが食料(インスタント系ばかりだが)を差し入れしてくれたりしたが、

そろそろ外へ出なければ、引きこもり生活になりそうな予感がする。


そんな警告が頭の中を駆け巡る。


そう思い外へ出る準備をし始める。


ゴツッ!


「いっ――!!!?」


不意に頭をぶつけてしまった。


あまり大きい部屋を好まず、手狭にしていたら、部屋の梁に当たってしまった。


「今まで当たらなかったのになぁ。潜ったつもりで上げたらぶつかったのか」


そう思い部屋を見渡すと違和感を覚えた。


「あれ?なんか……部屋の感じが違う?」


クエストで外泊する機会が多く、毎日この部屋にいるわけではないが、

自分の部屋に違和感を覚えてしまった。


一瞬、別人の部屋かと思ったが、私物がしっかりあるので間違いないだろう。


「まあ、いいか」


よくわからないがハッキリと何が違うとも言いづらい。


トウヤはさっさと切り替えて、外出の準備をした。




準備中も違和感が常にあり、なんだかそわそわしてしまう。


そういえば数日前からだ。


シャワーを浴びてボーっとしていた頭もスッキリし始め、いろいろと思い出す。


シャワーやボディソープ、蛇口、タオルとあちらこちらに違和感がある。


しかもこれらは数日前からだ。


「部屋は……ちょっと思い出せないから今日にしよう」


トウヤは現在の状態を整理する。


「部屋の違和感とシャワー浴びた時の違和感は似ている気がする。

となると部屋の違和感は今日気づいただけで数日前からあったのかもな」


部屋はほぼ寝るだけだったので気づくのが遅れた可能性が高い。


「ってかほとんど物が無いからなぁ」


キッチンにテーブル、そしてベッドというシンプルな部屋。


基本ここは寝に帰るだけなのでほとんど物は置いていない。


むしろトウヤは分けている。


ふと気になり、娯楽室へ向かった。


トウヤは部屋を二つ持っている。


先ほどの寝室とキッチンしかない、メインの居住部屋。


そして遊びの趣味を集めた娯楽部屋だ。


基本、魔導士の給料は歩合制。つまりクエストの成功数がそのまま給料になる。


A~AA(ダブルエー)が一般人の給料と同等だが、トウヤはS前後のランクを多く熟すので、

かなりいい暮らしをさせてもらっている。


さらに討伐や採取のクエストで得られた掘り出し物は魔導士の物になる。


トウヤもそれなりに手に入れているので、かなりいい収入だ。


なのでこうやって複数の部屋を持つことは簡単である。


ただ、仕事が多く使う頻度が少ないのが難点だ。


トウヤは娯楽部屋を見てみたが、ここではあまり違和感を感じなかった。


「う~ん、最近使う頻度が減ってるからわからないかな?」


居住部屋より来る機会の少ない部屋だと、何かが変わっていてもわからなかった。




「おっつ~」


ギルドの部屋に入ったが誰もいないようだ。


「みんな出てるのか」


クエストでと言うよりもセレス関連で忙しく空けているんだと思い、

暫く部屋で待つことにした。


そして部屋を見渡すとここでも違和感があった。


たぶん自室の時と一緒だろう。


「何の違和感だ?ムズムズするな」


拭えない違和感にイライラしつつも大人しく待っている。


するとみんなが帰ってきたようで、話し声が聞こえる。


「おかえり、みんな」


トウヤはいつも通り声をかけた。


だがその反応は期待した反応と大きく離れていた。


「え!?だれ!?」


最初に入ってきたポーラの声に、何事かとファイゼンとリーシャも慌てて入ってきた。


「だ、え?は!?」


リーシャも警戒したが、混乱していた。


そして唯一理解したファイゼンがいつものように声をかける。


「おお、トウヤ、デカくなったな」


「デカ……え!?」


トウヤも驚くしかなかったと同時に前との違いを感じる。


高身長のファイゼンと目線が近い。


そして見上げていたポーラは見下ろす形に、さらに小さかったリーシャはさらに小さく感じる。


こう感じる事で違和感の正体を理解した。


トウヤは一気に身長が伸びて、目線が高くなったのだ。


「え?お前気付かなかったの?」


「ずっと寝てゴロゴロしてたから……」


「じ、自堕落な生活が逆にストレス解消に役立ったんだな……」


すぐに受け入れられたファイゼンは一番冷静に話を進められている。


「地球人の成長は早いって聞いてたけど、ここまで早いとは思わなかったわ」


「妙にデカいトウヤが、いきなり現れたら訳わかんなくなるな」


「す、すまない」


別にトウヤは悪くないんだが、つい謝罪の言葉が出てしまった。


「ま、男が一気に身長伸びるのは普通だよ」


「一週間で伸び……そういえばあんたも一気に伸びたわね」


ファイゼンも一気に身長が伸びたようだ。


忘れていたがトウヤは約二倍の早さで成長する。


リーシャとポーラの間くらいの身長からファイゼンに近い身長。


約20数cmの成長は本人も驚くし、周りも驚くばかりだろう。


そしてそれだけ目線が変われば違和感も感じる。


さっきまでの違和感の正体はこれだとスッキリした。


「これはまた、しっかりと修行しないとな」


ファイゼンの言葉を疑問に思う。


「なんで?」


「身長が伸びたなら手足が伸びたと言う事だろ?

今まで行けたところが行けなくなるし、剣や拳の焦点もズレる。

接近戦も熟すお前には致命的だろ?」


「た、確かに……」


剣の間合いも、拳も蹴りも今までとは場所が変わる。


「体格、体重が変われば動き方も変わる。見てやろうか?」


リーシャが申し出てくれたが……


「い、いや、遠慮しとく」


鬼教官で有名なリーシャの申し出はしっかり断らせてもらった。


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