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幻想冒険譚:科学世界の魔法使い  作者: 猫フクロウ
炎と氷の鎮魂歌
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時間切れ

「なんか大変な目に合わせてしまったわね」


マリアは申し訳なさそうに言う。


「マリアが気にすることはないよ。俺達はこういう命がけの仕事をしているんだし、

影でこんな脅威が迫っていたと知れたのは大きいと思うよ?」


「ええ。私からもお礼を言わせて。協力してくれてありがとう」


ポーラが頭を下げお礼を言うのに合わせて、トウヤも頭を下げる。


ポーラとトウヤは二人で事後処理としてマリアの元を訪ねていた。


「やめて、こっちはお願いしたんだから、頭を下げられる理由が無いわ」


そう言うが、マリアの方もこれから大変になる。


王が死んでいることが解り、この国は混乱すると思われたが、

皆そんな力は無く、今を生きるので精一杯であるため、無関心だった。


これは王の日頃の行いだろうか?


ただ、指導者が完全に消滅したため、今まで以上の無法地帯と変わる。


一応、局の管理下に加わるが、今まで局を当てにしなかった人々が、

そう簡単に従うわけがない。


ただ強い者だけが生き延びるだけの世界がしばらく続くことになる。


そんな世界で子供達を守りながら暮らすマリアは、かなり苦労するだろう。


そして……


「ヨシエフさんにかけられた魔法は今、大急ぎで解析が進められているわ。

情報を取得したリンシェン、局の解析部隊、アルカナフォートのソニアさんの部下達、

何の気まぐれか、藤躑躅(ふじつつじ)の君まで動いてくれているわ」


ポーラが現状を教えてくれる。


やはりソニアさんの死は大きかったが、それもあり多くの人が協力に名乗りを上げた。


やはり彼女は人望があったようで、それを理由にする人が多い。


「ありがとう、もう少しだけ頑張ればいけそうね」


苦しい現状だが、光が見えたようで表情は明るい。


「ねえ、また訪ねていいかな?」


不意にトウヤが尋ねる。


「え?何も無いわよ?」


「子供達と会いたいし、マリア達と別の国に遊びに行くこともしたいしさ」


子供達と遊ぶ。昔トウヤがやっていたあの頃を懐かしんでいるのだろうか?


「一応、局の管理下に入るから連絡は取りやすいはずよ。

行き来も、しっかり申請すれば大丈夫なはずよ」


申請が必要なのは面倒だが、交流を続けることは問題ないようだ。


「ま、ほっとかれた局と関わるのは後ろ向きだけど、君たち個人なら大歓迎だよ。

お世話になったし、仲良くしていこうね」


お互い笑顔で握手して、これからの交流を誓い合ったとき、

大きな爆発音が響いた。


「!?」


その爆発音が発せられた場所を確認した。


「……うそ……」


そこはマリア達が暮らしていた家だ。


「うおおおおお!」


唸るような叫び声が聞こえる。


「まさか……」


信じられない。その気持ちは三人とも一緒だった。


また大きな爆発が起こると、家の陰から黒く大きなものが現れた。


「子供達が!子供達が中に!!」


マリアが家の方に駆け出すがトウヤは止める。


「待て!あいつは――!?」


一瞬で隣に現れたそいつは、人のような影に見えた。


(こいつはまさか――!?)


繰り出した拳が地面に大きな穴を作る。


間一髪で避けたトウヤは、抱いていたマリアを降ろしデバイスを構える。


(間に合わなかったのか?)


トウヤは相手の正体を察していた。


「みんな!みんなぁ!!」


子供達を心配したマリアは家に駆けよる。


それを見た黒い影はマリアに狙いを定め襲い掛かる。


だがそこにトウヤが割り込み、デバイスで拳を受け止め阻む。


力の具合や、目線がマリアに向いている。


どうやら目についた動く物を襲おうとしているようだ。


「マリア!中へ入れ!」


トウヤは叫んだがマリアには声が届かない。


それよりも子供達の無事を確かめることしか考えられなくなっている。


だがこの場面では、それでも好都合。


家の崩壊に巻き込まれる可能性があるが、

この黒い影の直接的な狙いにならない場所にいる方が安全だ。


一心不乱に家に駆けていくと、マリアは家の中へ入り見えなくなった。


その瞬間、ポーラが黒い影の背後から飛び掛かり、デバイスで真っ二つにしようと動いた。


「待てポーラ!」


その声に一瞬体が止まってしまう。


そして声で後ろを向いた影に殴られ吹っ飛ばされてしまった。


「ポーラ!」


黒い影を躱し駆け抜けると追ってきた。


やはり動く物に反応しているようだ。


「ちょっと、いい感じだったのに待てってどういうこと?」


ポーラの念話が入る。


「こいつはたぶんヨシエフだ」


「間に合わなかったの!?」


「解らない!でも討伐じゃなくて捕縛しないと!」


下手に攻撃できないことはよくわかった。


「――!!」


家の方から叫び声が聞こえる。


おそらくマリアの声で、中は悲惨な状態だろう。


「中が気になるけど、まずはヨシエフだ!」


「応援を呼んだ!」


「待てない!風打ち・第十三座・(ひずみ)!」


トウヤは長い刃状のもの複数個を出すと、ヨシエフを滅多刺しにした。


「ちょ!?何やって――?」


刺されたはずのヨシエフが動こうとしているのが見えた。


「効いてない!?」


「いや、効いてるよ」


トウヤの言葉を聞き、冷静に確認すると、

刺されたはずなのに平然と動こうとしているが、動けないようだ。


「“(ひずみ)”は刺した空間を固定するだけで人体には無害だ」


「な、なら応援を呼ぶ必要が無かったかもしれないわね」


「もし(ひずみ)が壊された時として呼んでもいいだろう。

それよりも中の様子を確認したいんだが」


「私が見ているから行ってきな。でも、覚悟していくんだよ?」


「ああ」


あまり広い家でない空間で爆発が起きた。


その家の中に子供達がいたのであれば、その中の悲惨な状況を想像するのは簡単だろう。


それに崩壊の恐れがあるので、中に居続けることは犠牲者を増やすことになる。


最悪、マリアだけでも連れ出さなければならない。


トウヤは最悪な状態を覚悟して家に入った。


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