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幻想冒険譚:科学世界の魔法使い  作者: 猫フクロウ
炎と氷の鎮魂歌
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事後処理

スヤスヤと居眠りをしていたと思ったら、急に立ち上がり、スプニールは槍を構えた。


「誰か来た。かなり魔力が強いわよ」


リヤナが続けて構え警告すると、それに従いクルルも構える。


気配と言うのだろうか?


トウヤには何も感じない。


「あれ?この感じ……」


ミイナが心当たりがあるようなことを言うと、その正体は顔を見せた。


「あれ?なーんだ、終わってんじゃない」


「やはりここに集まっていたか」


見知らぬ顔と、アルカナフォートのマスター、ステラが現れた。


「マスター、お久しぶりです」


ミイナが主人を見つけた子犬のように駆け寄る。


ミイナがマスターと呼ぶ人物は、藤躑躅(ふじつつじ)の君、クラリスのみである。


「あら、下級のマスター様と穢れた六花様がこんなところに何か御用かしら?」


さっそくリヤナが毒づく。


(そんなつっかからなくても……)


トウヤは止めようと思ったが、暇なので見物することにした。


スプニールはまた居眠りに戻り、クルルはハラハラしながらも知らぬふりをした。


「天使と言う面白そうな兵器と、あなたの無様に負ける姿を見に来たのよ」


「残念ね。あんなのに負けるとか心外だわ」


「あらそう?あなたは能力に自信を持ったおバカだから、

身動き出来ないよ~助けてよ~って泣いてると思ったのだけど?」


「……」


それに似た光景をさっき見た気がする。


「何その反応?……まさか……ぷぷっ、ホントにやっちゃったの!?あはは!」


クラリスが大笑いし、小馬鹿にされたリヤナは拳を握りしめ屈辱に耐えている。


成り上がりとはいえ仮にも麗王(れいおう)の一花。


いずれ同格といえど、現在は七剣徒(セプトレア)であるリヤナは悪態をつけど、

攻撃的な行動を実行することは許されないので耐えるしかない。


「どういうこと?藤躑躅(ふじつつじ)の君は君影(きみかげ)の君の弱点を知ってること?」


トウヤは疑問に思ったことをクルルに問いかける。


「じゃないかな?」


クルルもしっかり理解しているわけじゃないが、そういうことだろう。


「しかしあれに弱点が――」

「もしかして足の裏ですか?」


トウヤの問いかけに一番驚いたのはリヤナだった。


「どういう……こと?」


クルルも驚きを隠せない。


「魔法を受け付けないのに念話は通じるし、砲撃に包まれても平気なのに動けない。

ってことは何処かに穴が開いているのかな?って思ったんだよ。

そこに物に対しても効果があるのに足音が鳴ったり、地面を歩けているってことは、

足の裏だけ穴が開いているってことかな?って推測したんだ」


「な、なるほど……」


クルルは納得してしまった。


実際に足の裏まで覆ってしまうと、地面に埋もれたりしてして危険な目に合うのは、

リヤナを始め、ごく一部の人間しか知らない事実だ。


それをあの戦闘だけで見つけ出したことには驚きだ。


「あの坊やの方がしっかりしてるんじゃないかしら?」


リヤナはニヤニヤとした顔で見てくるクラリスが見えないように他所を向いた。




ステラは目的である天使の人体実験の資料を、

それを取り出そうとしているリンシェンの元へ向かった。


「おい、あとどれくらいかかりそうだ?」


「データが大きすぎて写すだけでも時間がかかるにゃ」


「そうか。確実にやってくれ」


「うにゃ」


リンシェンの言葉使いも、立場を気にせず慣れてしまえば何も問題はない。


他のメンバーが知ったら騒ぐだろうが、ステラはこれでも良いと思っている。


「お前も、私が監視するから休んだらどうだ?」


近くで立ち、警戒を続けているリリスにも声をかける。


「……いえ、トウヤに頼まれたので、最後までやります」


「ふっ、そうか。無理はしないようにな」


「……はい」


こちらはまるで忠犬だ。


彼のために力を尽くし、彼のために動いている。


能力で壁を作っているが、勝手に開けてステラを通してくれたあたり、

敵と認識していないが、興味が無いのだろう。


目も合わせてくれないので、交友関係を築くのは難しそうだ。


(しかし不思議なものだな)


離れた場所で話をしているトウヤ達を見る。


厄介な連中も彼を通せば丸くなる。


変わり者のリンシェンも、扱いが難しそうなミイナも、

そして出自が特殊なリリス、上級貴族の4人も、

彼の前ではごく普通の交友関係を築いている。


(まるで――!?)


今一瞬ある人のように思えたことに驚いた。


魔導士や一般人はもちろん、亜人も犯罪者も奴隷も皆仲間に取り込み、

局の脅威とも言える組織を作り出したあの人に。


(そういえばクラリスがあのお方に似ていると言っていたな)


あり得ないと言われたので気にしなかったが……


まあ、一度しかお会いしたことが無いので似てるかどうかはわからない。


(まさか、な)


だがステラはソニアの調べものを早急に進める事にした。







幕切れは呆気なく訪れた。


施設は既に破棄され、もぬけの殻。


やはり脱出の時間稼ぎとして不要になった兵器と一部の兵器の実験として、

局とぶつかったものと思われる。


主犯と思われるゴラースミは逃走。局の犠牲者もかなり出たが収穫はしっかりあった。


リンシェンが復元したデータから天使に使われた魔法の一部の判明。


アルフォートの遺体の回収。


天使の存在を明確にし、その脅威をしっかり確認出来たこと。


またそれ以上の存在も残されていることがわかった。


局では大騒ぎになったが、知らないよりは知っていた方がまだ対処出来る。


これからの課題として議論が詰められている。


そしてもう一つ問題が残ってしまった。


犠牲者の一人、ソニアが見つからなかった。


あの空間は飛翔体を飛ばしたり、物資の運搬を地上から行うための空間だったようで、

かなり深いところで無数の管のような通路が伸びていた。


そして底は何処かの洞窟に繋がっており水量がある川が地中で流れていた。


そのため、ソニアの体は何処かに流れてしまい回収が絶望的だった。


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