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幻想冒険譚:科学世界の魔法使い  作者: 猫フクロウ
炎と氷の鎮魂歌
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リヤナを救い出して

「マリア、入れてくれ」


トウヤはそう言うとマリアが作った異空間に入った。


「出口は砲撃の上、天使と君影(きみかげ)の君の中間点くらいに出来る?」


「もちろん、任せて」


スプニールの指示は雑な指示だが手が無いわけではない。


むしろ各自の能力を判断し最低限の指示で済ませている。


(なんで能力を買われてるんだよ)


スプニールがトウヤを認めているのは悪い気はしない。


だがどこをどう見てそう思ったのかは謎だ。


しかしやるからには手加減不要だ。


相手もかなり危険だし、全力で戦う必要があるだろう。


「カウント5から始め、0でいきます。いいですね?」


「いつでもいいわ」


スプニールもマリアも準備は出来ているようだ。


「いきます、5、4、3、2、1、0!」


トウヤは異空間から飛び出すとデバイスを構えた。


重力の剣(グラビティコア)!」


デバイスを投げる。


高重力の拘束(ヘビーバインド)!!」


剣の周りに高重力の壁が出来る。


すると砲撃は重力の壁に当たり、地面へと向きを変える。


魔法も魔力という物質を持つので重力の影響を受け、下に進むのだ。


だが手放したデバイスはそう長く効果を発揮しないので、急いで救出する必要がある。


そうして砲撃を途切れさせるとリヤナの姿が現れたので救出に向かう。


それと同時にデバイスを元に戻して回収すると、また砲撃が迫ってくる。


「解いて!」


予めスプニールから念話で話していたようで、リヤナはトウヤの指示に素直に従った。


トウヤはリヤナを抱えると方向を変え、砲撃から離れた。


「ふう、ギリギリだったな」


思ったより砲撃が早かったが、何とか救出できた。


「あ、ありがとう」


リヤナは驚いたような表情だったが、素直に感謝の言葉を述べた。


「いえ、お気になさらず」


社交辞令的な物言いになってしまったが緊急事態、許してもらえるだろう。


トウヤはスプニールの方を確認した。


リヤナを横抱き状態のままであることを忘れて。




合図と共にスプニールのは駆け出した。


トウヤが創った目の情報を共有する魔法は非常に便利で、

クルルとミイナも弱点看破の毒(バイタルサイト)で見つけた弱点を共有出来ている。


天使の弱点、それは基本ベースが人であること。


つまり弱点は人の急所と同じだった。


「はあ!」


スプニールは槍のデバイスで急所を狙う。


ギン!


金属がぶつかるような音がした。


(このデバイス結構いい物なんだけどなぁ)


強化系を想定して、それなりに強力なデバイスを持っている。


だが天使はそれを想定した頑丈さを持っているようだ。


(私の欠点を知っているのかしら?)


スプニールの欠点は強化系でないこと。


そのため、たとえ弱点を見抜けたとしても、その弱点を打ち抜く力が無い。


それを補うようにデバイスを使っている。


そして槍術と相性が良かったようで、それを極めている。


(ならば……)


弱点ではないが関節部分に狙いを変える。


人がベースなので動きも人のように動く。


つまり足を切り落とせば歩けなくなるし、腕を切り落とせば攻撃が限られる。


砲撃を撃つ時は構えていたところを見ると、天使の動きに制限が与えられるだろう。


ザッ!!


関節に槍が当たると、砂のような物に当たった感じがした。


細かい粒子が槍の刃を受け止め、切りにくいようになっているようだ。


予想外の状態に攻撃を止め、一度引くが、天使が反撃してくる。


(まだ強化出来るけど……ここで使うべきじゃない気がする)


スプニールは天使の攻撃を避けながらあれこれ考える。


(人形は……問題なさそうね)


ミイナは得意の武器の生成で強力なものを作り出し、弱点を打ち抜いている。


たしか強化系でないはずだが、生成で付与出来ているのだろう。


あれを創った強欲ババアらしい仕組みだ。


星歌(ほしうた)の君も善戦しているわね)


囲まれないようにしなければならないが、クルルも攻撃型の幻獣でなんとか応戦している。


(そしてあの子は……)


トウヤは無事、リヤナの救出に成功したようだ。


下人に助けられるのは屈辱だろうが、そこは我慢してほしい。


むしろ一人で助け出すことが出来たことを称えるべきだろう。


(あの子、思ってたよりも使える)


一瞬、臣下に欲しいと思ってしまったが、あの懸念点から即座に却下した。




トウヤは状況を確認する。


リリスは全く問題なさそうだ。


砲撃は完全に防げているし、近づいた天使も石となり崩れていた。


リンシェンも順調に解読が進み終わりが見えてきたようだ。


となると天使の討伐に加わる方が良いだろう。


「ちょ、ちょっと、そろそろ下ろしてくださいな」


状況確認に集中し過ぎて、抱きかかえていたリヤナの存在を忘れていた。


降ろすとフワフワと宙に浮かび上がった。


「あ、ありがとうございます」


リヤナは目を逸らしながら礼を言う。


顔が赤いところを見ると、結構屈辱的だったのだろう。


「いえ、お気になさらず」


嫌なら言わなくてもいいのに。トウヤはそんなの気にしないタイプだ。


君影(きみかげ)の君!」


「ふぇ!?」


気を抜いていたのか、すっとんきょうな返事だが、そこはあえて無視する。


「屈辱的なのは理解していますが、あなたが必要です!

どうか俺達と協力して戦っていただけませんか?」


両手を握りしめ、祈るように頼み込む。


驚いたような顔をしていたが大丈夫だろうか?


だがリヤナと協力して戦えればこれほど頼もしいことはない。


なので屈辱さを感じさせないよう必死に頼み込む。


「わ、わかったわ……」


「え!?」


トウヤは耳を疑った。


「きょ、協力するから……手を、放してちょうだい」


リヤナが協力を快諾してくれたようだ。


「ありがとうございます!」


トウヤは深々と頭を下げると、戦っているクルル達の元へ飛んだ。


「……なんか……逆らえない……」


リヤナは下人と協力なんて馬鹿らしいと思いつつも、

トウヤの頼みに応えたいと思ってしまったことを不思議に思う。


ふと後ろの方から視線を感じた。


振り向くと、後方を守っている彼女と目が合った気がした。


(な、何あの子?)


何処か遠くを見て心を無心にしてるような目が、

リヤナの気持ちを見透かしているような気がして気まずく感じた。


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