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幻想冒険譚:科学世界の魔法使い  作者: 猫フクロウ
炎と氷の鎮魂歌
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不侵の毒

「リンシェンはそのまま作業を続行!リリスはリンシェンを守れ!」


(にゃに)かの衝撃で壊れるにょは困るにゃ!広めに守ってくれ~」


セキュリティは繊細な物。何かの拍子に手元が狂ったり、

衝撃で壊れたりしたら元も子もない。


リリスは壁を作るように結界を広げた。


「クルル!こっちに天使が現れた!君影(きみかげ)の君を呼んでくれ!」


「わかったわ!」


念話で連絡するとすぐに返事が来た。


が、指示と連絡に気をとられ、天使の接近に気づくのが遅れた。


「伏せて!」


思いがけない声に驚くが、指示通り伏せると、

ギンと金属がぶつかるような音がすると同時に目の前に天使が倒れこむ。


そしてザン!と天使に何かが刺さるような音と共に、トウヤの上を何かが通った。


どうやらスプニールが槍で天使を刺し、その槍を起点に足で周囲を薙ぎ払ったようだ。


「指示と連絡は合格……でも注意は不合格……」


「す、すみません。ありがとうございます」


こんな状況で採点とはさすがである。


「こいつらが天使……」


スプニールは今回の相手を品定めする。


倒れた天使もゆっくりと立ち上がる。


刺されたはずの傷は無い。


どうやらかなり高い再生力があるようだ。


「こいつら、何体いるんだ?」


扉からさらに2体、計6体になった。


1体でかなり手間取りそうなのにそれが6体とは、嫌な状況である。


「こいつらが今回の討伐対象かしら?」


転移で現れたリヤナが確認する。


クルル、ミイナも一緒のようだ。


「はい」


トウヤは端的に答える。


「ふぅ~ん、そんなに強そうに見えないけどぉ?」


完全に相手を見下しながら前に進む。


「ちょ、君影(きみかげ)の――」


トウヤは思わずリヤナを止めようとしたが、クルルに止められる。


「あの人は大丈夫よ」


「……そうね、君にも話さないといけないわね」


スプニールも手出し無用と言った感じだ。


一人、前に進むリヤナに複数の天使が襲い掛かる。


だが天使の姿は何かに阻まれるように潰れていった。


「彼女の異能は不侵の毒(コルドン)

域外(いきがい)の干渉を拒む壁を自身の体表に作り出す能力よ」


域外(いきがい)、つまり外から何をしようとも触れることが出来ない壁を、

体表、つまり体全体の肌表面を包み込むように壁を作り出す能力だ。


それは力の大きさも対象のようで、どんなに強力な攻撃も彼女には届かない。


むしろ自分の力で潰れてしまう。


そして……


「ぐぎゃああああ!!」


リヤナは天使の中心から、まるでかき分けるように腕を動かすと、

天使は真っ二つに引き裂かれ、奇声のような悲鳴を上げ倒れた。


血飛沫が飛び散るが不侵の毒(コルドン)で守られているので、

リヤナの白い肌も白い服も汚れることはなかった。


「……四体を瞬殺、これで七剣徒(セプトレア)第七位って凄過ぎだろ!」


思わず言ってしまったトウヤの賞賛の声に、リヤナは満足気に答える。


「これが下人と七剣徒(セプトレア)の違いよ」


リヤナが目を逸らした隙に天使は砲撃を撃ったが、リヤナの前には無力だった。


物理的にも魔法的にも受け付けないその異能は本当に絶対防御という言葉が似合う。




扉からまたゾロゾロと天使が現れる。


「また……キリが無いわね」


倒しても倒しても現れる天使にリヤナは大きく溜息をついた。


だが今度の天使は突っ込むことはせず、その場で構えた。


違和感を覚えたがリヤナは構わず前に進む。


そして同じ違和感を感じたトウヤ達はその場で構えた。


一瞬の膠着(こうちゃく)状態に干渉を受け付けないリヤナがだけが動く足音が響く。


(足音はするんだな)


干渉を受けないので足が地面に触れた音も消えるものと思っていたが、

そこまで都合良くないようだ。


そこまで出来るなら暗殺とかの方が向いてる。


ふと過った考えを追い出し、目の前の敵に集中する。


構えた天使達は一斉に砲撃を放った。


「でかっ――!!」


思わず避けてしまったが、危ないことをしてしまったことに気づく。


「リリス!!」


後ろにはリリス達がいたことを忘れていた。


だが、リリスの前で魔法の砲撃は完全に無力化されていた。


性質は違えど、こちらも干渉を無効化することは変わらなかった。


「あの子も……似た力なのね」


「はい、あっちは魔法限定ですけどね」


リリスの魔法を初めて見るスプニールは感心した。


「となると、問題は……君影(きみかげ)の君ね」


「え!?」


思わぬ名前に驚いた。


確かにデカい砲撃が放たれ続けて、その中にいる状態だが、

おそらく彼女は無傷だろう。


「失礼ながら桃姫(ももひめ)の君、それは要らぬ心配では?」


クルルも心配ないと思っているようで、スプニールに進言する。


不侵の毒(コルドン)で守られている君影(きみかげ)の君は怪我一つ負うことはない。

それは私達の間でも有名な話ですが、なぜ問題があるのでしょうか?」


クルルの意見にはトウヤも同じだ。


どんな干渉も受け付けないリヤナはある意味無敵。


そこにどんな問題があるのだろうか?


「彼女……魔力が少ないのよ」


「え?でも魔力関係ないんじゃ……」


トウヤの考えは異能というのを知らないからの疑問だ。


「異能も魔法由来の力。使い方が違うだけで大元は一緒ってことよ」


そのあたりはクルルも詳しい。


「それに魔力差がありすぎると不侵の毒(コルドン)でも防げない。

だから彼女は第七位に留まっているのよ」


納得した。あれだけ化け物じみた強さなのに七位なのは、

他がもっと恐ろしい化け物かと思っていたが、

それなりの弱点は存在していたようだ。


それはクルルも知らなかったようで意外そうな顔をしていた。


「となると、やることは……」


「撃ち続けているやつを止める事ね」


トウヤとクルルはやるべきことを理解した。


「そう簡単にはやらせてくれない……」


スプニールは天使達に鋭い目線を向けた。


まだゾロゾロと現れる天使は砲撃を撃ち続ける組と、

それを守る組に分かれるという組織的な動きを見せている。


リヤナが動けない今、攻撃の要はスプニールになる。


「私が弱点を教える。星歌(ほしうた)の君と人形は天使の陽動に。

君は君影(きみかげ)の君の方をお願い」


「あの人俺の言うこと聞くかなぁ?」


「無理矢理でも連れて行けばいい……」


「触れないのに無茶言わないでください」


「……不侵の毒(コルドン)を解くよう私が念話で言う……合図ちょうだい」


「え?……まあそれなら……」


トウヤはスプニールの答えより気になることが出来た。


(魔法を受け付けないのに念話は通じるんだ)


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