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幻想冒険譚:科学世界の魔法使い  作者: 猫フクロウ
炎と氷の鎮魂歌
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鬼神アルフォート

攻めたること鬼神のごとし。


一つの攻め手も二の手三の手へ繋がる攻撃。


離れても銃による精密な射撃は予断を許さない。


戦い方を教わったことがあるが、聞いても動けない。


やり方が解っていても体がついていかない。


そんな戦い方を平然と熟しているのが“鬼神”アルフォートと言われた父の戦い方だ。




初撃の強く重い拳はタイミングを合わせて逸らし、続くもう片方の拳は体を回し躱す。


三撃目は初撃と同じだったので下手に姿勢を構え躱すと同時に反撃しようとした。


しかし避けられることを想定し、次の攻撃の布石のためだったようで肩を掴まれ、

そのまま顔面に向けて膝蹴りに変わった。


何とか顔面を躱そうとするが、肩を掴まれているので避けきれない。


すると石がアルフォートの体を浮かせるように持ち上げ姿勢を崩す。


姿勢が崩れた蹴りは外れたが肩が掴まれたままで倒れこみに巻き込まれそうになる。


それを防ぐためにデバイスで腕を切断し、巻き込みから逃れた。


死体であるため、何事も無かったように立ち上がり、奇妙な魔法で腕が再生される。


人間(ひと)の体を玩具にして……」


父親の死体を玩具のように扱い、蔑ろにすることに怒りが込み上げてくる。


「くっくっくっ、父親の体を壊して眉一つ動かさないとか、親不孝な娘ですねぇ」


「人道に反したことをやってるやつがよく親不孝とか言えるわね」


小馬鹿にした態度にさらに怒りが込み上げる。


人としては最低な人間、だがそれに反して能力は非常に優秀だった。


よく訓練に付き合ってもらっていたのでよくわかる。


力を失う前のアルフォートが目の前にいる。


死体を操り、生前の本来ある素質を十二分に発揮させている力は、

他の誰にも真似は出来ない、唯一無二の能力だろう。


それを理解しているのか、アローニャも戦い方は慎重だ。


アルフォートが力を失わなければ、純粋な戦闘力はアローニャより上だ。


2対1と数で上回っているといえど、アルフォートは元々一人で、

複数人を相手にする戦闘スタイルであるため、数のアドバンテージは無いに等しい。


そこに魔法による回復も加わっている。


どうすれば止められる?どうすれば倒せる?


どうすれば……


「セレス!!」


どうすればいいか考えているうちに、注意がそれてしまっていた。


そのため、アルフォートの接近に気づくのが遅れてしまった。


「うぐっ!!」


初撃はかろうじて防げた。


しかし追撃を避ける余裕は無く、お腹に一撃もらってしまった。


大きく吹っ飛ぶセレスを追うようにアルフォートが飛び出す。


しかしアローニャの石が進路を妨害し止めた。


「セレス!目の前にいるのはアルの皮を被った兵器よ!心を乱さないで!!」


アローニャは割り切っている。しかし……


「さすがはエクセル博士、その図太い神経には感服しますねぇ。

しかし娘さんはそこまで太くないようです、くっくっくっ」


見破られている。だからこそセレスばかり狙われていた。


セレスの想いが邪魔をして戦闘の判断を鈍らせている。


「さあ!その小娘をぶち殺せぇ!!」


また雷がアルフォートに落ちる。


まるでアルフォートの雄たけびのような叫びが響くと、

回復しきる前にセレスへと駆け出した。


「速い!」


さっきの雷でまた強化されたようだ。


即座にアローニャが石を操作して止めようとするが間に合わない。


セレスも構え、受けようとする。しかし……


「え!?消え――」


消えたと思った瞬間、頭に強い衝撃を受けた。


消えたと思ったのはアルフォートが直前で素早く動きを変えたからだ。


セレスの正面から右側へ移動したアルフォートは勢いそのままで蹴り飛ばした。


「セレス!!」


アローニャの目がセレスに向いている隙にアルフォートは距離を詰めた。


「くっ!」


アローニャは急いで石を操作したが十分に守れなくて吹っ飛ばされた。


「くっくっくっくっ、いいざまですねぇ、エクセル博士」


ゴラースミの声がまた響く。


「鬼神アルフォートの話は私も聞いてますよ。

私も昔、彼に守られる側になってましたからねぇ」


唐突に昔話を始めている。


「だが彼も噂程、世の中のために働いていたわけではありません。

部下の命だ何だかんだ言って、我が身を守ってきた臆病者です」


父を侮辱する発言に体がピクリと動く。


「戦う事でしか役に立てないやつらが命大事に撤退します?ふざけるな!!

お前らはそこで命がけで戦い、我々を遺跡の奥に送り届けるのが仕事だろうが!

我々を送り届け、過去の偉人が残した叡智を我々に渡すことで世のため人のために

初めて役立つ連中が、おめおめと逃げてんじゃねぇ!

そんな雑魚が我々の邪魔をするな!!」


ゴラースミの絶叫が響く。


「あなたにその叡智を渡したところで役立つかわからない。

そんなもののために命を賭けるなんて不幸でしかないわね」


「ええ、私の崇高な考えを理解出来ない人間の世迷言ですね」


アローニャの話を聞く気が無いようだ。


「だからこいつには感情を無くし戦うだけの人形の方がいい。

現にあなた方が手も足も出ないようですからねぇ。

戦うしか出来ないやつは感情も死も捨ててやれば非常に有能な駒になりますよ」


ただ目の前の相手を倒す。そのことに何の感情も抱かない。


体が壊れようが構わないし、すぐに再生する。


そしてその人形が持つポテンシャルは全て引き出せる。


そんな人形は確かに強い。


だがそれに納得することは、まず出来ない。


そんなもの間違っている。


思うだけじゃない。それを証明しなければゴラースミは他の死体で繰り返す。


そして……


セレスは立ち上がるとデバイスを構えた。


「無駄むだむぅ~だぁ!小娘が今さら何をしようと無駄なあがき!

メソメソ泣きながらあの世で父親に詫びるんだな!」


ゴラースミの絶叫と共にアルフォートがセレスに突っ込む。


「セレス!」


アローニャが石を操作し止めようとするが間に合わない。


当のセレスは構えたまま、まだ動かない。


よく見るとセレスは目を瞑っていた。


(私がすべきことは、ここで悲しんだり泣いたりすることじゃない)


セレスは自分の心の弱さを戒めた。


(私がすべきことは、ここでお父さんを止める事だ)


自分に言い聞かせる。


(でなきゃお父さんが浮かばれない)


言い聞かせ覚悟を決める。


「セレス!危ない!!」


アローニャの叫びに合わせたかのようにセレスは目を開いた。


炎の棘(フルンド)!カートリッジロード!!」


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