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幻想冒険譚:科学世界の魔法使い  作者: 猫フクロウ
炎と氷の鎮魂歌
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ステラの掃討作戦

緊急の通信が入る。


「し……しき……お、と、して……至急!応答して!」


声がはっきり聞こえるようになった。


「ポーラ!?こちらウィンリー!」


「繋がった!ナビしてほしいの!水の生体兵器に追われてて通路じゃ狭くて戦えない!」


つまり広い場所に案内してほしいとのことだ。


「ちょっと待ってて!」


要件を理解したウィンリーは得られたマップを確認したがポーラの近くを調べる。


「ポーラの近くに……無い!」


「!?」


最悪な答えだがポーラは予測した通りの答えだった。


「なら入り口まで戻る!みんなの戦闘は?」


「まだ……数が思うように減ってない」


状況はあまりよろしくないようだ。


そこに新たな通信が入る。


「敵はどんなやつだ?」


声の主はアルカナフォートマスター、ステラだ。


「水の生体兵器、強酸性で霧にも変化するのを確認!さらに分裂もするみたいです!」


強酸性ということは対策が無ければ触れることは出来ない。


そして霧状に変化するということは広範囲の攻撃ができ、

人間である魔導士の体内に入ることが容易に出来る。


さらに分裂するとなれば尋常じゃない数を相手にすることになる、

且つ全てを同時に破壊しなければ消えることは無い。


魔導士でないウィンリーにも簡単に想像できるくらい恐ろしい相手である。


「わかった。数分時間を稼ぎながら戻ってきてくれ。こちらに手がある」


「はい!承知しました!」


そう言うとポーラは通信を切った。


「ス、ステラさん、この状況であんな兵器持ち込まれたら……」


「うむ、手があると言っただろう?このままロボットを相手している連中に繋いでくれ」


「は、はい!」


ステラの考えはわからないがこの自信。言うことを信じるしかない。


「繋ぎました」


「全員よく聞け!数分後に撤退の合図を送る!」


まさかの撤退宣言。これには動揺が走る。


「それまでにお前たちがすべきことはロボット連中を拘束または動きを鈍らせることだ!」


まだ意図が解らず動揺する人もいる。


「撤退後、掃討作戦を実行する。その掃討作戦は敵味方の区別が出来ないので、

従わない者の命の保証は出来ない。以上!各自今出来る事を全力でやれ!」


そう言うとステラは通信を切った。


アルカナフォートの面々はステラを知るので指示に従ったが、

パースレールの面々は半信半疑で行動が疎らだ。


(んな無茶苦茶な……)


ウィンリーもステラのことをよく知るわけではない。


戦闘中のメンバーは実力不足で見限られたと思う連中もいれば、

マスターをやってる人が何の手も無く撤退させるとは思えないと言う連中もいる。


「さて、ポーラ達は部屋に入った直後、転移ゲートで避難させろ。

それと低ランク組はよくやった。そのまま強制送還させろ」


ステラはウィンリーに具体的な指示を出す。


よくやった。


つまりもう十分やってくれたという意味だろう。


「はい、直ちに!」


ステラは見限ったわけじゃないとウィンリーは思った。


(この人を疑わずに従おう)


そう切り替えたウィンリーは大急ぎで連絡し、用意した。







「クラリス、調整は?」


「バッチリに決まってるじゃな~い」


ステラは掃討作戦の準備を進める。


「本当は、お前にも手伝ってほしいんだがな……」


「嫌よ!弔い合戦なんて何の得も無いじゃない」


「だが実験の場としては最高だと思うが?」


「それは……そうだけどぉ……」


「プライドが許さないと?」


「……」


「相変わらず不器用な性格だな」


「うるさい」


ステラはクスクスと笑っている。


普段は周りに敵を作るような物言いが多いクラリスも、

ステラの前では少し我儘で意地っ張りな子供のようになってしまう。


「あらあら?これから戦場に行くというのに随分と上機嫌ね~」


戦場に向かうのを待っていたかのようにティーナも現れる。


「可愛い錬金術師様に癒されているところだよ」


「こ~らぁ!そんなこと言うと手伝わないゾ」


「あらあら、偉い立場になったから昔の友人を見捨てるなんて、

醜い豚どもと同じに成り下がったのかしらぁ~?」


「……ティー、ナ!」


怒ってる怒ってる。


「わかったわよ!同じギルドの仲間として助けるわよ!」


お子様みたいな性格はなんて扱い易いのでしょう。


「言質いただきました~」


「あっ!ひ、卑怯よ!」


机をバンバン叩くような音が聞こえる。


顔を真っ赤にしながら怒っている姿が目に浮かび、思わず笑ってしまった。


「もちろん、上級貴族様に二言は無いよな?」


ステラも悪乗りする。


「うっ……と、当然よ」


「しかも仲間を助けてくれるんだから、何かを支払えとか言わないよな?」


仲間を助けるのに何かをよこせなど恩着せがましいことを言う貴族など、

いい笑いものになってしまうし、縁を切られ孤立してしまう。


「――!――!!」


いいように使われることが分かったが、自分の発言のせいで断るに断れない。


たぶんクラリスは顔を真っ赤にして頬を膨らませてるだろう。


「さあ、冗談はこれくらいにして、気を引き締めろ。

今回の相手は簡単に済まさせてくれないんだ」


「ステラがふざけたんでしょ~?」


「あら~?クラリスが素直に助けますって言えばいいんじゃないかしら~?」


「おまえら……」


締まらないがこれが平常運転なので仕方ない。


「ソニア達が先行している。くれぐれもやり過ぎて巻き込まないことだ」


「は~い」


「そんなヘマしないわよ」


そのあたりは上手い連中だ。信用して良いだろう。


一人を除いて。


「お前も滅多に戦わないんだ、範囲だけは気を付けろ」


ずっと黙っていたが、ティーナの陰にもう一人いた。


大人しく、寡黙に指示を待っていた。


「はい」


幼い子供のような容姿をした少女がステラの後をついて行く。


「さあ、私に作品の性能を存分に見せてちょうだい」


「はい、マスター」


いつ戦闘を始めても問題ないようだ。


「サン・メルト、いってきます」


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