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幻想冒険譚:科学世界の魔法使い  作者: 猫フクロウ
最低世界の最強魔道士
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恐怖の代償

メリオルで三日眠り続けて、いざこざで半日以上経っている。


地球はメリオルのおよそ二倍の速さで時が流れるので、地球では一週間以上経ってる計算だ。


トウヤの住む日本という国で、子供が一週間以上も行方不明になると大騒ぎとなる。


何か事故に巻き込まれたのか、それとも事件に巻き込まれたのかと考えられ、

多くの大人がその子供を探すことに協力する場合が多い。


これは孤児にもしてくれるだろうか?いささか疑問ではあるが、してくれることを願う。


学校はサボっていても、ある理由から修道院には毎日帰るようにしていたトウヤが、

こんなに連絡もなく何処かへ行ったのは初めてだった。




(なんでこんな遠くなんだよ)


魔道士の転送は飛行物などとの衝突を避けるために何もない海上や無人島に転送される。


日本まで500km以上あるが、魔法世界で魔力を回復させ、

飛行魔法で音速に近い速さで進めるトウヤにとってはそこまで遠くない。


しかし今は一分一秒が惜しい。急いで帰らねば。最悪のケースが頭を過る。


怒りと焦りが混じったモヤモヤで嫌なことしか考えられない。


今はまだ何事も無いことを祈り帰るしかなかった。







「シスター!シスター!誰かいないか?」


到着するとドアを乱暴に開け叫んだ。


その大きな音に驚きながらも見慣れた恰幅のいいシスターが顔を見せた。


「トウヤ君!?今まで何処へ…その怪我どうしたの!?」


その声に小さな子供たちも走って集まりトウヤ抱きつく。


「トーヤにーちゃ…」


「どこいってたの?」


半泣きの子供たちを抱えながら顔を確認する。




一人足りない。




この子たちの姉替わりのユキがいない。


「シスター、ユキは?」


「そ、それがユキちゃんも三日前から行方が分からないのよ」


最悪の答えだった。


抱いてた子供を降し、急いで外へ出る。


「何処へ!?」


「ユキを連れ戻す!」


そう言い残し、急いである場所に向かった。




「トウヤ!」


ようやく追いついたポーラ達と合流する。


その顔を見てあることを思いつく。


「なあ、探知魔法なんてものないか?特定の人間を探す魔法だ」


その問いにポーラも最悪のケースであることを理解した。


「局の人間なら特定できるけど、他の人間は特定できないわ。そこに誰かいる程度よ」


「なら“この辺りで四人の集団がいる場所”ってのは出来るんだな?」


「それは出来るよ」


「おい、そろそろ何が起きてるか説明しろ」


状況が理解出来ないままついて来たリーシャとファイゼンは蚊帳の外である。


「うちの悪ガキ三人組にユキが拉致られた」


誰かはわからないが、トウヤがその子を探してることは理解した。




「ウィンリー、この辺りでサーチかけられる?」


ポーラは局にいる誰かと話しているようだが、トウヤには相手の声が聞こえなかった。


「トウヤ、この辺りは人が多すぎて特定が出来ないみたい。もっと範囲を絞れない?」


ここは都心と呼ばれてる人口密集地帯。案の定わからなかったが、手掛かりはまだある。


トウヤは急いで移動しある場所に立った。


「ここから子供の足で行ける範囲、そして人目に付かないところで絞ってくれ」


再度ポーラは探知を依頼した。


「何を探してるんだ?」


唐突にファイゼンが聞く。


「あいつらの居場所だよ。よくこの辺りで見かけるからここから近いと思うんだ」


「何かあるのか?」


「たぶん隠れ家みたいなものがあるはずだ。あいつら昔から何処かで屯(たむろ)ってたみたいだし」


「なるほど、隠れて何かするならそこが一番だな」


拉致、無理やり連れて行き何かをするなら、人目に付かないで隠れる場所が必要になる。


「わかったわ、あっち側に320mよ」


ポーラは鬱蒼(うっそう)とした木々がある小高い丘の方を指す。地上を進むのは面倒だ。


飛行魔法で上空から進む。


誰かに見られないか心配だったが木々に隠れてるので問題ないだろう。




ここは戦没者を埋葬する墓地を含む広大な森林公園、

とは名ばかりで一部は管理が届かず天然の要塞のようだった。


その中に小屋と思われる古びた建物があった。


昔は何かに使っていたのかもしれないが、今は破棄されボロボロだった。


着地し近づくと声がした。当たりだ。


そうわかった瞬間激しい怒りに襲われた。




バン!




ドアを破壊し、中へ入ると案の定三人組が立っていた。


凍りつくように微動だにしない三人を他所(よそ)にトウヤとポーラが奥へ進む。


すると誰かが倒れているのがわかった。


「ユキ!」


そう呼び倒れている少女を抱き上げる。しかし少女は力なくぐったりとしている。


「…くっ……」


ポーラはあまりの惨状に目を背けてしまう。


三人は即座に逃げ出したが、出口はリーシャとファイゼンが立ち塞がり出られなかった。


ユキの顔は男か女かもわからないほどの腫れと傷があり、血でベトベト。


体にも無数の傷で何をどうしたらこうなったのか理解に苦しむ。


さらに何かの液体が酷い悪臭を放っていた。


「てめぇら!いったい何をした!」


あまりの惨状に怒りを抑えられないリーシャは三人に問い詰めた。


「お、俺らのせいじゃねぇ!あいつのせいだ!」


「いつも俺らの邪魔をするから教育してやったんだ!」


「俺は関係ない!俺は…おれは…」


精一杯の虚勢を張る三人だが足は震え逃げ出そうとしていた。




「…もういい…」


そうつぶやく声が聞こえると、

背筋に悍(おぞ)ましい何かが駆け上がり、思わず三人から飛び退いてしまった。


その声の主、トウヤはユキを降ろして立ち上がり三人を睨み付ける。


狂気にも似た殺気があたりを支配する。


魔道士である三人はある程度経験があるので耐性があるが、

それでも足が竦(すく)み思うように動かせない。


そしてその殺気のなかに何かがあり、気持ち悪くて吐きそうになる。


耐性のある三人でこれだ。一般人の三人は一溜まりも無い。


一人は泡を吹きながら気を失い、

もう一人も泡を吹きながら錯乱状態に陥り手足をバタバタさせている。


一番身体の大きいやつは腰を抜かしながらも後ずさりし、泣きながら首を振っている。


「…ころす…」


そう呟くとさらに魔力が発せられた。トウヤを止めないと。でも体が動かない。




そんな中、何かがトウヤの足に当たった。


意識を取り戻したユキがトウヤの足を掴もうとしたのだ。


殺気に支配された状態から正気を取り戻したトウヤは、またユキを抱き上げる。


「ユキ!」


小刻みに震えながらユキが口を動かす。


「…ころ……しちゃ…だ…め…だよ…」


目と思われるとこから涙が流れる。


こんな拷問よりも残虐な仕打ちを受けてもユキは相手を許せと言った。


「ああ…ああ、わかった。だからもうしゃべるな」


トウヤは涙ぐみながらユキの手を握る。


「…あ……り…が…と…」


笑ったような表情をする。そんな風に見えた。


「…す……」


ユキは力なく倒れる。


「ユキ!ユキ!しっかりしろ!いま…いま…」


泣き出すトウヤの声は小屋中を震わせた。


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