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幻想冒険譚:科学世界の魔法使い  作者: 猫フクロウ
黒の反逆者たち
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外伝:師弟関係

「ふみゅ?おししょーさまおししょーさま」


ルミはあるものを見つけた。


「どうしたの?ルミちゃん」


クラリスは書き物をしながら答える。


「ミーナは廃棄予定れすよね?ろーして作ったのれすか?」


カプセルの中にはミイナがいた。


「ああ、星歌(ほしうた)の君が欲しいって言うからプレゼントするのよ」


「ふみゅ!?タダれすか!?」


「うふふ、違うわよ。血や髪の毛は貰ったわ。もう一人からもいっぱい貰ったからサービスサービス」


「もう一人れすか?」


ルミは星歌(ほしうた)の君の交友関係を知らないので心当たりは無かった。


「ふみゅ~、皆さん兵器がらい好きなんれすね?」


「そうね」


ルミにとってWorks(ワークス)はただの兵器と言う認識だ。


「おししょーさまも兵器ばかりれすよね?」


「そうね。研究にはそれなりにお金がかかるし、ある程度商売にして実験データも必要でしょ?」


「実験レータはわかりますが、お金なら金銀財宝れいいのれはないのれしょうか?」


「ちっちっちっ」


クラリスはウインクをしながら指を振った。


「金銀財宝は材料や手間のわりには儲けが少ないのよ。逆にWorks(ワークス)なら培養元はたくさんあるし、

金銀財宝よりも高く売れるのよ。さらに愛玩用も飛ぶように売れるから資金には困らないわ」


金銀財宝は一部を切り取っても変わらないが、兵器は一部が変われば大きく変わる。


銃が弾の種類で殺傷力に変化が出るのと一緒。


Works(ワークス)も頭のてっぺんから足先一本一本まで、全て変えられる兵器だ。


同じ兵器でも組み合わせ次第で何通りの組み合わせが発生し、使いまわしでも違う結果が得られる。


そして争い事はどこかの国で必ず起きている。一つが終わればまた一つ生まれる。


まさに枯れる事のない恵の泉だ。


そこに兵器を売りつけることで利益を生む。


敗戦国の扱いは家畜並みかそれ以下なのは言うまでもない。


なので高くても敗戦国になるくらいならと皆買っていく。


クラリスにとってどちらが勝とうがどうでもいい。


名前も顔も知らないどっかの誰かさんが死のうが気にならないのと一緒で、

大切なのは使用された兵器がどういう効果を生み勝ちに結びついたか、

負けた兵器は何が原因で劣ったのかという結果のみである。


机上の空論だけではなく、起こった事象と要因を確認し、次にどう生かすのかが大事なのだ。


「さて、ミイナも情報だけは持って帰ってきたから、その整理もしないとね」


「ネットワークにまら入っていないのれすか?」


「ええ、あの子は廃棄予定だったから外していたのよ」


「なるほろ、盗まれないようにしていたのれすね。さすがおししょーさまれす」


「ああん!ルミちゃんに褒められると嬉しいわ!」


「おししょーさまはルミの自慢れす!」


「ああん!身体が悦んで跳ねちゃう!」


「おししょーさま可愛いれす!」


「ああ!ああん!うれしい!!」


用事を終え帰ってきたニイナに止められるまで褒め続けたルミと、悶えるように悦び続けたクラリス。


情報の整理が全く出来なかったのは言うまでもない。







「えっと……16時間2分、少し短いわね」


ソニアは結果を見て唸った。


先日A+(オーバーエス)ランクになった教え子の結果はイマイチだった。


「あなたの一番の欠点はスタミナ。つまり魔法を長時間使うことが出来ないことよ」


息を切らせているルーを見て今の問題点を指摘する。


「“弾む弾幕砲(バウンズキャノン)”は面白い魔法よ。使い方によっては大物だって討ち取れる。

でもあれこれ魔力を使いすぎるからそれが難しくさせているの。

だから今は徹底的にスタミナを強化するのよ。いい?」


ソニアは聞くが、ルーは息を切らしていて返事が出来なかった。


「いつまでへばってるのよ!」


「ちょ……ちょっと待って……くだ……」


「はい!これ操作して!」


「ちょ!?」


スタミナ強化のために一度魔力を空にさせたのだから時間を無駄にしたくない。


だがルーはなかなか動けずにいた。


「これは肉体の強化も必要ね」


「ひぃいい!」


ソニアの鬼のようなしごきに思わず悲鳴が出てしまった。


「肉体強化と言ってもこれはどうしても時間がかかってしまうわ。

……まぁ、短期でやろうと思えば出来るけど……」


「短期でも出来るんですか?」


「ええ……ガチムチになるけどね」


「うっ……」


一瞬食堂のあのお姉さんの姿が浮かんだ。


愛らしい姿を好む二人は、自ら筋骨隆々な姿になろうとは思わない。


よって長期的に体型を維持しながら体力の向上を目指すのがベストである。


「あと一時的なものとして低酸素地域に行くことね。定期的に行けばある程度長く維持出来るわ」


「低酸素地域に行くだけで!?そこ行った方が――」


「楽しようとしない!」


コツンとルーの頭に拳骨を当てる。


「人間って言うのはしぶとい生き物でね、すぐにその環境に適応しようとするの。

でもね、何度もやると慣れてしまって変わるのも早くなってしまうのよ」




アスリートも大事な試合前は高山でトレーニングを実施したりする。


心肺機能を低酸素状態に慣れさせ、酸素を効率よく巡らせられるようにし、

試合会場のある通常の環境で効率よく巡らせる+αの状態にすることで、

通常より大きな力を発揮出来るようにさせているのだ。


もちろん慣れてしまえば回復も早く恩恵を受けづらい。




「ま、あなたまだ14なんだから、肉体の方を強化する方が先でしょうね。

あと魔力操作は日々の訓練。今からでも生活の一部にしなさい」


「はい」


素直にソニアの指摘を受け入れるルー。


(根は真面目だし、目標が決まれば頑張り屋だよなぁ)


ルーに対するソニアの評価は良い方だった。


「おーい、ルー?」


訓練場にお客が現れた。


ルーが目標にしている一人、トウヤだ。


「あ、ソニアさん。こんにちわ。取り込み中でしたか?」


「いいえ、大丈夫よ」


彼は会う前は酷い人間と言われてたが、話してみれば噂の一人歩き。


子供にしては礼儀も理解しているので好感を持っている。


「ルー用のデバイスを作ってみたんだ。ちょっとテストしてくれないか?」


「え!?あたし用?」


「ああ。優先順位をつけさせてもらったが、仲間なのにデバイスを作った

作ってないで差があるのはおかしいだろ?遅くなったけど、使ってくれないか?」


「……うん。ありがとう、大切に使う」


ルーは嬉しそうに笑いながら受け取った。


「そういえばポーラ達も面白いデバイス使ってたわね。あれも全部トウヤ君が作ったの?」


「はい。基本ベースは自分で、ポーラとティアは俺仕様をそのまま使ってくれてますが、

使う本人の要望に合わせて機能を付け加えて作っていますよ。」


デバイス職人並み、いやそれ以上のことを平然とやってしまっている。


「と、とりあえず、ルーちゃんのデバイスにはどんな機能があるのかな?」


ソニアは嫌な予感がしていた。


「得意の三種の中でも強化系が一番苦手と言ってたので、そこを補助する機能と、

球状だけだと決定打に欠けるので突起のある物など変えられるようにしています。

あとある程度範囲を絞った方が効果的なので弾だけに反応する空間の壁を作ります」


「……」


「すご……なんか至れり尽くせりって感じね」


ルーは感心したが、ソニアの嫌な予感は的中した。


「トウヤ君、ちょっと自重しようか?」


ソニアは込み上げる怒りを抑えながら笑顔で話した。


「え?何でですか?」


ソニアは両手をトウヤの肩に置き脅すように言った。


「君のデバイスは使う人を怠けさせる可能性があるのよ。

これでルーちゃんが修行サボりだしたら君を許さないよ?」


トウヤのデバイスは魔道士をダメにする。いや、彼自身が相手をダメ人間にするかもしれない。


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