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幻想冒険譚:科学世界の魔法使い  作者: 猫フクロウ
黒の反逆者たち
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全速落下

「なにが……起こっている!?」


最初から勝とうと思っていない。


勝てないから足止めに徹していた。


しかし……


獣型の生物兵器が襲いかかる。


それをトウヤは左手に持った短剣で受ける。


受けると言っても剣先に見えない盾のようなものがあるのか、獣がそこで止まる。


そして止まった瞬間、四肢、体、首がずたボロに引き裂かれ獣が肉片に変わる。


今度は複数の獣が襲いかかる。


獣がトウヤの姿を埋め尽くし、今度こそと思われたが、それでも全て一瞬で肉片へと変わった。


トウヤは右手の剣を振り降ろし、獣の血を振り落とす。


右手の剣は通常のサイズ。これで切り刻んだのか?


だが切り刻んだ数が多い。上位の魔道士でもこんな短時間で切れる量じゃない。


どんな魔法を使ったのか全く分からない。


そして獣が一瞬で肉片に変わるので、足止めも叶わなかった。


そして……


「うごっ!?」


剣で刺された。いや、刺されても切れてない。鈍器で突かれた感じだ。


だが強烈な一撃で、バーネットは気を失った。




「な……なんてやつだ」


バーネットが従えてた獣たちは、複数で集まれば高ランク魔道士でも苦戦するようなやつらだった。


それなのに、一方的に殲滅するトウヤにクレアは驚いた。


「さあ、行くよ」


気を失ったバーネットを肩に抱え、トウヤが促す。


「ごめん、動けないかも」


「じゃあ俺に捕まってくれ。そうすれば一緒に飛ばせる」


「それくらいなら……」


フラフラのポーラは素早く動けないので連れ出してもらうようだ。


「おい、あんたも行くぞ」


そう言い、トウヤはクレアに手を差し出した。


「行くわけないだろ。私はお前らと手を取らない」


「死んでもか?」


「ああ」


急がなければならないのに面倒だと感じた。


トウヤは有無を言わさずにクレアを掴むと、そのまま“(かけ)”で移動した。


「は、離せ!お前らの……」


「うるせえ!黙ってろ!」


有無を言わせない感じにクレアは大人しく黙るしかなかった。


(つなぎ)”でチューブラインの入り口まで移動し、チューブラインを下る。


「ねえ、やり直さない?」


唐突にポーラが提案した。


「はあ?お前に負けたのにやり直せるわけないだろ」


「どうして?」


「お前に負けてるようじゃ終わりだ。それに(ブラック)ギルドにも所属していたし……」


「罪を償えば復帰は許されるよ」


現に元(ブラック)ギルドの人間が局内にいる。


罪を償った人間が再出発できるような道は局にある。


もちろんそう簡単な事ではないが、全く無理という訳ではない。


「でも……無理だ」


「無理じゃない。私もクレアに勝つなんて無理だって思ってたけど、ようやく勝てたよ?

無理と思って立ち止まるんじゃなくて、もう一度やり直せるようにしようよ」


「……」


クレアは黙ったままだった。




「……ヤ!……へん……!ポ……!」


アークの妨害電波(ジャミング)の効果範囲から出たのだろう。


誰かの念話が聞こえた。


「ポーラ!トウヤ!返事して!」


「セレス?」


完全に範囲外に出たので誰だかしっかりわかった。


「トウヤ!?動かないで止まって!!」


よくわからない指示が聞こえると、セレス側から破裂音が聞こえた。


「巻き込まれてない!?」


「何に?」


「大丈夫そうね。いい?冷静に聞いて。地上63000m付近で固定した爆弾が爆発したの」


「!?バーネットが落としたやつか!?」


「ええ。タイマーでも爆発するようになっていたのよ」


何て事を……余計な事をしてくれたと気を失っているバーネットを睨み付けた。


「現状、レーダーで確認出来ました!」


セレス経由でウィンリーの声がした。


(あれ?なんでセレス経由?)


彼女はエルメント・ジュエルの専任サポーターなんだからトウヤやポーラと通話すればいいのになぜ?


「爆発の影響でチューブラインに穴が空きました。そしてその穴は今も広がっています!」


「何が起こってるの?」


「説明は後だ!全速力で降りてこい!!」




スペースコロニーArk(アーク)は制御魔法で操作の他にもう一つ、

チューブラインに引かれるように高さと位置を維持している。


これは地球でも似た構想が考えられていたが、チューブライン部分の負担が大きく、

何百、何千トンというスペースコロニーが引く力に耐えられないらしい。


マギアアークでは魔法を使うことでクリアしたが今、このチューブラインに穴が空き、

引く力に耐えかねて千切れようとしている。


つまり千切れたらアークと一緒に宇宙空間に取り残されることになる。


さらに範囲から出たとはいえ、妨害電波(ジャミング)の影響でトウヤ達は局から補足出来ていない。


そのため、サポーターからの念話や局の空間移動魔法の補助が使えない状態だった。


セレスとの念話でおよその位置はわかったが、詳しい位置までわからない。


「現在およそ260000m~270000m!まだ補足出来ません!」


生身の人間が音速の速さで駆け降りている。


モービルと同等の速さで進めるのは今、この場面ではありがたい。


だがチューブラインが千切れるかもしれないこの状況ではまだ遅い!


「ポーラ!どっちか持ってくれ!」


どっちか……それはトウヤが両手に持っているクレアとバーネットの事だ。


「クレア!手を!」


ポーラはクレアに手を伸ばした。だが……


「私を置いてけ!お前らに助けてもらう筋合いはない!!」


「バーネットだ!バーネットを持ってくれ!」


トウヤは即座に気を失っているバーネットを持つよう指示した。


クレアと言い争ってる時間は無い。


ポーラは手を伸ばしバーネットを掴むとトウヤに合図を送った。


「掴んだ!離していいよ!」


その合図を聞くと、トウヤはバーネットから手を離した。


(かけ)”という魔法の性質から、体の一部でも触れていれば、効果の対象になる。


それは別の人間を経由しても同じことが出来る。


触れているから一つの空間として動かせる。この制約はかなり便利だった。


トウヤは自由になった手に剣型のデバイスを取り出すと正面に構えた。


(かなめ)!トランスフォーム!!」


デバイスが光り、変形する。


重力の剣(グラビティコア)!」


漆黒の真っ直ぐな剣に変化した。


高重力の拘束(ヘビーバインド)!!」


トウヤがそう唱えると、一気に落下スピードが上がった。


空間には重さが無い。正確には他の空間と同じ重さだろう。


そのため、“(かけ)”の動かす速さは、動かし手であるトウヤの操作に依存する。


つまり音速までしか動かせないので、速さはそこが限界だった。


そこに重力と言う重さを自分の空間に加算し、他の空間より重くすれば自然と速くなる。


それをデバイスを使い行ったのだろう。


(この速さで間に合うか?)


これでもまだ賭けだった。


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