タイムリミット
あまりの唐突な発言に困惑する。
「バーネット!つまらない嘘を言うな!!」
最初に声を荒げたのは仲間であるクレアだった。
「嘘と思うならそう思えばいいさ。俺も自爆装置なんて物を見つけた時は驚いた。
アークの管理者は兵器でもあるこの場所を危険視していたんだろう」
確かにアークは宇宙の脅威から護るために様々な兵器が存在する。
だから国に落ちたら惑星が壊れるほどの被害になることが想定された。
だから犠牲を払ってでも墜落を阻止した。
それなのにアーク自身に自爆装置があるなって……
「本当のこと……なのね」
「ああ……俺はもう……逃げるのに疲れた」
ポーラの問いに答えたバーネットは嘘を言っていない様子だった。
「そ、そんな……せっかくファイゼンくんを……」
「その男もたぶん救出されているだろう」
「!?誰が!?」
「隠れてみてるんだろう?小僧!」
誰かに向けて叫ぶバーネット。
「小僧って、まさか……」
ポーラは辺りを見渡すが誰もいない。
しかし……
「もう仲間の元へ送ったよ」
何もないところからトウヤが現れる。
「トウヤ、いつのまに」
「少し前から、こいつはポーラが倒さないとって思ってて黙って見てたんだ」
「この、糞ガキが!!」
怒り叫ぶクレアだが、体をかるく起こすのがやっとのようで、その場から動けずにいた。
「返せ!私の……大切な人を……」
クレアの目から涙が溢れる。
「クレア……俺たちは負けたんだ」
「負けてない!まだ……まだ取り返せる……」
「テルシオ達もみんな負けた。こちらの戦力は俺だけ。
むこうはこのガキともう一人の女のガキ。俺はこいつらに勝てないだろう」
「犬は!犬を使え!」
「このガキには勝てない。トカゲを数匹でやっとだろう」
「ならトカゲだ!トカゲを出せ!」
「もういない。俺たちの負けだ」
「……ちくしょう……ちくしょう……」
使える戦力がない事を理解したクレアの口からようやく敗北を認めるようなセリフが出た。
「そしてこの後の俺たちは、殺される道しか残っていない」
「局はそんなことしない。罪を償えば……」
「賞金首なのにか?」
自殺を止めようと出たセリフだったが、逆にポーラ自身の首を絞めてしまった。
「それにお前たちにじゃない。そんな気がするんだ」
お前たち、つまり局の人間とは別の人間に狙われるのか?なぜ?
「あのお方は使える戦力は大事にする。取り返して……」
「くれるか?」
クレアとバーネットの間で話が進むが、どうやら黒幕がいるようだ。
「どうせ死ぬんだ。なら寂しくないように大勢でいこうぜ!」
バーネットが両手を広げ、天を仰ぐと、後ろで映し出されていた映像に何かが現れる。
「お前たち、仲間が大勢、下で待ってるんだろ?」
「?」
妨害電波の影響で今の状況はわからないが、
アークの落下を阻止するために協力してくれた人たちはみんな地上で待機している。
救援に駆けつけるか、ポーラ達の帰還を待っているか……
魔道士にとって特に理由が無ければ、助けた仲間を最後まで見届ける。
乗りかかった船には何とかというやつだ。
特に今回のように一日のうちに終わりそうなクエストの場合は、見届ける場合が多い。
「まさか……!?」
「落ちてくると思わないよな?巨大な爆弾が」
「全員を巻き添えにする気か!?」
巨大な物体がチューブラインを通って投下された。
「あれはチューブラインも破壊できるほどだ。下の奴らもみんな一緒にいこうぜ!」
チューブラインが破壊されればアークは制御と支えを失い宇宙の彼方に飛んでいく。
転移魔法も不特定の場所を高速で動く場所には転移できない。
しかもアーク内は妨害電波の影響で局の転移が出来ない。
つまり、あの爆弾が爆発するとポーラを始め、複数の人間の死が確定する。
「安心しろ。チューブラインを破壊したら、すぐにここも破壊するようにした」
終わりへのカウントダウンは既に始まっている。
「セレス!動けるやつらで爆弾を止めるんだ!!」
トウヤは叫びながら念話で話した。
「わかった!そっちは全員連れてこいよ!」
「ああ!」
クレアは倒れたまま。ポーラも辛うじて立っている感じ。こちらは動ける人間はトウヤしかいない。
そして……
「独りは寂しいだろ……」
獣型の生物兵器が現れる。
「あんたの我儘に付き合ってる暇はねぇんだ。局まで寝ててもらうぞ」
「精一杯抵抗させてもらうよ」
獣型は十数体、そいつらをさっさと蹴散らして、バーネットを気絶させ確保。
その後ポーラ、クレアを連れてアークから脱出。
トウヤは剣型のデバイスを創りだし、構えた。
「あんた……さっきまで動けてたのになんで運ばれてるのよ」
本気でヘトヘトなルーをリリスが、まだ気を失っているファイゼンを敵だったフウとライが、
そしてさっきまで元気だったはずのリンシェンはティアが運んでいた。
急いで地上に向かわなければならないのに、真面に動ける人間が少ない。
かろうじてチューブラインまで進むのがやっとだった。
「す、少しだけ回復させてほしいにゃ」
「さっきまでカラ元気だったのね……」
「この中でおいらが一番動けるにゃ、少しでも回復して止めにゃいと……」
確かにトウヤに次ぐ素早さのリンシェンが動ければ投下されてる爆弾に追いつける。
しかしそれは万全の状態の話。戦闘で魔力を大量に消費したリンシェンには厳しかった。
「揃ってるか!?」
トウヤ達の方へ向かっていたセレス、リーシャ、ミナが戻ってきた。
動けない人間がいるから追いついたようだ。
セレスは全員の様子を見て素早く作戦を指示する。
「フウ、ライ。魔法を使って全員が乗れる乗り物を作るんだ。そうすれば運びやすい。
ミナは残ってみんなの支援、私とリーシャは全速力で降りて、下の連中に連絡と爆弾の落下を阻止するんだ」
地上に落としたら大参事。チューブラインのどこかに引っかけて止めるべきだ。
まだトウヤ達が下りないといけないしな。
「箱の……乗り物?」
リンシェンは呟くように聞いた。
「そう、この子達は具現化系よ」
二人を知るティアが説明する。
「正確にはぼくだけだよ」「僕たちは二人で全タイプ網羅してるんだ。変化系が弱いけどね」
「にゃら使える!爆弾を止める方法と全員で地上に行く方法があるにゃ!」
リンシェンは道具を使い、大型の荷物を取り出した。
「こんなもの、なんで収納魔法で持ってたんだよ」
「いや、でも……今最高に使える物じゃないか」
取り出したのはリンシェン達が使っていたモービルタイプのストームギアだ。
「全員乗り込め!全魔力を使って最速で地上に降りるにゃ!」