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幻想冒険譚:科学世界の魔法使い  作者: 猫フクロウ
黒の反逆者たち
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似た魔道士

(ポーラが……押されてる?)


目的の部屋に到着したトウヤの目に映ったのは二人の魔道士の閃光だった。




「「トライデント!スマッシュ!!」」


同時に放たれた雷は、互いに衝突し消えていく。


話には聞いていたが、魔道士としては瓜二つの二人。


だが聞いていた通りクレアの方が上手のようだ。




消えた雷を目暗ましにクレアは距離を詰める。


斧型のデバイスを両手で横に振るが、ポーラはそれを斧型のデバイスで受け止める。


柄の方で突き刺しクレアの上体を反らして躱させた後、向きを変え刃の方を叩きつける。


だがクレアが素早く横へ避けて空振りに終わる。


避けたクレアはそのまま魔法での攻撃に切り替える。


「プラズマ・ランサー!」


近距離で放たれた砲撃魔法は、比較的早い砲撃だ。


それを理解していたポーラは放たれる前にシールドを張っていた。


しかし……


「うっ!」


受けた砲撃は予想よりはるかに強い。


受け止め、踏ん張るが、クレアはこの隙を逃さなかった。


「ザンガル・クラッシャー!」


ポーラのシールドに目がけて自分のデバイスを叩きつける。


激しい雷と共に衝撃波が生まれポーラのシールドを破壊する。


「ああああ!」


デバイスによる雷と衝撃波がポーラを襲う。


「はああ!」


追い打ちをかけるようにクレアはデバイスを振る。


かろうじて耐え抜いたポーラはデバイスでクレアのデバイスを受けると、

その勢いを利用して長く距離を取った。


「うっ……はぁ、はぁ」


ポーラのダメージは大きいようでデバイスで体を支えても膝をついてしまった。


「これがお前と私の差だ!私はお前より強い!この私が、お前に負ける理由が無いんだ!!」


まだ余裕のあるクレアは声高らかに宣言する。


「……ふふ、それにしても使うデバイスまで同じになるなんてねぇ。

しっくりくるのが無いって言って使ってた籠手型のデバイスはどうしたんだい?」


「……はぁ……はぁ……あんたこそ、剣のデバイスはどうしたのよ」


最後に会った日から今この時までで互いに斧型のデバイスに変わっている。


ポーラはトウヤからの貰い物だが、クレアのは出所はわからない。


「死にゆくお前に教える意味が無いだろ」


「ええ、そうね。私もあんたに教える意味が無いのよ」


クレアにピクリと反応があった。


「減らず口も相変わらずだこと」


ポーラは息を整えながらクレアを見る。


軍服を思わせる黒のバリアジャケットはポーラも好みだ。


丸型の眼鏡はクレアのように常時かけないが、デスクワークをするときによく使っている。


髪型も長めが好きで、よく緩めの三つ編みをする。戦闘時はポニーテールなのも一緒。


昔、「まるでもう一人妹ができたみたいね」なんて言われたこともある。


改めて考えると好みまで一緒だ。


なのに……


どうして道を違えたのだろうか。


どうして仲良く出来ないのだろうか。


どうして殺し合っているのだろうか。


一方は光の道を上り、進んで行く。


もう一方は闇の道を下り、進んで行く。


止めなければ。連れ戻さないと。力づくでも、何が何でも。


でも連れ戻す力が足りなかった。




「リリス、お前は戻ってセレス達を助けるんだ」


ポーラの戦闘を見ていたトウヤはリリスに言った。


「え?トウヤは?」


「俺はここに残ってファイゼンを探す」


目の前の戦闘は無視して、行方がはっきりしない仲間を探すという選択をする。


「助けないでいいの?」


「……ああ」


「どうして?」


「……これはたぶん、ポーラ一人で片づけなければならない話だ」


「どういう……こと?」


「これはポーラがやり残した因縁だ。自分で決着をつけなければならないんだ」


リリスには理解出来なかった。


「とりあえず、リリスは下だ」


「わたしも一緒に行く」


「いや、一人で探す。リリスは脱出の準備をしてほしい」


「脱出?普通に帰るのじゃダメなの?」


「ああ、たぶんクレアは負けそうになるとアーク全てを破壊してでもポーラを道連れにする」


「うそ!?」


「ああいう人間は最後にとんでもないことをしでかす。その定番が道連れだ」


「そんなことしたら……」


「まず行方のわからないファイゼンは確実に死ぬ」


「……」


リリスは事態の深刻さを理解した。


「そしてポーラを道連れにするから、脱出が阻まれ逃げ遅れる可能性が高い」


「そこでトウヤが手助けするのね?」


「ああ、この時ファイゼンが気を失っていた場合、手助けしづらい。

だから先に見つけてリリスの元へ送るから、局へ帰すまでやってほしい。

もちろん、他のみんなも先に帰り、アーク内に残るのをポーラ、俺、クレアだけにするんだ」


「うん、わかった」


リリスは頷くと来た道を戻る。


「念のため、敵が現れるかもしれないから警戒するんだよ?」


「うん」


リリスなら強敵であろうと対処できる。特に単独であれば尚のことだ。


初見で魔法を使わない物理的攻撃でなければ対処できないと判断するのは難しい魔法だ。


それを味方の配所を無視して良い状況ならSランクであろうが太刀打ちできるだろう。


リリスと別れると中の様子を再度確認した。


ファイゼンに執着しているクレアのことだ。遠くに置くことは考えづらい。


そして戦闘をする前提だったのだから、かなり強固な場所に監禁しているだろう。


そう考えると……


(壁の中に異様に魔力が集中している場所があるはずだ)


(ごう)で目を強化し、魔力の流れを見る。


絶対に失わないようにするなら守りは厳重だろう。


そうすると必然的に大量の魔力を使い、複数の魔法で守っているはずだ。


そう思い見渡すと一部分だけ、強固と言うほどでもないが、

周りに比べて魔力が集中していて、堅そうな場所があった。


ただ、ここに来る前に確認した地図によると、部屋っぽいものはあったが、

監禁出来るような場所じゃなかったはずだ。


従業員のオフィスや休憩室……


そう考えると大事なことを思い出した。


この国マギアアークにとってこのスペースコロニーArk(アーク)は宇宙旅行が目玉の観光施設だ。


初めに到着した場所は施設の商業スペース。


沢山の人が集まっても楽しめるような広い空間にしているのだ。


そして気軽に楽しめるとはいえ、せっかく宇宙に来たのに日帰りなんてイヤだという人も多いだろう。


そんなニーズに応えるためにあるはずだ。宿泊スペースが。


ここは出入り口を限定した作りにして隔離することで、宿泊者限定の空間を作っていたのだ。


そしてポーラ達が戦っているのはホテルでいうフロントになる。


となると、あの強固に作られた壁にあるものが連想される。


フロント業務で発生するもので、強固な作りにして守らなければならない物。


それは荷物だ。地球のホテルでもフロントで客の荷物を預かることもある。


そしてそれをクレアはファイゼンの監禁に使ったのだ。


だが見た感じ荷物を預かるようなスペースは無い。


となると近くにあるはずだ。荷物を保管する格納庫が。


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