表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幻想冒険譚:科学世界の魔法使い  作者: 猫フクロウ
黒の反逆者たち
130/303

奇跡

「なん……で……?」


目の前にマンバが立っていた。


「この……クソガキがあ!!」


殴りかかる相手から、ミナはルーを抱えて急いで逃げる。


マンバはフラフラだったようで空振りをすると、そのまま倒れた。


ルーの攻撃は確実に効いている。だが倒し切るまでには至らなかったようだ。


「まだ……足りないのね……」


既に限界を超えているルーがまた立ち上がろうとする。


「ルー、もう無理しなくていい」


また立ち上がるマンバに、ミナは魔法を放つ。


しかしマンバは躱した。いや本能で躱したのか?


躱した後、四つん這いになっている。


「フー!フー!!」


マンバの息が荒くなる。この状態でも危険を察知し身を護る。


常に死と隣り合わせの人間の生存本能にゾッとする。


「……たぶん彼は……速さ自慢よ。攻撃の手を緩めないで」


ルーは解析した相手の特徴をミナにも教える。


相手はかなりダメージが蓄積されている。


つまり回復出来ないほど攻撃を続ければ、躱しづらくなるはずだ。


ルーが砲撃を放とうとするがうまく出ない。おそらく魔力がほぼ空なんだろう。


今度はミナが魔法を放つ。しかしマンバは躱してくる。


ミナの爆滅浄化(エクスパージ)は目で見た場所に魔力を送る性質上、連射性能はあまり高くない。


ある程度回避先を予測して放つが、それでも躱される。


「フーッ!!フーッ!!!」


マンバの顔が赤くなり震えている。


「まさか……怒ってる?」


「この俺が!こんなガキに手こずるとか!!いい恥さらしだ!!!」


マンバは怒りに任せて膨大な(はつ)を行う。


「うっ……」


あまりにも怒り任せで放たれた(はつ)は、暴風のような風を起こしている。


ドォン!!


あまりにもタイミング良く離れた場所で放たれた音に気を取られてしまった。


「ミナ!」


ルーの声で視線を正面に向けると、既にマンバは飛びかかっていた。


「撃て!」


声に合わせて正面に魔法を放つ。


(まずい!近すぎる!!)


咄嗟にマンバの上に狙いを変えて放つと、その爆発が運良く地面に叩きつける形になった。


「ぐっ!」


即座に顔を上げると、マンバに狙いを定め構えるルーが目の前に立つ。


「はああああ!!」


叫び空の魔力を振り絞る。だが魔法は使えない。


「ルー!」


ミナも構えるがルーが近すぎて、使うと巻き込んでしまう。


ニヤリとマンバは笑う。


「てめぇは所詮そこまでだぁ!」


マンバの拳がルーに襲いかかろうとした時、奇跡が起きた。


ドン!


鈍い衝突音がマンバの顔に響く。


一発だけ、拳くらいの大きさの弾が出た。


その弾はカウンターパンチの要領でマンバに当たった。


「おご!?ごっ……こ……」


マンバはフラフラと後ろへ下がる。


「き……奇跡だ。空の魔力から一発だけ出た弾で、止めが決まった……」


あまりの光景にミナは呆然としてしまう。


本当に最後の力を振り絞ったのか、ルーは気を失い倒れるが、ミナが急いで体を支える。


マンバが力尽き倒れようとする。


その時、横から轟音と共に何かが飛んできて、マンバを巻き込んだ。


「なに!?」


何かが激しく漏れる、いやジェット噴射のような音と共に暴風にみまわれる。


「うおおおおおお!」


唸り声のような叫びで、飛んできたのは人だとわかった。


ということは……


「巻き込まれないように捕まって!」


リンシェンは現れると、ミナとルーを覆うように立ち塞がった。


やはり飛んできたのはテルシオだ。


「何をしたの!?」


飛向注射(フェイシャンズーシェ)


「フェイ……?君の魔法なの?」


「おいらのぶっ飛び魔法だ。飛ばされないようにしっかり捕まっとけ~」


そう言うとリンシェンは駆け出した。


「この風の中であんなに自由に動けるの!?」


リンシェンの魔法は猫みたいな姿になることしか知らなかった。


隠していたのだろう。


だがテルシオを一方的に飛ばしたということは……あっちも決着が近い。


ミナは気を失っているルーが巻き込まれないようにしっかり支えた。




「なぜ……体が動かねぇ!?」


壁に叩きつけられた体を動かすことが出来なかった。


「お前は風の力に勝てるのか?」


「!?」


テルシオの体を飛ばしたり、転ばせたのは風の力だ。


「小さな風の力でも集中させれば大きな力になる。飛行魔法やスケートタイプがいい例だな」


例え小さな風でも一カ所に集め、一気に放出すると重い物も浮かせる。


地球ではホバーなどで活用されているらしい。


「まさか!?お前の体術は!?」


リンシェンは接近戦で使うニャンフーに、この噴射点の設置も同時に行っていた。


テルシオが防ごうとも、防いだ場所に噴射点を設置。


それを幾つも、体中に設置していた。


そしてその噴射点から好きなタイミングで風を噴射させることが出来る。


操作・放出系であるリンシェンが力で劣る相手に勝つために考えられた魔法だ。


「これで最後だ!」


リンシェンが合図をすると、正面に噴出がさらに強まる。


「がぁっ!」


テルシオが鍛え上げた体、強化系魔法をもってしても、それ以上の力で抑えられる。


ミシミシ!


先に限界を迎えたのは壁だった。


その壁の向こうは宇宙空間だ。


「捕まれ!!」


リンシェンが咄嗟に手を伸ばしテルシオを掴もうとする。


パシッ!


その手をテルシオは振り払いニヤッと笑った。


「いい勝負だったぜ、リン……」


宇宙空間に投げ出されたことによる急激な減圧で意識を失った。


壁が壊れたことを察知したアークは緊急の壁を作り出し、リンシェン達を隔離した。


「テルシオ……お前……」


自分の限界に常に挑み、戦いと力を求めていたテルシオ。


お互いを認め合い全力で戦った相手の最後に、リンシェンはそっと目を瞑った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ