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幻想冒険譚:科学世界の魔法使い  作者: 猫フクロウ
黒の反逆者たち
118/303

S級指名手配犯

(やられる!)


相手の攻撃の対処に遅れてしまったミナは正面から受けるしかなかった。


しかし


「うにゃあ!」


下から突き上げるように蹴り上げられた足は、相手の拳を突き上げた。


そして空中で体制を変えたリンシェンは相手の顔面に蹴りを入れ吹っ飛ばす。


「ほう」


吹っ飛び、壁に激突する大柄の男にも目もくれずにメガネの男は感心した。


「これは見誤りましたね。あのアホ、我々と近いかもしれませんよ、テルシオ」


「かもじゃねぇ。受けてよくわかったよ」


テルシオと呼ばれた大柄の男は首を鳴らしながら立ち上がった。


「うにゃ?無傷っぽいにゃ~」


リンシェンはニヤニヤしながら頭をかいた。


「ミナ!」


ルーはミナの体を確認する。特に怪我などはないようだ。


しかし、ミナはへたり込んだまま立ち上がろうとしない。


「ミナ!!」


「!?……あっ!」


二度目の呼びかけに気付いたミナは即座に立ち上がり構える。


「無事……なのか?私は」


「あぶにゃかったにゃ」


「あいつらは!?」


「あそこよ」


男二人は並んで立っている。


「あいつらは危険すぎる!逃げるぞ!」


「何処へ行くにゃ?」


「どこでもいい!急ぐぞ!」


ミナは逃げようとする。


しかし


「我々が逃がすとでも思っているのですか?」


「可哀そうに。恐怖で真面(まとも)な判断も出来なくなっちまってる」


そう言われミナは辺りを見渡す。


「閉じ込められてるにゃ」


ミナに絶望が押し寄せる。


「局!局の強制転移は!?」


「当然、通信妨害(ジャミング)してますよ」


ミナは嫌な汗をかき始めた。


「相手、そんなにヤバいの?」


「ん~大きいのは、かにゃ~り強いにゃ」


「お?アホだと思っていたが、強さを見極める力はあるみたいだな」


「おみゃあが理解出来にゃいからアホってのは違うと思うにゃ!」


リンシェンはぷんすか怒りだし、地団太を踏んでいる。


「アホは変わりありませんよ。我々の力を理解しながら、まだ勝てるとアホな事を思ってる」


「むきぃ~!にゃんかアホって言われたくにゃいにゃ!」


顔から湯気が出ているように見えた。


「さっき大男の方はテルシオって呼ばれてた。知ってる?」


ルーはミナに問いかける。


「テルシオ……!?S級犯のテルシオか!」


「S級!?」


ルーはミナが逃げようとしたことが理解出来た。


「強いのかにゃ?」


それを知らないリンシェンは疑問符を頭に浮かべている。


「S級は私達魔道士のSランクと同じと見ていい。だけど向こうは常に戦場に身を置いているし、

殺しが日常になっている人間だ。戦闘の経験や感覚は私達よりずっと上の場合が多い。

現にテルシオは魔道士を百以上返り討ちにしている」


Sランクと同じ、つまり彼の討伐クエストはSランク以上じゃなければ受けることは出来ない。


同ランクや少し格上程度では返り討ちに合っているのだ。


「そしてあいつがテルシオなら、隣の男は相棒のマンバだ。

マンバもテルシオより数は少ないが、同じことが出来ることがわっている」


それはS級二人と対峙していることと言える。


対してこちらはS-(アンダーエス)のミナとAA(ダブルエー)のリンシェンとルーのみ。


ランクでは完全に劣っている。


今の自分たちではあの二人に勝つことは出来ない。


「でもおいら達は三人だにゃ?協力すればいけるかもしれにゃいにゃ?」


「無理だ!」


ミナはリンシェンの意見を否定する。


「複数人で協力なんて他の人もやっている!それでも討伐できていないんだ!」


それはリンシェンの言う通りのやり方でも成功した試しが無いと言っている。


「ふ~ん、にゃら、おみゃあだけさっさと逃げればいいにゃ」


「はあ!?一人で逃げられるわけないだろ!」


「おいらは逃げるつもりにゃいにゃ」


「死ぬつもりか!?」


「なぜ死ぬと思う?」


「今まで何人殺されたと思ってるんだ!」


「そこにおいらはいにゃいにゃ」


「何を言っている!?」


「科学の世界に面白い言葉がある。失敗は成功の母にゃ」


「?」


「数多の失敗も成功を生み出すってのを命を産む母に例えた言葉にゃ」


「それが何を?」


「でもこれにはもう一つ意味が隠れている。やらなければ成功は決して生まれないということにゃ」


「………」


リンシェンの言いたいことがよくわからない。


「はは、アホの考えてることは…!?」


マンバはリンシェンを笑ったが、テルシオはそれを手で止めた。


(黙ってろと言う意味か?)


テルシオは真剣な顔でリンシェンを見ている。


「殺される?なぜ?あいつに勝てない?なぜ?やってもいないのになぜそうなる?

おみゃあは預言者か何かか?おみゃあの言う未来は100%やってくるのか?」


ここまで言われて何となく言いたいことが理解出来始めたきがする。


「科学は失敗してナンボにゃ!その積み重ねが成功と言う糸を紡ぎ寄せる!

やる前に諦めちゃ絶対成功しにゃい!死に物狂いでやってやり尽くしてから諦めるにゃ!」


そう言うとリンシェンは構えた。


「はは、アホは死んでも」「黙れ!」「!?」


テルシオはマンバの言葉を遮った。


「次あの女をアホ呼ばわりしてみろ、俺がお前を殺すことになるぞ」


「なっ!?」


マンバはテルシオの発言に驚いた。


「あと、あの女は俺がやる。手を出すんじゃねぇ」


「はあ!?……まあ相手が変わっただけです、問題ありません」


マンバの了解を得たテルシオはリンシェンの方へ歩を進め構えた。


「まずは俺から名乗るのが礼儀だな。俺はテルシオ・バイパー。

姉ちゃん、さっきはアホ呼ばわりしてすまなかった」


テルシオの口から出た言葉にリンシェンは驚いた。


「そして改めて名前を教えてくれ。これから戦う相手の名が知りたくなった」


(リン) 鈴音(リンシェン)、局のギルド、エルメント・ジュエルのメンバーにゃ」


リンシェンはテルシオの願いを聞き入れた。


「リンシェン、その諦めの悪さ、未来を自分で手繰り寄せる姿勢、気に入ったぜ。

あとあの言葉、失敗は成功の母だったか?」


「そうにゃ」


「いい言葉だ。しっかり覚えさせてもらおう」


「……へぇ、意外と気が合いそうだにゃ~」


「ふっ、かもな。だから俺も女だからと手は抜かねぇ!徹底的にやり尽くさせてもらうぜ!」


リンシェンとテルシオは同時に発を行う。


互いの魔力がぶつかり合うと同時に、一気に飛びかかった。


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