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幻想冒険譚:科学世界の魔法使い  作者: 猫フクロウ
黒の反逆者たち
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ポーラとクレア

クルル、アーニャが抜け、残りは8人。


この先、主要な人間が何人いるかわからない状況は完全に不利だった。


Sランク以上でも苦戦するような生体兵器の出現は、そのランク以下の増援も望めない。


ただでさえ少ない魔道士の中でも上位ランクの魔道士はさらに少ないし、

そう都合のいいように呼ぶことが出来るわけがない。


この8人で最低限、ポーラ、ファイゼンの奪還まではいきたい厳しい状況だった。


「ねぇ、俺たちにも教えて欲しいんだけど、あのクレアってどんな魔道士だったの?

あと一緒にいた男も知ってそうだったけど?」


「男はバーネット・ティーユー、賞金首だ」


トウヤの問いにセレスは答えた。


「賞金首、犯罪者か何かなの?」


「ああ。モンスターを操り一般人を大量虐殺したやつよ」


モンスターを操る、操作系の魔道士だろうか?


「賞金首になったから(ブラック)ギルドに入ったのか?」


「そう話を聞いたことがあるわ」


「じゃあ、クレアってやつも賞金首に?」


「・・・いいえ、クレアは行方がわからなかったの」


やはりクレアのことは話しにくそうだ。


「私で良かったら話しましょうか?」


ウィンリーが自ら話すことを申し出た。


だが、セレスを始め、リーシャもティアも黙ったままだ。


話が進まないし、トウヤ達にも情報を共有した方がいいので、沈黙をYesと受け取った。


「クレア・ケートフォックス、SS(ダブルエス)ランク、雷属性の変化・放出系魔道士。

一年ちょっと前から行方がわからなくなっていた、元パースレールのマスター候補よ。

セレスに並ぶ戦闘力の高さで、接近戦から遠距離戦まで器用に熟す前線型。

当時はセレスの次に有力な候補として有名だったわ」


ランク、属性、タイプ、そして接近戦から遠距離戦まで熟す。


なんだかポーラにも当てはまる感じだった。


「魔法の能力がポーラと似てるなって思ったでしょ?

実際、周りもそんな風に言って茶化してた時もあったわ。

そして二人も意識するようになって、お互い張り合いながらもランクを上げていったの」


よくあるライバルと言うやつだろう。今のところ良好な関係のように聞こえる。


「魔道士としての能力の差ははっきりしていた。クレアは前線での戦闘向き、

ポーラは後方での指揮や砲撃とね。そして候補の立場でも明確な差が生まれていた。

最も有力な候補はセレス、次点でクレア、ポーラはその候補には入ってなかったの」


「え!?」


今、ポーラはマスターをやっているので候補時代から高い評価を受けていたと思い込んでいたが、

どうやら候補内ではさほど高い位置にはいなかったらしい。


「クレアはすごい魔道士だったわ。一人で大体は熟せるほど能力も高く、クエストも一人で行くことが多かったわ」


一人の魔道士としてはとても優秀だった。


「だけど、一人で何でも熟せる彼女は仲間を頼ることはあまり無かったの。

そして仲間を頼らない姿勢はマスター向きではないとされ、候補から除外された。

すごく頑張っていた彼女はとても落ち込んだわ。なのに・・・」


ウィンリーは言葉に詰まりそうになるが、話を続ける。


「そんな落ち込んでた彼女に追いうつように、ポーラの新規ギルドの話が出てきたの」


「何でポーラに?」


「クレアより劣ると言っても大きな差は無く、指揮の能力、そして仲間からの支持があったからよ。

実際、ポーラ自身も能力が不足していることは自覚していたから、

そこをリーシャやファイゼンと言った仲間達を頼っていたあたりも評価されていたわ」


ギルドは一人では成り立たない。支援する仲間がいて初めて成り立つのだ。


「でもクレアはそれを信じる事は出来なかった」


「それって現実を受け入れられないだけじゃないの?」


トウヤの指摘は尤もだが、セレス達には気がかりがあった。


「・・クレアはポーラが媚を売ったって思ってるんだ」


セレスは重い口を開いた。


「どういうこと?」


「クレアとポーラは似ているのは魔法の能力だけで他は真逆なんだ。

見た目はポーラは美人と男達から言われるくらい整っていて、社交的な性格でしょ?

対してクレアは、そばかすに睨み付けるような釣り目。あまり人を寄せ付けるような性格ではない。

魔法に関しては似ているのにその他は真逆、そこが原因だとクレアは考えた」


さっき仲間を大事にする姿勢が評価されたと言っていたのでクレアの考えは正しいと言える。


「そしてクレアは局が魔法で秀でている自分よりも、可愛らしく愛想のいいポーラを選んだと思ったんだ」


「見た目と愛嬌が気に入られたと思ったのか」


「ええ」


わからなくはない。人の関わりにおいて見た目の印象は人を勘違いさせる。


イケメンがオタ趣味と言うとギャップ萌えとかで好印象だが、

ブサメンがオタ趣味と言うと嫌悪の対象になる。


同じ趣味でも顔が違うだけでこうも印象が変わるのは魔法世界でも一緒ということだろう。


「ねぇ、気になったんだけど」


ルーが話に割って入る。


「ポーラが捕えられたのはわかったわ。でもファイゼンは何で?

その話ならポーラだけ捕まえて復讐するんじゃない?」


たしかにポーラへの執着から連れ去って復讐しようとしてるのはよくわかった。


だがクレアはファイゼンも一緒に連れ去っている。


「ああ・・・私達も噂だと思っていたんだけど・・・」


今度はティアが説明してくれた。


「クレアはファイゼンに惚れ込んでいるのかもしれないんだ」


「え!?・・・ええ!?」


セレスとリーシャが無言で頷く。


「ああ、惚れてるファイゼンがポーラ推しなのも気に入らないのかもな」


個人的な理由だが納得は出来た。


「ま、まあ、あいつも一応サブマスが出来るほどの人間だ。あいつの能力も評価出来なくはない」


リーシャが咳払いをしながらフォローする。


普段の行いがあれなだけに、そこを信じきれないのは本人のせいである。


「となるとポーラはクレアとバトってて、ファイゼンは何処かに監禁されているのかもな」


「ああ、そして邪魔されないようにうちらには足止めがくるだろうな」


話しているうちに通路の終わりが見え、その先にはまた広い部屋が広がる。


人がいる気配はない。だがさっきのように気配を消しているだけかもしれない。


先頭を歩くセレスがデバイスを取り出す。


それを合図に全員、装備を整え戦闘に備える。




「ああ!ファイゼンくん。あなたはあの女に(たぶら)かされてるだけで、間違えてしまったの。

大丈夫。私が目を覚まさせてあげるわ。だから・・・今はおやすみ」


「噂には聞いていたけど、本当だったのね」


声を聞くと共にクレアはジトッとした目で睨みつける。


カプセルケースだろうか?蓋が透明で中にファイゼンが寝ていることがわかる。


「あんたが幼馴染みだから優しくしてあげてただけなのに、

それを逆手に(たぶら)かすなんて、その下品な身体も使いようね。

羨ましいわぁ、腰を振って愛想振りまいてればいいなんて」


「・・・わたしはそんな手を使った覚えはないんだけどね」


「覚えがない?普段からやりすぎて記憶にも残ってませんって?羨ましいわぁ」


ポーラが何を言っても無駄のようだ。


「私にもそんな下品な身体と腰を振って誘ってればいいだけの顔があったなら、

こうはならなかったでしょうね」


「・・・あんた、本気でそんなこと思ってんの?」


「ああ!それしかねぇだろ!!実力の劣るあんたが、私に勝てるのはそこだけだからな!!」


実力が劣る。そこはポーラもわかっていた。


現に模擬戦の勝ち数や高ランククエストの達成数はクレアの方が上だった。


だから戦力としての能力よりも、他の仲間を頼り、協力していく形で勝るように工夫した。


それを身体や見た目のせいにされたくはない。


「さあ・・・私とあんたの本当の決着をつける時が来たのよ。

あんたを殺して、愛する人を奪い返して、私を捨てた局も全てぶっ壊してあげるわ!」


「そんなの・・・黙ってやらせるわけないでしょ!」


ポーラはデバイスを取り出し、クレアに刃を向ける。


まだ勝った事のない相手を一人で倒すという不利な条件。


でも逃げることは出来ない。


いいえ、逃げたくない。


「私の全てを賭けてでも、あんたを止めてみせる!」


一気に互いの距離を詰め刃を交えた。




「何も・・・ないのか?」


トウヤはキョトンとしてしまった。


広いホールを警戒しながら探索したが何も起こらないし、誰もいなかった。


「仕掛けてくると思ったんだけど・・・」


ティアも予想外の状況に戸惑っている。


「念のため、奥まで調べるよ。最低限二人。単独で動かないでよ」


セレスが指示を出しながら中央の奥を調査するため進む。


セレスと共に動くのはティア、リーシャだ。


右側をミナ、ルー、リンシェンと調べていた。


そして左側はトウヤとリリスで調べていた。


「このまま進んで問題ないいじゃないか?」


気配もない。何もない。これ以上の調査は時間の無駄のように感じていた。


「念のためだ。ぶつくさ言ってないでしっかり調べろよ」


リーシャがトウヤに注意する。


「でも本当に何もないぞ?」


「・・・」


「さっさと進もうぜ」


「・・・」


返事が無い。


「おい、リーシャ?」


「・・・」


「リー・・!?」


「トウヤ!」


目の前が歪むのと同時にリリスの声が聞こえる。


「罠か!リリス!!」


リリスがいた方へ手を伸ばす。


「トウヤ!!」


なんとか手を掴むことが出来た。


(くっ!離すか!!)


リリスの手をしっかり掴むと、目の前が真っ暗になり何処かへ落ちて行った。


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