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幻想冒険譚:科学世界の魔法使い  作者: 猫フクロウ
黒の反逆者たち
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融和

激しい炎は数分でトカゲの干物を作り上げた。


そしてクルルは・・・


「♪・・・♪♪・♪~♪♪・・♪~♪♪♪」


歌声が聞こえる。無事のようだが声が弱弱しい。


炎の魔人(イフリート)と思われる影が消えると、今度は大きな炎の翼が現れた。


不死鳥(フェニックス)・・・超回復が得意な幻獣だ!」


炎の魔人(イフリート)で燃えた身体を不死鳥(フェニックス)で回復させるということだろう。


「みんな、シールドを解く。熱波から身を守るんだ」


全員が頷くのを確認すると、ミナはシールドを解いた。


シールドが解けると同時に焼けつくような熱さを感じる。


魔法で肌が焼けることは防げても、熱い空気の感じは伝わってくる。


トウヤは氷と風で気温を一気に下げる。


部屋の空気が冷えたことを確認したのか、そのタイミングで不死鳥(フェニックス)が輝きだした。


煤の塊のような場所から、クルルの姿が現れた。


「まさか・・・身体が本当に燃えてたのか?」


「ああ、炎の魔人(イフリート)の融合は諸刃の剣だ。不死鳥(フェニックス)での回復が大前提で使っているんだ」


それでも、身体が燃える痛みは記憶として残り、クルルを苦しめる。


「なんて・・・残酷な能力なんだろう」


身体が燃える恐怖はトウヤには想像が出来ない。


そしてその恐怖を受けてでも使ったクルルの気持ちも想像できなかった。


「なんで・・・こんなになるまで・・・」


「・・・なんでって・・・信じたからよ」


気が付いたのだろう。返事が返ってきた。


「クルル!大丈夫なのか?」


「うん、不死鳥(フェニックス)のおかげでね」


意識が戻ったことを確認すると、不死鳥(フェニックス)は消えていった。


「トカゲの兵器は?」


「セレス達が後始末をしている」


トカゲ型生体兵器は生体部分が干物状なったおかげで、核と思われる機械部分が丸わかりだった。


そしてそれを守る体を失ったことで簡単に破壊することが出来た。


「クルルのおかげでほとんど苦労しないで倒せたよ」


「うん、でも私はこれまでよ」


「え?どうして?」


炎の魔人(イフリート)不死鳥(フェニックス)、どちらも大量の魔力を消費するし、

火傷は回復出来ても疲労なんかは回復出来ないんだよ」


理由はミナが教えてくれた。


「そ、だから私はこれでリタイアするわ。あとをお願いね」


「あ・・・ああ」


この後、どれくらいの強敵が待ち構えているかわからない。


ポーラ達が連れ去られて数分で片付いた反面、クルルという強力な戦力を失うことは良いと言えない。




シャン!


複数の鈴が鳴る音が聞こえると、体に淡い光が纏われた。


「厄除けの(まじな)いよ。私も星歌(ほしうた)の君と一緒にリタイアするわ」


アーニャはそう話すともう一度鈴を鳴らした。


「ああ、そうか。クルルはギルドの魔道士じゃないから局で転移出来ないのか」


「え!?じゃあいつもどうしてたの!?」


「・・・ポイントまで自分で移動していた・・・」


通常の魔道士なら局の転移魔法でその場で一気に帰還することが出来るが、局の支援が無いクルルは、

帰還するために局が指定したポイントまで移動してから転移魔法で帰還していたのだ。


つまり今のままでは敵陣で動けないまま放置、または誰かが抱えて移動しなくてはいけない。


そこでギルドの魔道士であるアーニャが一緒に連れて帰ろうと申し出たのだ。


そうすることでアーニャと一緒に転移魔法の対象にすることが出来る。


「私の仕事は支援、ここで(まじな)いを使うくらいしかなさそうだから、連れて帰るわ」


「ああ、ありがとう、アーニャ」


セレスが提案を受け入れる。


ここはマスター候補で仕切る立場になるセレスの判断が妥当だろう。


「ごめんなさい、面倒をかけてしまって」


「いいえ、私がここでリタイアすることで、護りを気にしないで済みますし」


アーニャがクルルの体を支え立ち上がる。


「じゃ、みんな。しっかりポーラとファイゼンを取り返してきなさいよ」


アーニャが残るメンバーを鼓舞する。


「ああ、成し遂げてみせるよ」


セレスが拳を突出し応える。


「クルルも、しっかり休めよ」


ミナの気遣いにクルルも手を挙げて応える。


転移魔法の魔方陣が現れると、二人の姿は消えていった。


「さあ、人数は減ったけど、奥へ進むわよ」


セレスは指示を出し、進む。


奥の扉に近づくと、自動で開いた。


あの無茶苦茶な炎でも、コロニーのシステムは正常通り動いている。


コロニーの堅牢さに感心しつつ、警戒しながら奥へ進んだ。




「ほ・・・星歌(ほしうた)の君って占いとか好きなんですね」


転移での移動中、アーニャはクルルに話しかけた。


「え?」


思わぬことを言われたクルルは返事に困る。


「ミオ・レンティーナって私のお客さんにいたんです。星歌(ほしうた)の君だったんですよね?」


「あ・・ああ。・・・ごめんなさい、騙すとかそんなつもりは・・・」


「いえ、変に気を使わず、ありのままを言えるように気遣ってくれたんですよね?

それに貴族が来る占いとか変な噂が流れるとパニックになってしまいますし」


「それもあるけど・・・私自身すごく興味があったの。

よく当たるって噂は聞いてたし、私もいろいろ迷ってた時期でもあったし」


「こ・・・今度は変装しないで来てもいいですよ」


「え?」


「だから!次来るときは変装しないでいいですって言ったんです!」


「いいの?」


「は・・・はい・・・私の占いで喜んでくれるなら」


「やった!行く!ぜっっったい行く!」


星歌(ほしうた)の君にとって不幸な結果でもちゃんと言いますからね」


「もちろん!あ・・・それと、一つお願いがあるな」


「な、なんですか?急に!?」


「クルルって呼んで」


「え?」


星歌(ほしうた)の君じゃなくてクルルって呼んで」


「ええ!?ダメですよ!そんなこと!」


「じゃあ、今貴族の権限使っちゃお。クルルって呼びなさい」


「はあ!?そんなの酷いですよ」


「ダメ?」


「・・・いいんですか?他の人達が黙ってないんじゃ・・・」


「私が黙らせる!信じて!」


「じゃ・・・じゃあ、よろしくお願いします・・・ク・・・クルルさん」


クルルは目を輝かせながら笑い出す。


「よっしゃあ!パースレール一人目ゲットォ!」


疲労で動きづらいはずだが、高らかに拳を上げるクルル。


その仕草に思わず笑ってしまうアーニャ。


「これからもよろしくね、アーニャ」


「は、はい、クルルさん」


思わぬところからクルルのパースレールの友人第一号が誕生した。


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