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幻想冒険譚:科学世界の魔法使い  作者: 猫フクロウ
黒の反逆者たち
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旧友

「知り合い・・・なの?」


なぜ動揺し、戸惑っているのか理解できないトウヤは問いかけた。


「ええ・・・私達の仲間だったクレア・ケートフォックス。

元パースレールマスター候補の一人だった人よ」


トウヤの質問に答えてくれたティアは相手の事を教えてくれた。


「ポーラとセレスだけじゃなかったんだ」


「ええ、私とポーラが最有力と言うだけで、候補は何人かいたの」


続けてセレスが説明する。


「でも一年ほど前から行方がわからなくなっていたんだ。

まさか(ブラック)ギルドにいたなんて・・・」


ファイゼンも説明しながら動揺と同時に心配を隠そうとしていた。


ファイゼンも、リーシャもセレスもティアも、アーニャまでも知る、

ポーラとクレアの関係は大きな壁を隔てて対立している。


「つまり・・・全員敵でいいんだよな?」


(ブラック)ギルド。局の管理外に属する無法者集団のギルドのことだ。


目の前にいる集団はそう呼ばれている集団に属していると考えるのが普通だ。


「ええ。・・・ってトウヤくん?」


なぜか前に歩き出すトウヤをティアは呼び止めようとした。


「このゲンボウはあんた達の仲間か?」


「なに?このガキ。そんな走るしか能の無い無能が仲間なわけないじゃん。一時的に手を組んだだけよ。

そいつは大会とマギアアークを壊したい、私は大会に参加するあんた達を壊したい。

目的は似てるから協力してあげたの。

もっとも、あんな作戦で壊せると思ってなかったから、こっちはこっちで勝手にやらせてもらったけどね」


手を組んだ、つまり共犯者と見ても問題ないだろう。


「たぁだぁ・・・他の連中は私の目的より、それで手に入るオマケが欲しいみたいだけどねぇ?」


囲んでいる連中の大部分は男だった。そして局の魔道士は女が多い。


魔法が使えなくなり、動けなくなった女魔道士を、下品な男達が何を求めるかは想像するのも簡単だろう。


「下種が・・・」


アーニャは思わず本音をこぼしてしまった。


「あっひゃっひゃっ、局の魔道士でも一人の力は俺らと変わらねぇ。

なら数が多い方が勝つのが当たり前だろ。

その下種に可愛がってもらわないと生きていけないようにしてやんよ、ひゃっひゃっひゃっ」


一人の笑い声が数人の笑い声に、そして全体に伝わっていく。


「相変わらずの下種ぶりね。ポーラとファイゼン以外は好きにしていいわよ」


狙いの中にファイゼンが入っている。ということはあの噂も・・・


そうセレスが考えているうちに奇声をあげた集団が迫ってきた。


「戦闘を!!舐めてかかちゃダメよ!!」


ポーラの指示で全員戦闘態勢に入る。だが・・・


「どけぇぇぇ!!!」


トウヤの叫び声と同時に空気が震えるような寒気。


そして一気に意識を奪われそうな感覚が全体を包んだ。


(これは!?)


何をしたか理解すると同時に周囲の集団がバタバタと倒れていく。


「気当て!?これほどまでの・・・」


クレアも何をしたか理解していた。


魔力を発する時に強い怒気や殺気を乗せて発することで、相手の気分を害する方法。


力の差が小さければ威圧感や居心地の悪さに繋がるが、大きいと失神する。


それが気当てと呼ばれている(はつ)の一種だ。


気を失った連中はAランクからSランクまでいたはず。


それだけの連中を一瞬で失神させたということは、トウヤはS+相当と言える。


ポーラ、セレス、リーシャ以外にも、こんなガキの伏兵がいたことにクレアは驚いた。


驚いたのも束の間、トウヤが一瞬で目の前に移動していた。


(蹴りか!)


瞬時に攻撃方法を見極め躱そうとするが、その足は誰かに掴まれ、そのまま投げ飛ばされた。


「油断しすぎだ」


「ええ、ごめんなさい、バーネット」


クレアは謝罪の言葉を言うと同時にトウヤを確認した。


(あの子はチューブラインを駆け上がった子。相当魔力を使い果たしているはずだが、

あの気当てに今の動き。まだ戦力として見ても問題なさそう。となると少し分が悪いわね)


クレアは頭の中で戦局を組み立てる。


「早めに戦力を分断させるわ」


「わかった」


そう言うとバーネットは何処かに合図を送った。




「トウヤ!」


投げ飛ばされ、宙を舞っていたトウヤはクルリと回り着地した。


だが・・・


トウヤの息が上がっている。


チューブラインを駆け上がり、さっきの気当てで相当魔力を消耗しているのだ。


「なに一人で突っ込んでるのよ!」


ルーがトウヤの行動を責める。完全なスタンドプレーだ。ルーの言い分も解かる。


「あいつはゲンボウと手を組んだ仲間。ならあいつもミイナを死に追いやった張本人だろ!」


やはり復讐心がトウヤの心を縛っていた。


「だからって・・・」


短い間だったとはいえ、ミイナと仲良くなれたルーも気持ちは理解できる。


「あいつに何をしたってミイナが死んだ事実は変わらない。

君のその先走った行動で他が死ぬことだってあるんだぞ」


ミナの言葉はトウヤに深く刺さった。


復讐心で行動しても死者は蘇らない。むしろ今生きている仲間に危険が及ぶ可能性もある。


「じゃあ・・・ミイナは浮かばれないのか?」


「あの子が守りたいものが無事なら浮かばれるんじゃないかな?

まあ、生き返った時にみんな無事なことが確認出来れば、あの子は満足するよ」


一番付き合いの長いクルルが諭す。


恨み言を並べても何も良くはならない。むしろ今ある大切な物を失うかもしれない。


難しいが割り切って前へ進むしかないのだ。


(やっぱり、大したヤツだな)


昔失った大切な人をふと思い出した。


彼女のようになりたい。そう願ったはずなのに、自分はまだ昔のままだった。


変わる難しさ、目指す物は果てしなく遠かった。




どこからか地鳴りが聞こえる。


ここは宇宙に浮かぶコロニーの中なので聞こえるはずはないが、そのような音が聞こえる。


“ギャバアアウ!”


奇妙な鳴き声と共に大きなトカゲが数体現れた。


「これって・・・アークを引いてたトカゲ型生体兵器!?」


「いや、もっと大きかったはず。まさか小さいのもいるの!?」


自分たちより大きいトカゲ型生体兵器に目を奪われて、足元の注意が無くなったその時。


“ワゥオオーン”


二体の獣型の生体兵器に気付くのが遅れてしまった。


「しまった!?」


ポーラとファイゼンは咄嗟に身を守ろうと腕を出したが、

獣型はその腕に噛み付き、引きずるように走り続ける。


「ポーラ!ファイゼン!!」


急いで助けに向かおうとしたが、それぞれ転移ゲートのようなものに引きずり込まれ消えていった。


「安心しな!二人は私のゲストだ、丁重にもてなしてやるよ。

それよりも、お前たちは自分の身でも案じてるんだな」


クレアの合図と共にバーネットから何かが放たれた。


“ギャバ!ギャワアア!!”


もがき苦しむようにトカゲ型は暴れ出すと噛み付いてきた。


「待避!」


クルルの合図と共に避難するが、噛み付いた先には倒れたままの連中がいる。


「助けないと!」


「待って、トウヤ。あいつらは(ブラック)ギルドの人間。常に生か死かの賞金首もいるわ。

そんな人間を助けても誰かに殺されるだけ。ここは見切りをつけるのよ」


直接手に掛けたわけではないが、トウヤ自身が死を招くようなことをして、あいつらは死んでいく。


過去に何人も殺した経験があるはずなのに、この魔法世界での生活で、

いつしか死を嘆くようになってしまったようだ。


そうこうしているうちにクレア達は姿をくらました。


「そんなことよりこのトカゲどうするのよ!」


トカゲ型がこちらを敵と判断したのか、攻撃を仕掛けてきた。


ポーラとファイゼンを連れ去られたので、こちらは10人。


非戦闘員のアーニャを除く9人でこの6体のトカゲ型生体兵器を相手しなくてはならない。


リリスが魔法で石化させようとしたが石になった箇所を切り落として、力づくで叩きつけてくる。


石化で切り落とすと同時に再生されるため、攻撃が止まらない。


「リリス!!」


リリスの体を引き、攻撃を躱す。


かろうじて砂化のほうが勝ったようで攻撃は消えたが、大量の砂を被ってしまった。


そこの生体兵器がアークを引いたヤツと同等の力を持っているならかなり厳しい戦いになる。


さらに待ち伏せをされたということはこの先も戦闘は続くことが予想できる。


連れ去られた2人を救出するまで時間もかけられないし、たどり着けるかも怪しくなってくる。


トウヤ達はとても不利な状況に追い込まれていた。


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