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幻想冒険譚:科学世界の魔法使い  作者: 猫フクロウ
黒の反逆者たち
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駆け上がれ!

激しい雷に包まれた閃光が駆け上がる。


「ちくしょう!」


叫び声と同時に隔壁を破壊する。


破壊した先には円柱状の空間がまた広がる。


破壊と同時にレーザーで狙い撃ちされるが、即座に躱し無視して上へ駆け上がる。


「ちくしょう!!」


また八つ当たりのように隔壁を破壊する。


「トウヤ!まだ先があるから、魔力を無駄使いしないで!」


ポーラが警告するが聞こえているか怪しい。


チューブラインの中はメンテナンスの為に広い空間が広がっている。


さらに外壁部分には階段が設置されていて、一本の通路として繋がっている。


そして500m毎に壁で区切り、空間を仕切っていた。


今回緊急事態ということで、隔壁を破壊してもお咎めなし。


さらに防衛システムの破壊も許可されている。


なので隔壁を破壊するのは問題ないが・・・


なかば八つ当たりのような破壊。そして必要以上の魔力の放出。


まだこれからだと言うのに、この状態はあまりよろしくない。


だが、わずか数分で高さ10000m手前まで進めたのはありがたい。


そしてこの先は・・・外壁を挟んでいるとはいえ、宇宙空間に入りつつある。


冷静さを失えば死に繋がる危険地域だ。


「10000m超えます!」


ウィンリーの連絡と共にトウヤは隔壁を破壊する。


「うぐっ!?」


さっきの隔壁辺りまで、ある程度空気を流し込めるようにしていたのだろう。


だがここからは危険地域。


流れていた空気も無くなり、呼吸も難しくなってくる。


本来防護服を着た状態でいなければならない場所にトウヤは生身で入ったのだ。


「はあ・・・はあ・・・・・はあ・・・・・・」


外壁際の通路に降り立ち、息を整える。


魔法で身体を守れるが、呼吸までは守れない。


そして少し身体が軽い気がする。


宇宙空間へ近づいていることが実感できる。


そしてこの先はありがたい事に隔壁の数が減っていく。


隔壁が減れば(かけ)で一気に進むことが出来る。


つまり危険地域を一気に抜けることが出来る。


だが・・・


まだ息が整わない。


急がないと、また落とされたら意味が無い。


焦れば焦るほど息が上がってしまった。


「うにゃああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」


突如猫のような雄叫びが響く。


それと同時にしたから突き上げられる暴風が起こる。


「リンシェン!?」


下から風が吹いたおかげで空気の量が増え、呼吸がしやすくなった。


(なるほど)


リンシェンが送り込んだ空気を即座に(そり)で箱を作り固定。


これで呼吸が楽になる。


「リンシェン!!」


飛び上がったリンシェンを捕まえると即座に(かけ)で飛んでいく。


「おみゃあは飛ぶことだけ考えてろにゃ!」


リンシェンは風を集めてドリル状にしている。


隔壁を破壊する役はリンシェンが引き受けるというこどだ。


地上からこれだけの空気を風として持ち運び、役割を分け進みやすくする。


頭の切れるリンシェンに感謝した。


「一気に駆け抜ける!」


魔力を温存したお陰でここから先は(かけ)で一気に行けそうだ。


地上10000mから300000m、つまり残り290km。


約15分少々の活動には問題ない条件だった。




「うごけ!うごけうごけ!!ちくしょう!!何で動かないんだ!」


ゲンボウは焦っていた。


計画が狂いまくっている。


変な魔道士が自爆でアークの落下を阻止。そしてチューブライン内を別の魔道士が高速で移動中。


落下が阻止されることも、すぐに追手が来ることも、まさかこんなに早くやられるなんて想定してなかった。


チューブライン内の防衛システムを動かして迎撃、同時に再度落下を進めなければ。


しかし機械に詳しいわけではないので自由に動かせない。


早く何とかしなければ、焦れば焦るほど動かせなくなっていく。


「引っ張ってた生体兵器が消えたんだ、動くわけないだろ」


「ああ!?またいたのか!?」


突然現れた仲間の女に八つ当たりしてしまった。


「とんだ作戦だな。穴だらけでボロボロじゃないか」


「でめぇ、何しに戻ってきた」


「あの方から伝言を伝えに来ただけだ」


「なに?なんだ、早く言・・・」


突如視界が反転した。


「え!?」


「あの方からの伝言、お前はもう用済み、だそうだ」


女がニタッと笑う。


自分の身体が見えた。


女はゲンボウの首を切ったのだ。


「じゃあ~ねぇ、走るしか能の無いゲンボウさぁ~ん」


(ああ・・・あああああああ)


ゲンボウは声にならない叫びを上げる。


「あはっあはははぁ!」


女の笑い声が響き渡る。




音速に近いスピードで進むこと20分。


予想よりも時間がかかってしまったが何とかアークまでたどり着いた。


宇宙に近い環境は魔道士でも辛かった。


「ポイントをトウヤ君の傍にセット、転移します」


ウィンリーの合図と共に魔方陣が現れ、ポーラ達が転移される。


「トウヤ、大丈夫?」


「ああ・・・」


「リンシェンもお疲れさん」


「うにゃあ・・・寝るにゃ」


「寝るならリタイアしろ」


寝転がるリンシェンの頭をリーシャは軽く蹴った。


「うにゃあ!酷いにゃ!頑張ったにゃ!」


「トウヤに連れて行ってもらっただけだろ」


リンシェンは(かけ)で飛ぶトウヤの背中に乗り、所々現れる隔壁を破壊しただけなので、

トウヤよりも消耗はしていない。


と言ってもリンシェンの風の操作で空気が確保出来たのは大きい。


常に風の渦を確保しながら破壊用の風を操作。十分な功労者だ。


今ここで局へ戻りリタイアしても誰も文句は言わないだろう。


「みんな、ここはもう敵の拠点内。気を引き締めてね」


チューブラインからの入り口の扉をクルルが開け、中へ進むよう促す。


そこにはアークの受付でもある広いロビーがあった。


障害物が少ない広い空間。狙われているわけではなさそうだが、油断は出来ない。


ふと正面から何かが飛んできた。


全員が構えたが、飛んできた物は手前で落ちて転がった。


「ひ!?これ、人の首!?」


先頭を歩いていたポーラが驚くと同時に顔を確認した。


「え!?ゲンボウ!?」


「はあ!?主犯が殺されたのか!?」


動揺する一向を他所に、どこからか人が現れた。


「久しぶりだね、お前たち」


声の主を確認した。


「え!?」「うそ!?」


「まさか!?」


驚きを隠せないのはポーラ達パースレール関係者だった。


「誰なの?」


「!?ねぇ!囲まれてるわよ!」


周りを確認すると、いつの間にか複数の人間に囲まれていた。


「あいつ、手配書で見たぞ!確か黒のやつらだ!」


こちら12人に対して相手は100はゆうに超える人数で囲まれた。


クルル達は構えたがパースレール組はまだ動揺が隠せなかった。


そして一番動揺しているのはポーラだった。


「・・どうして・・・どうしてそっちにいるのよ!クレア!!」


「どうしてだって?そんなの決まってんじゃない・・・

お前から全て奪い尽くすために、地獄から舞い戻ってきたんだよ、ポーラ!!」


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