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幻想冒険譚:科学世界の魔法使い  作者: 猫フクロウ
風塵遮視-サンドアウト-
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外伝:メイドインジャパン2

日本という国には魔法の知識は無いが、絵空事で魔法の認識が強い。


漫画、アニメ、ゲーム、娯楽を中心に幅広く充実している。


トウヤもそこから魔法のイメージを貰った人間だ。


「しかしこんなに流行るとは思わなかったなぁ」


「やってることは転売だがな」


トウヤが日本から持ってきた漫画やゲームを、リンシェンが勝手に量産。


そしてそれで商売を始めたら大儲け。


著作権などは魔法世界にまで及ばないのをいいことに、

リンシェンの独断が莫大な利益を生んでいた。


また中には戦を想定したゲームもあることから、教育の現場まで求められるくらいである。


「リンシェン、少しは控えろよ」


「うにゃあ、にゃに寝ぼけたこと言ってるにゃ。まだまだ広めるにゃ!」


まるで利益を独占する悪代官だ。


「持ってくるのを止めるべきだな」


「まあ、私も手軽に見れて嬉しいんだがな」


魔法世界は争い事が多い影響か、バトル物の少年漫画は大人気だった。


「実際にはなかなか出会えないが、あり得そうでワクワクする展開だよな」


ミナのお気に入りは某少年が一流狩人を目指しながら、一流狩人の父を探す話だった。


「俺もよく見たけど、魔法の使い方が似てるよな」


「確かに。これを見たら君が簡単に魔法を習得出来たのも納得だな」


幾つかの作品には魔法に似た力を使う話があるが、この話は特に魔法の使い方と似ている。


地球人は知識は無くても、感覚で覚えているのだろうか?


「他にも兵士の能力が決まっていて、限られた戦力で戦うというゲームも面白いな」


「昔、地球でも戦争があって、そこで模擬戦のようなゲームも生まれたと聞くし、

仲間と連携してモンスターを狩るってゲームもあるようだ。

お金さえあれば地球で一生遊んで暮らせそうだな」


「その道楽も極めれば何か得られるのかな?」


「さあ?でも強欲な地球人はそれで満足しないかもな」


「あり得る…」


強欲さを能力向上に使えば超人など良い方向に進むだろうが、

そう簡単に済まないのは人間の(さが)なのかもしれない。


「そういえば君の“風打ち”の元となった漫画は無いんだな」


「あーあれお店で売ってないんだよね。人気が出なくて無くなったのかな?」


見たのは協会に引き取られた少し後。魔法が使えることを知り、練習していた頃の物だった。


中古本を扱うお店で、立ち読みが出来たから見ただけで、

人気があったかどうかまでは気にしていなかった。


「今度聖地へ行ってみるか。もしかしたら見つかるかもしれない」


「聖地?神聖な土地なのか?」


「違う違う、そう呼ばれているだけで、普通の街だよ」


思わず笑ってしまった。


「少し古い物から新しいものまで、その手の物を専門的に扱う店が集まった街があるんだよ。

そこに行けばだいたいは手に入るから聖地なんて呼び名で言われているんだ」


「…行ってみたいな。ついて行っていいか?」


「え?辛い環境なのにいいのか?」


「魔法で賄える時間だけだ。長居するかどうかは行ってからだ」


「ま、いいか。念のためデバイスだけは持ってきなよ?探すの大変だし」


「ああ、わかった」


意外な申し出だったが快諾した。


まさか魔法世界の人間を日本に案内する日が来るなんて…


ちゃんと信頼が得られれば普通に受け入れられる。


地球、というか日本もそうなればなぁと思わずにいられなかった。







「なんか…いろんな人にジロジロ見られるんだが、そんなに変な格好かな?」


「いや…理由はそこじゃないよ」


トウヤはミナを連れて日本に来てる。そこには何処からか聞きつけたルーも一緒にいた。


そしてこの二人を連れて歩くことは、この街ではとても目立つ行為だった。


トウヤとミナは黒、茶と髪色が街の人間と変わりない。だがルーの薄い金色はとても目立っていた。


そしてそれに気づいた街の人間は顔を見てさらに驚く。


見た目からして“お嬢様”という言葉が似合いそうなルー。


そしてその隣には人形のような顔立ちのミナ。


服装は一般的でもどちらも顔だけで目立つ見た目である。


「いつもの、パースレールのあれと思ってくれ」


「ああ、ここでもか」


「まあ、この国にも貴族はいないみたいだからね」


「そういうことだ。まあ、夜でもよかったんだが、そっちはそっちで危ないからな」


「危ないって、何か出るの?」


「……女の子を使って金儲けしようって連中だ」


「???」


「…ルーはまだ知らなくていいよ」


ミナは理解したようだ。


年齢的にルーも知ってそうだったが、夜の街の近くに住んでたトウヤのほうが詳しかった。


当然、昼間でもそういう人たちに声はかけられる可能性は無くはないが、

しっかり断り、上手く逃げればいいし、力づくで連れて行かれそうになれば魔法で対処すればいい。


普通の女の子よりは警戒しないで良いとうのは非常にありがたかった。




「あ、あった。これだ」


目当ての本は大型店ではなかったが、小さな古本専門店にはあった。


「全十四巻揃ってるな。まとめて買っちゃおう」


トウヤは本を持ってレジへ向かった。


残ったミナとルーはそれぞれ本を数冊見て周っていた。


漫画。魔法世界にも存在するが、数十冊の長編は魔法世界では珍しい。


単に平均寿命の長さや、魔法世界特有の危険性も無いことが原因だろうか?


これだけ長い話を書き続ける。それだけでも幸せなんだろう。


「すごい、百巻を超えてるのもあるんだ」


笑いあり涙あり、一つの漫画でも様々な展開が広がっている。


「文化の知識が無くても、面白かったり驚くのは、根本的に違いが無いってことなのかな?」


ミナにとって、漫画はとても魅力的な書物だった。


「おまたせ、買えたからいつでも見れるよ」


「ああ。そういえばきみはどれだけの漫画を知ってるんだ?」


「どれだけって、ほんの一握りだよ。日本では読んでも読み切れないほどの漫画が存在してるし、

今も作られては消えている。全部を知ろうなんて不可能に近いよ。」


「そうなんだ。となると私も通いたいな、この街」


「ああ、探して自分のお気に入りを集めるといいさ」


漫画という文化は魔法世界でも受け入れられる。


漫画に国境はないと聞いたことあるが、魔法世界の国境も超える事には驚いた。


「ところで、ルーは?」


「え?そこにいるんじゃ…」


そこにいると思っていたルーの姿は無かった。


「まさか!?」


トウヤは最悪の事態が頭を過り、慌てて外に出た。


それを見たミナも最悪の事態を察し辺りを確認する。


街で目立っていたルー。それに目をつけた輩がルーを!?


いや、ルーは魔道士だ。力づくでやられても返り討ちにできる。


となると自らの意思で行ったってことか?


この世界の知識に乏しいルーを騙して連れて行く。あり得る。


即座に渡したデバイスの反応を確認する。こんな時の為に位置を確認出来るようにして正解だった。


「え!?店の中!?」


「うそ!?他にも出入り口があったのか!?」


小さな店だったので通路は限られていると思っていたが、

トウヤとミナが気付かない所にルーは行ったよだ。


急いで店内を確認するが、ルーの姿は確認できなかった。


「ん?なんだ、この布は?」


ミナは見慣れない布で通路が隠れていることに気付いた。


大きな一枚布で中央が切られ左右に分けられるようになっている。


確か…暖簾(のれん)と言ったものか?昔見たことがあったがここまで大きくなかった。


そして布には18という数字に丸と斜め線が入っていた。


何かのマークか?魔法世界では見ないマークだった。


暖簾(のれん)をかき分け中を覗くと、ルーがいた。


「こんなとこにいたのか」


「ひゃい!?」


変な声で驚き、慌てて読んでいた本を隠すルー。


だが並んでいた本を見て、どんな内容の本か察した。


「ああ、そっか。18禁の話してなかったね」


遅れて現れたトウヤの声がした。


「このマークは18歳未満禁止、つまり成人向けの内容を扱っているて意味なんだ」


「へ、へぇ~」


魔法世界では12歳で成人と扱うため問題ないだろうが、

実年齢14歳のルーにはまだ日本のルールでは早すぎた。


「まあ、読みたいならいいんじゃない?お年頃だし」


「違う!違うの~!」


泣き出しそうな声が店内に響いた。


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