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幻想冒険譚:科学世界の魔法使い  作者: 猫フクロウ
風塵遮視-サンドアウト-
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外伝:貴族のパーティ

貴族たちのパーティに興味は無かった。


いつも変わり者と避けていた連中も、この時だけは鬱陶しく近づいてくる。


それもこれもお父様が金や宝石といった高価な物を創り出すことに成功してからだ。


錬金術と呼ばれるようになった我が家の魔法は貴族たちをトリコにしていた。


ただの金のなる木の蜜のトリコになった醜い貴族は、

お父様の娘である私をどうやって嫁にするか必死である。


もっとも、錬金術で若い肉体を維持して生きている私が、

年齢が百以上も離れた糞ガキに興味を持つ理由もないし、

相手も百を超えたババアに興味を持つわけでもない。


糞ガキの興味は金だけ。誰がそんなやつらに興味を持つか常識で考えて欲しいものである。


誰に対しても愛想笑いもせず、邪険に追い払う姿に、空っぽの頭の糞ガキでも理解出来たようで、

次第に口説こうとするやつも減っていった。


ここまでくるとこちらも好都合。


パーティに参加だけして、会場の端にある机で錬金術の錬成陣を考えて過ごしていればいい。


参加だけしておけばうるさいババアの小言も減る。


もっとも、ババアもお父様も若さを維持するのも限界が近い。


いずれ自分と愛しの我が妹が、お父様の錬成陣を使い、錬金術の深淵へと近づくときがくる。


そのために今ある技術をより強固に、より効率的に仕上げなければならない。


そのための時間は人間の一生がいくらあっても足りないかもしれない。


だからこんなパーティに参加する時間も本当は惜しいのだ。


ほんと、貴族っていうのは面倒である。


「これ、もしかして錬成陣というやつですか?」


ふと声をかけられ、思わずチッと舌打ちをしながら睨み付けてしまった。


しかしその姿を見て驚くと同時に、そのような行為をしてしまった事を反省した。


「あ、あなた様は…すみません…」


「いえ、お気になさらず。それよりもとても優秀な方なのですね。

その錬成陣、今までのと比べるととても簡単そうに見えます。

効果は通常より二倍といったところでしょうか?」


「わ、わかるのですか!?」


「多少は。まだ勉強中ですが、あなた方の魔法にとても大きな可能性を感じています」


「あ、ありがとうございます」


人に興味を持たなかったので、いざ話すとなると緊張してしまった。


他の貴族を糞ガキと罵っていたが、所詮は陰キャの研究しか取り柄の無い女。


男との、しかも上流階級のお坊ちゃまとの会話を難なく熟すことは出来なかった。


「あ、まだ名乗っていなかったですね、申し訳ありません。

僕はキョウ・ネリウム。あなたのお名前をお伺いしてもよろしいですか?」


「わ、わたしはクラリス・パラケルスス…です」


「クラリス様、今度、僕とお茶会の約束をしていただけませんか?」


「え?ええ!?……わたしが…キョウ様と…」


「はい。そこで僕に錬金術についていろいろと教えてください」


「ええ!?ええ!?」


しどろもどろな自分の姿を情けなく思いつつも、どう返事すればいいのか迷ってしまった。


「キョウ!」


ふと後ろから女の声が聞こえた。


その声の主はキョウに似た容姿の女だった。


「キョウ、なにバカなことをしているのですか?あの女は関わってはいけません」


「しかしお姉様、あの方は」


「何が何でもよ。あれと関わっていたら名家の恥よ」


キョウは姉と呼ぶ女に無理矢理連れて行かれた。


だがキョウは気付かれないように、合図を送った。


人差し指を口の前で立てて、軽くウインク。


(お姉様には秘密で、また会いましょ)


その姿に年甲斐も無くキュンとしてしまった。


(な、なな!?なんなの!?この気持ちは!)


頬が少し熱くなってしまっているのがわかる。


自分の十分の一も生きていない子供に、こんな思いをするなんて…


忘れようと錬成陣の事を考えたが、全く集中できなかった。







「私、恋をしてしまったかもしれない」


思わぬ発言にステラは口にしたティーを吹き出してしまった。


「ステラ……」


汚物を見るような目で、ティーナは少し距離をとる。


「ああ、すまない。急にコイツが変なことを言うもんでつい…」


やや上の空なクラリスだったが、自分が何を言っているのかわかっているのだろうか?


長寿な一族且つ若さを維持する魔法で、見た目こそ二十代だが、

この場にいる女たちの実年齢は三桁になる。


「そ、その恋の相手を聞いていいのか?」


「十数歳の子よ」


「は!?」「へ!?」


思わぬ回答に頭の整理が追い付かない。


「いやいやいや、私達みたいなのならまさしも、お前は普通の人間だろ?

そんな年の離れた女に、その子が興味持つのか?」


「そうよね。老いは女の天敵よね」


「ちょっとズレてる気もするけど~、まあ若い子は若い子同士で惹かれる物よねぇ~?」


「やっぱりそうよね?若い方が好みよね?あんた達もそうよね?」


「何か変な方向に進みそうだが、若いだけが魅力じゃないと思うぞ?」


「え!?そうなの!?むむむ…やっぱりこの手の話はあんた達の方が詳しいわね」


「一応、人妻だからな」


「そうねぇ~種族の壁は感じるわねぇ~」


「種族、若さ…か…それとその子私の錬成陣に興味を持っていたわ」


「ほう、物好きだな。だが目の付け所はいいな」


「そうねぇ~錬金術は可能性に満ち溢れているからねぇ~」


「…そろそろ自分で試す時が来たかもしれないわね」


「どういうことだ?」


「人形で試してみた、転生よ」


ステラもティーナもあまりの発言に驚いた。


「いや、いいのか?それこそ、人の輪廻から外れそうだが…」


「あの子は私達とは違う天井の存在、その頂に進むためなら人の輪廻なんてどうでもいいわ」


「おい」


「やめておいた方がいいと思うわよ~?」


「そしたら…ルミちゃんも元に戻せるかもしれないわ」


「…転生すると体の呪いも消せるのか?」


「ええ、別個体だから消えるかも知れないわ」


「……そうか」


「なによ?」


「……ルミが喜ぶといいな」


「……」


クラリス自身は人の輪廻から外れても気にしない。


しかしルミはどうだ?


本人が望めばいいが、今のルミにそのような判断は出来ない。


望まぬ転生をさせてからでは遅い。


「……わ、わかったわよ。しばらくは私だけにしておくわ」


「私としてはお前にも控えて欲しいんだがな」


「それはイヤ!あの子と長くいる為にも若く綺麗な身体が必要だから。

それに転生すれば錬金術の深淵へ近づく時間も増えるわ」


「ふぅ~どうなっても知らないわよ~?」


「まぁコイツの力はまだ底が見えない。

自由に研究させることが我々の利となるんだから、出来る限り協力はするさ」


「あらあら~苦労しそうねぇ~」


「そ・れ・にぃ、あの作戦がそろそろ実行出来そうよ」


「本当か!?」


「ええ、二体もいい作品が出来たわ」


「二体も~?大丈夫かしらぁ~?」


「心配なら一人は人間にしてみる?ステラちゃんがいい魔道士見つけたんでしょ?」


「ああ、あの先生か。なら数人指導してからがいいな」


「それはどれくらいかかりそう?」


「長めに見て二年だ」


「ふぅん、悪くないわ。こちらも二年で完璧に仕上げてみせるわ」


「あらあら、もうすぐ変えられるかもしれないのね」


「ああ、だが油断の無いように継続してくれ」


「楽しみねぇ~あの害虫たちを駆除できる日がくるなんてぇ~」


「あの豚どもを徹底的に潰すわよ」


「頼もしい限りだ。各々の役割をしっかり果たしてくれ」


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