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幻想冒険譚:科学世界の魔法使い  作者: 猫フクロウ
風塵遮視-サンドアウト-
102/303

わたしは人形ですから2

淡い光が街中を包み、淡く輝いている。


そして街の数カ所から光のような柱がそびえ立つ。


街をアークから守る魔法、その魔法陣が発する光だ。


目で確認出来るとわかったが、この魔法陣は街中を周るように徐々に動いているのだ。


位置を特定され破壊されるのを防ぐためだろう。


そしてその中心となるのがアークの中心にあるチューブラインの真下、

ここには魔力を溜める鉱石が置かれ、ここから街中にある魔法陣がに送られ、効果を発揮する。


そのように動く魔法だったが、今回中央の鉱石が破壊され、魔力を送ることが出来なくなった。


そこで局の魔道士たちを集め、中央、そして街中の魔方陣へ魔力を送り込み魔法を起動させる狙いだ。


魔道士数百人分、それだけ大掛かりな魔法ということは、絶大な効果であることは間違いない。


「さすがに宇宙へ行くための魔法は考えたことなかったな」


「普通は考えないわよ」


「まあ、君の魔法なら創れそうだがな」


「あー、地球では宇宙服で身を守れるみたいだから、そんな魔法を創れば行けそうだね」


「相変わらず無茶苦茶な能力だよね」


「今回はあのお人形がやってくれるんだ。下手な出来心で命を無下にしないことだね」


「…昔、トウヤを殺そうとしたやつが言うセリフか?」


「ばっ!?リーシャ!いつまでも蒸し返さないでよ」


大きな円状の魔方陣を囲うように、トウヤ達は手を繋ぎ立っていた。


この状態で発を行うことで魔方陣に魔力が送られる。


一つの陣に数十人。これでミイナを送り出し、生体兵器を破壊してもらう。


これでアークの落下を一時的に阻止し、その隙にアーク内へ進み、コントロールを奪取する。


生体兵器を破壊し、アークを制圧すれば今回の騒動は収まる。


首謀者であるゲンボウは確保出来ればなお良し、

出来なくても世界中に手配且つ捕縛系クエストの対象になり、捕まえるのも時間の問題だ。


「うにゅにゅ、ミイにゃの魔法が気ににゃって集中出来にゃいにゃ」


「確かに。生体兵器って結構デカいんだろ?大丈夫かな?」


「人形の心配をしても無駄よ。あんなの人間じゃないんだから」


アーニャの物言いにトウヤは怒りを覚えた。


「なんか…あんたがいつも一人じゃないと仕事出来ないのがよくわかるな」


「は?お子様が何言ってんの?」


「ミイナはあんたより人情味が溢れた人間だよ」


「はは、人形と人間の区別がつかないなんて、とんだお子様ね」


「何を基準に人間と人形を分けてるんだ?」


「そんなの作られたか産まれたかの違いに決まってんじゃない」


「あんたも父親と母親から出来ただけの存在だ。マスターの手で()み出されたミイナと変わらないだろ」


「そんなの…」


「知識もあり、感情も意思もあり、誰の為に、守りたいと思いやりる気持ちもある。

傷つけば血も出るようだし、人知れず悩むこともある。何ら人間と変わらないだろ?」


「だからそれは…!?」


ファイゼンが手を出し、アーニャの物言いを止める。


「人を見た目や出自で判断しない、お前らしい考えだ。あの子も幸せだな」


人形として産み出された命でも、彼女は自らの意思と判断で生きている。


それはとても人間らしいとトウヤは思っていた。




パイプラインの方へ目を向けると、何かが上に進んでいた。


「あれ…ミイナかな?」


翼の様な魔法を使い、上空へ進んでいる。遠くからでもかなりの速さで動いているのがわかる。


「ミイナ!自爆はやめて!!」


クルルの叫びが念話で届く。


「自爆!?どういうこと!?」


思わぬ単語に動揺が走る。不穏な単語を聞き、ミイナを知らなそうな魔道士まで動揺が伝わる。


「いくらわたしでも、宇宙空間では数秒しか生きられません」


ミイナの念話がクルルを通じて聞こえる。


「その数秒で破壊するにはこれしか方法が無いんですよー」


「でも、そんなことしたら…」


「大丈夫でーす!わたしは人形ですから、また復活出来まーす。

だから、この程度また気にしないでくださーい」


ガヤガヤと騒ぎ出す周りを他所にトウヤは声をあげずにいられなかった。


「ミイナ!!死ぬつもりなんて許さないぞ!」


トウヤの叫びに一瞬静まり返る。


「……死ぬんじゃないです。今の身体から新しい身体に乗り換えるんです」


「そんなの…今いるミイナが消える事には変わりないだろ!」


「今いるわたしが消えても、次があります」


「だからって今いるミイナを簡単に消すなよ」


「……幸せってこう言う事を言うんですね」


「え?」


「わたしはトウヤさんにも、クルルさんにも大切に思われている。

他人に大切に思われるって幸せじゃありませんか?」


人形だから、創られたものだからと邪険にされていた今までと違い、

ミイナは一人の人間として大切に想われることは初めてだった。


そしてそこから生まれる感情に温かさを感じていた。


これが、幸せなんだと。


「そんなの…私だって…」


知人が少ないリリスも、同じ思いを口にする。


「わたしも同じくらい大切に思えたんですよ?だからこのやり方を選べました。

わたしも…守りたいと思える大切な人たちを守る選択肢を」


ミイナの声が震えている。泣いているのだろうか?


「だから…だから、復活したらまた誘ってください」


ミイナは明るく言う。


「復活したら、一緒にチームを組んでクエストに行ったり、

また大会に参加したり、日常の何気ない話で笑ったり、仲良くしてください!」


そう言うとブツリと念話が切れ、話せなくなった。


「ミイナ!?」


「…念話を意識的に切ったようね。たぶん、もう…」


もう見守るしか出来ない。ミイナが戻ってくることを祈りながら。




大気圏を抜けると同時に周囲に空気の玉を作る。


この空気の玉が消えた時、それはミイナの死を意味する。


上空を確認し、アークを引いてる生体兵器を確認する。


大型のトカゲのような体に、機械的な背中。そこからチューブのようなものが体に繋がれている。


血液に代わる物をチューブ経由で流して生きているようだ。


つまりその機械を破壊すれば死ぬことになるが、生物兵器はそれだけじゃ済まない。


体の司令塔、つまり脳も破壊しなければ機械無しでも数分は生きているだろう。


そして…


トカゲの生体兵器はミイナを確認すると、戦闘形態に移行した。


周囲にミイナの顔くらいの大きさの玉を作りだすと、その玉を操作し飛ばしてきた。


(速い!だけど…)


生物としての知能は低いようで、動かし方は直線的だった。


ミイナでも躱すことは容易だ。だが魔力が多いのか数が多い。


チューブが激しく動くと生物兵器は体を激しく動かす。


動かした体が作り出した玉に当たると激しい爆発が起こる。


(自爆?いや…)


爆発で負傷した箇所は、見る見るうちに再生していった。


そして機械からチューブを通して何かが送られると、また生物は体を動かす。


まるで機械が生物兵器を無理矢理動かしているようだ。


そして負傷箇所は機械により無理矢理再生されていく。


その光景にミイナは憐れみを感じてしまった。


(同じ生物兵器として、いま楽にしてあげますね)


トカゲベースなので感情は無いかもしれない。でもミイナには苦しんでいるように見えた。


限界突破(オーバードライブ)!)


即座に終わらせ、支配から解放させる。


ミイナの目的と一致していた。


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