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幻想冒険譚:科学世界の魔法使い  作者: 猫フクロウ
風塵遮視-サンドアウト-
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人形たち

「うん、成功ね。うふふっ、我ながらいい出来だわぁ~」


目の前には藤色の髪をした少女が立っていた。


「あなたは317号…ミイナよ~」


「ミ…イ…ナ」


「あなたは特別な戦闘用の錬成陣を組み合わせて創った、傑作と言っていい、さ・く・ひ・ん。

私のために誠心誠意戦ってもらうわよ~?もちろぉ~ん、日頃の世話もねぇ?」


「はい…マスター…」


「ニイナ、この子の教育を任せるわ。しっかり調教してあげなさぁい」


「はい、マスター」


「ニイ…ナ…?」


「私は217号。通称ニイナ。あなたより先に出来ただけの人形だ。

これからマスターの生活を支える雑務を教える。すぐに準備をするように」


「はい……」


虚ろな目をしたミイナはニイナに連れられ部屋を出た。




○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○




「あう、やっぱりナナには勝てないですー」


ミイナは地面に横たわりながら文句を言った。


「お前のやり方は直線的だ。だから私のような劣化版にすら勝てないんだ」


ナナと呼ばれた少女は呆れたように言った。


「むー、わたしは本当にナナの上位互換なんですかー?」


頬を膨らませながらミイナは問う。


「お前、マスターの言う事が信じられないのか?」


「そういうわけじゃないですけどー、こうも力の差を見せつけられると自信がないですー」


「まだお前には経験が足りていないだけだ。」


「そうですかねー?」


過去の戦闘で片腕を失ったナナだったが、それでもミイナの攻撃をかわしたり転ばしたりと、

戦闘において秀でた姿を見せていた。


「知識や考え方はワークスで共有されている。後はそれ通りに動けばいいはずなんだがな」


「それでもナナは強いですー」


まるで駄々を捏ねる子供の様だった。


「うむ、なら私のやり方を少し共有すべきか?」


ナナは手を顎に当て考えたプランを出す。


「ナナのやり方がわかるんですかー?」


「私は戦闘特化型だ。他のワークスとは根本的な考え方が違うんだろうな」


「やっぱりー」


「少し待っていろ。お前が私を超えられるようにしてやる」


「わーい」


「ふっ、お前はマスターをしっかり守れるようにな」


まるで仲の良い姉妹のような二人の戦闘訓練は一時中断された。




○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○




「ああん!もうっ!何で死んでるのよ!!」


藤色の髪をした少女は叫んだ。


「ナナを守ろうとしてして共倒れとかありえない!!」


何かの箱を叩くような音が聞こえた。


音はしっかり聞こえるが目に見える景色は何か靄がかかったようで見えなかった。


(ナナ…)


目の前にいたはずの少女の名を呟く。


しかし声に出すことは出来なかった。


「頭の陣を書き直すべきね。今度はこんな馬鹿な死に方しないようにしなくちゃ」


自分は死んだようだ。


(守れなかったの?)


目の前にいた少女も死んだようだ。


「いい?あなたは私の人形よ。私のためだけに死ぬ気で生きるのよ。

でなきゃ、あなたに価値なんて無いんだから」


呪いのような囁きが聞こえる。


(ナナ…守れなくて…ごめんね)


もう二度と会えない、仲の良かった姉のような少女はもういない。


「ありがとう、頼んだよ」


少女の最後の言葉が忘れられなかった。




○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○




「ギルドの仕事をしたいですって?どうして~?」


「わたしは戦闘特化型でーす。常に戦場に身を置くことで戦闘の勘を鈍らせないようにしたいんですー。

なのでギルドの仕事、特に討伐系や暗殺系の仕事を出来るようにしてほしいですー」


「……」


「だめー……ですかー?」


「まぁ、戦場では戦場でしか知り得ない情報や経験があると聞くわねぇ?」


「はいー!それがマスターをお守りする力になれると思いますー!」


「ニイナ、メイドの数は足りてるわよね?」


「はい、充足しています」


側で仕えるメイドは淡々と状況を話す。


「最近創り過ぎたし~、愛玩用も創っちゃったからなぁ。

いいわよ、好きにしなさぁい。」


マスターは笑顔で返事した。


「やったー!」


そう言うとミイナは喜んで飛び出して行った。


能天気で感情がそのまま行動に出るのは相変わらずである。


「…マスター、進言をお許しください」


ニイナは深々と頭を下げ、マスターに問う。


「いいわよ、何かしらぁ?」


「最近、ミイナを自由にさせ過ぎではないでしょうか?」


「そうねぇ、頭の錬成陣が上手く動いてないのでしょうねぇ」


前回死んでから頭の錬成陣を書き直し、忠誠心を高めたはずだが、

あまり改善の兆候は見られていない。


「では……」


「でも他は上手く出来ているわね~。あの子が死ぬことで見えてくる欠点もあるしぃ。

だからあの子が戦い続けるのには、意味があるわねぇ?」


「しかしマスターを守ると言う使命は怪しいかと」


「最近は私の立場も良くなってきて~、物理的に守られるのはあなた一人でも十分なくらいよぉ?

だからあの子は死ぬことで私を守る情報を引き出す、そこに価値を見出してくれてるわぁ」


「…まさか次の構想を?」


「あらぁ?私の考えを見抜くなんて、さすがねぇ?」


「申し訳ございません」


「まぁ、最近はいろんな実験もできたし~、そろそろかなぁとは思うわねぇ」


「承知しました。マスターの意のままに」


「そ・れ・に~面白い子も見つけたし、ちょっと楽しみが増えたかなぁ?」


楽しみ…最近十歳の若さで街の短所を長所に改善させたというあの子だろう。


マスターが人に興味を持つのは珍しい。


あの子自身に興味を持ったのか…それとも能力か…


何でもいい。


全てはマスターの意のままに従うだけだ。


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