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第一話

どうも、初投稿の栗です。まだまだ雑なところもあると思いますがよろしくお願いします。


 人魔大戦。かつてこの世界を揺るがし、人間すべてを恐怖の底へと突き落とした大戦である。『魔王』の宣戦布告により始まり、かつて世界は崩壊するとまで思われた。しかし絶望の中で立ち上がった七人の人間がいた。彼らは『七英雄』と呼ばれ、かつて世界を救いだした。


 しかし、一度世界が救われても、実際に魔王を、そして魔族を滅ぼすことはかなわなかった。


  彼ら七英雄は『冒険者』と呼ばれる職業であった。その中でも七英雄がかつて得たSランクという絶大な栄誉を手に入れ、魔王を打ち倒さんと冒険者になるものも後を絶たない。

 

  そして、今ここに。そんなありふれた経緯で冒険者を志すものが一人。名を『ディアン・キュリーゼン』という。


 「そういうわけで―――ディアンです。よろしくお願いします」

 

 「はい、ありがとうございます。では冒険者カードを発行します。年齢は?」

 

  「えっと、この書類でお願いします」

 

  「15歳、未成年ですか。保護者の同意書または一定以上の肩書きを持つ推薦者はいらっしゃいますか?」

 

  この世界では成人は16歳。未成年者はさすがに最低限の身分証のみで通るほど審査は甘くない。冒険者は死と隣り合わせで、簡単なものではないからだ。

 

  「こちらに。Cランク冒険者、レン・ミルフィスです」

 

  「冒険者カードを拝見します。…はい、問題ありません。こちらお返しいたします。ではまず、適正検査を行います。こちらの宝石に触れてください」

 

 「は、はい」

 

  戸惑いながらも指示に従うディアン。すると宝石から奇妙な温もりを感じた。

 

 「では今の検査の結果を記入したカードを発行しますのでしばらくお待ち下さいね」

 

  「はい」

 

  普段と比べてあまりにも余裕がなかったからかだろうか、珍しく声をかけてきたのは冒険者の先輩であり、今回身分の保証と紹介を頼まれたレン。


彼女の黒髪は一族特有のものだというが、なかなかに目立つ。本人はさばさばした性格で全く気にしていないようだが。

 

  「…さっきからイエスマンになっちゃって。朝から面接の練習でもしてきたの?」

 

  「いや、その、うん、こんな場所来たの初めてだから…」

 

  「珍しいですね。ディアンさんはギルドに一度も来たことがないんですか?」

 

  「お恥ずかしながら、世間知らずでして」

 

  「いえいえとんでもない。冒険者にはもっと独特な方もいらっしゃいますから―――はい、ステータスが入力されました。では、最後に役割を決めましょう。最適正は『エンチャンター』。味方の強化が真骨頂。パートナーを見つけられれば、高ランクを目指せます。それと、魔法系列に秀でているようですね。ただし自身も攻撃に参加するなら他の―――」

 

  「いえ、大丈夫です。エンチャンターでお願いします」

 

  「本当にこれでよろしかったですか?後衛というのは難しいものですよ」

 

  「だからいいんです。自分は昔からそういうタイプですから」

 

  「…正直ありがたいです。後衛というのはいつだって欠けやすいもので。さて、これで冒険者カードの発行が完了しました。どうぞ」

 

  「わ…」

 

  ディアンは輝く冒険者カードを渡されると、つい気になって眺めてしまう。

 

  「何を大げさな、って言いたいところだけどね。そんなピカピカなの今だけだから目に焼き付けておきなさい」

 

  「…うん、そうする」

 

  (らしくなく素直ね、ちょっと調子狂うわ~)

 

  「ほら、いくわよ」

 

  「えっ、少しくらい感傷に浸らせてくれてもいいじゃん」

 

  「ふふ。でも、ここは離れましょ。窓口の前じゃ仕事の邪魔だもの」

 

  「わかってる。でも、これで憧れの冒険者になれると思うと、つい」

 

  「お気遣いなく。今は暇な時間帯ですし、お話くらい付き合います」

 

  「いいんですか?受付嬢さん」


 「ええ。ディアンさんがどんな人かも気になりますしね。…ディアンさんは、なぜ冒険者になったんですか?」

 

  「そうですね、ここのギルドマスターが憧れで」

 

  ギルドマスター。ギルドを統括するリーダー。当然それに見合うだけの実力者にのみ任される仕事である。

 

  「うちのギルドマスター―――『幻への誘い』ウィズ、ですか」

 

  「ええ。彼女とは昔から知り合いで、誰よりも見慣れています。ですが不思議と彼女の立ち振舞いが一番目に馴染むんです」

 

  「ふーん、あんたのことだからそーゆー願望ないって思ってたけど、意外と子供っぽいのね」

 

  「子供だよ。少なくとも、レン先輩よりはね」

 

  「…それやめて。先輩って、なんか、むずがゆい」

 

  「すぐ慣れますよ。これから頑張って下さいね、レンさん」


 言葉は冗談半分でも、ディアンがレンに向けているのは本物の敬意だった。…確かになかなか子供っぽいのかもしれないと受付嬢は思った。

 

  「おお、僕達の期待の新星がやってきたようじゃないか」

 

  長く切り揃えた白髪をなびかせ奥からやってきたのはここを取り仕切る責任者―――ギルドマスターであり、ディアンにとっては憧れの人物、ウィズだった。言葉の通り、才色兼備とは彼女のことをいうのだろう。

 

  体格こそ可憐な少女のそれだが、言葉ではいい表せない何かがある。白髪、と表現こそしたものの色彩の感じられない風貌と、何かを秘めた瞳。確かに彼女はギルドマスターなのだろうとなんとなく感じられる何かが。

 

  「なんだか、ギルドで会うと別人みたいに見えちゃうな。いろいろ言いたいことはあるけど…とにかく、元気でそうでよかった」


 「ギルドマスター、遅いですよ。新人が来るってずっと前に連絡もらってたじゃないですか」

 

  「僕の責任じゃないさ。緊急の仕事が入ったんだ」

 

  「…それ、言い訳になりませんよ。今日は副ギルドマスターもいるじゃないですか」

 

  「だから今ようやく時間がとれたのさ。それで、だ。ディアンはどうして冒険者になろうと思ったんだい?」


 「どうして、って?」

 

  「ここは田舎だけど、君は楽しく暮らしてるように見えたからね、単純な疑問さ」

 

  「不自由ないから、退屈なんだよ」

 

  「それは建前だろ?」

 

  「ウィズさん、圧力をかけすぎでは?」

 

  ふう、と一息ついてディアンは答える。

 

  「いつも以上に意地が悪い。試してるの?」

 

  「さて、どうだろうね。それで答えは?」

 

  「それこそ単純な答えだよ。七英雄に憧れて、冒険者になった。…いつか『魔王』を倒すために。そのためにSランク冒険者になってみせる」

 

  「…そうか。そういうのも意外と、困るんだけどね」

 

 「悪いとはいいませんが、冒険者というのはなかなかその――問題の多い職業ですから」

 

  「確かに心配だ。ま、僕としては人手が増えて嬉しいんだけど」

 

  「ぶっちゃけますねギルドマスター」

 

  「やっぱり、若いのは大事だよ。これからを支えてもらわなきゃ」

 

 「最年少ギルドマスターが何を言ってるんですか。たしかまだ21でしたよね?」

 

  若い。ギルドマスターにおいて21というのはとんでもなく若い。副ギルドマスターになる平均年齢が30代と考えると、考えられないほどの才女である。

 

  「というかうちのギルマスって見た目だけなら10代でも通用しますよねー、うらやましい」

 

  「はは、それほどでもない!」

 

  「そのせいで外野からは姫ギルドなんて呼ばわりなんですから、威厳くらいもっとしっかりしてください!」

 

  「どうどう、僕に免じて許しておくれ」

 

  「問題の張本人が何ほざいてるんですかーっ!」

 

  「はははははー」

 

  「…いつもこんな感じなの、レン?」


 「まことに残念ですが。でも政治力は本物だから、あいつ。なんとかなるわよ」

 

  そんな話をしている間も受付嬢はギルドマスターに対して説教の嵐。苦労しているのがわかる。

 

 だが見た目がどうあれ、実力があるからこそこの状況が成立して(しまって)いるのだろう。

 

  「ま、新人さんをこれ以上待たせるのも悪いからさ、真面目な話ちょっと待っててね?」

 

  「はい、わかりましたよーだ。とっととギルマス交代しろー」

 

  「そしたら君の仕事増えると思うけど―――さて、ディアン。早速だけど冒険者としての準備、始めよっか」

 

  「は、はい」

 

  「気合い入ってるね~。知り合いなんだしユルくていいよ、ユルくて」

 

  「ギルドマスターはこれ以上ユルくしたら…いえ、もういいです。いってください。早く早く」

 

  「冷たいなぁ。それで冒険者カードはもう作ったんだよね。役割は?」

 

  「エンチャンターにしたよ」

 

  「へえ珍しい。いきなり後衛とはなかなか渋いよ。でもディアンらしい」

 

 「…えっと、少しいい?あたしってここいる意味ある?」

 

  「レンには先輩としてやってもらう事がある。しばらくついてもらえないかな」

 

  「ん、わかったわ」

 

  「ではまず―――これを」

 

  「これって…皮装備一式?モノはEランク相当だけど一人一人渡してたら、費用はバカにならないんじゃ」

 

  「異議は却下します。うちは少人数の田舎ギルドだしね、お金云々は僕が上手く回してる。ありがたく受け取って馬車馬のように働け」

 

  「そーよあたしだって受け取ったんだから。甘えればいいのよ新人くん。そしてこのブラックギルドに溺れなさい」

 

  「二人とも最後の一言は0点だけどせっかくだし…ありがとう」

 

  レンに冗談を返されたこともあってか、そろそろ緊張がほぐれてきたようだった。

 

 「それじゃあ改めて、行こうか。受付嬢さん、留守番は『彼女』に任せておいてね」

 

  「はい、問題ありませんよ姫」

 

  よりにもよって受付嬢さんからのまさかの姫呼ばわり。

 

  「あれ、ひょっとして怒ってる?」

 

  「ギリギリ行動で仕事が済んでないのに新人を優先したからって全然怒ってないですよ。あ、夜ご飯は高めでお願いします」

 

  「ははは。そういうことで、じゃあ行ってくるよ」

 

  「はい、勝手に行ってください姫」

 

  二人の間では火花を散らした会話が起きていたが10分後、ギルドの入り口前に集合した3人。

  

  「どうかな、これ。似合ってる?」

 

  「うん、冒険者って感じ。Eランクの」


 さすがにそこまで高くもない皮装備。仕方がないのだがそれにしてもレンは毒舌だった。


 「そういうレンも…冒険者って感じだね。Cランクの」

 

対するレンは、動きやすさ重視の布の服だった。だが、何かしらの魔法がかけられているようでそこそこの防御を誇っているように見える。まあ簡潔に言えば、今ディアンの持っている装備よりは格上だ。


  「綺麗でしょ。で、ギルマスは―――」

 

  「え、僕は普段着のままだけど」

 

  「夢がないわね~」

 

  「この後仕事残ってるからね。新人指導すぐ終わらせて戻らないと怒られちゃう」

 

  「すぐじゃなくても怒られるでしょ。というかだからあたしにお呼びがかかったのね」

 

  「そゆこと。お願いするよ、説明も」

 

  「…それで、僕は何をすれば?」

 

  これまで全く説明を受けていないディアンはかなり不安そうにしていた。

 

 「身構えなくても今回は簡単だよ。どんな魔物でもいいから3体討伐すること。一人じゃなくても、レンの手を借りたっていい。他の誰かの助けを呼ぶのもオッケー」

 

  「…それじゃ、新人教育の意味がないんじゃ?」


 「新人だから無茶はさせないよ。それに、教育なんかよりゆっくり慣れさせるのが一番さ」

 

  「そんな気にしないで。あたしのときもこんな感じだったし」

 

  (ま、『できるだけ手を貸すな』とは言われてるんだけどね)

 

  「じゃあそんな感じでよろしく」

  

  「は、はい!」

 

  「最後まではいはいってしまんないわね」

 

  「うっさいな、緊張してるんだよ!」


 「じゃあギルドマスターとして最後に一言だけ。いのちだいじに、これ忘れないでね。頑張って」

 

  ギルドマスターの見送りを受け、ディアンとレンは町の近くの平原へとやってきた。

 

  「ここはまあ、見た通りの平原ね。障害物はないし強い魔物も出ない。初心者には絶好の狩り場といっていいわ」

 

  (しかし今日は妙な雰囲気ね…索敵のスキル使っときますか)

 

  「そうなんだ。でも、強い魔物が出ないんならレンはもうここには来ないのかな」

 

  「基本はね。…おっと、さっそくスライムのお出ましよ」

 

  「わっ、と、よし!」

 

  構えはまだまだ様にならなかったが、とりあえずナイフを取り出す。

 

  「まだ気づいていないみたいね。チャンスよ」

 

  小声でレンがアドバイスをする。最初としては最高のチャンスだろう。

 

  「えいっ!」

 

  一閃。技術はまだまだだが、相手も大したことはなかったからか討伐に成功。…ただし、初めて討伐してショックを受けたのか転んでしまっていた。

 

 「やるじゃない。正直一発で上手くいくとは思わなかったわ」

 

  「僕も」


  「ここは自信持っていいとこよ」

 

  「あ、ありがとう」

 

  「あんたの手柄なんだから、もっとしゃんとしなさい。ほら、立てる?」


 レンの手を借りてどうにか立ち上がる。

  

  「や、やっぱ緊張してるのかな」

 

  「そんくらいでいいのよ。緊張してのミスはフォローできる。でも油断してのミスじゃその保証はないわ」

 

  「そっか…そういえばさ」

 

  「ん、どうしたの?」

 

  「ギルドマスターが留守を任せた『彼女』って誰なんだろうって思って。新人?」

 

  「ふーん…どうして新人だと思ったの?」

 

  「…あの人が呼ぶ割には他人行儀だったから」

 

  「さすが冴えてるわね。そうよ、あんたと同じでちょうど今日入った新人。でも少し問題のある子でねー、実力は新エースといって過言じゃないんだけど」

 

  「そうなんだ…いつか僕とも組むのかな」

 

  「いつか、というかすぐかもね。あんたも期待されてるのよ?どこもそうだけど後衛の、それも頭脳担当となると全然いないもの。潤滑油になりそうなあんたと不器用だけど強そうな彼女じゃ相性良さそうだし」

 

  「?レン、どうしたの?」

 

  「…やらかした。狙われてるわあたしたち」

 

  「誰に?」


 「竜族、つまりドラゴン。一般種ぽいからまだなんとかなるけど」

 

  レンはディアンの方を見た。こうなってしまうと新人のディアンはどうしても足手まといだった。レンは小さな石を取り出すと、それに向かって話始めた。

 

  『こちらレン。平原にドラゴンとおぼしき気配を観測しました。増援お願いします』

 

  『すぐに送る。細かい手続きは僕が済ませておく、生き残ることを最優先に。今回のクエストは放棄してもかまわない』

 

  『了解』

 

  「今のは?」

 

  「マジックアイテムでギルマスに通信を送った。でもまだ気配で、本当にいるかはわからないから、戦闘を避けるため警戒はギルドに全部任せてあたしたちは特に何もしないでおくわ」

 

  「僕、竜語は多分話せるけどどうすればいいかな?」

 

  「は―――?」

 

  「竜語が話せるんだ」

 

  「聞こえなかったんじゃなくて…それ、本当?」

 

  「この状況で嘘はつかないよ。ただ、確実な手段じゃないと思う。竜と実際に話したことないから。でも、理屈はわかる」

 

  手札は1枚でも多い方がいいのは事実。しかし竜族はプライドが高い。少しでも妙ななまりのある竜語を話せばそれに苛立たれ戦闘になるかもしれない。だが逆に平和的解決を実現できる可能性もある。それでもそもそも新人を矢面に立たせていいのかという疑問も残る。その上での判断。


  「…わかったわ。でも、最後の手段だから。これは妥協しない。プラス許可なしに行動しないこと」

 

  「うん」

 

 それは本気で悩んだ末の結論だった。ドラゴンという初めての冒険にして巨大な壁乗り越えられるかは、レンだけでなくディアナの働きにもかかっていた。

第一話です。なんというか、やっぱり緊張しますね。

Twitterもやっています。

@kurinarou13です。これからよろしくお願いします。

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