平凡な転生者と非凡な勇者
BLです。ご注意あれ‼
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どうしてこうなったのだろう。俺はそんなことを考え現実逃避をしていた。………本当にどうしてこうなったっ!!
始まりはそう、よく物語で最近ありがちな頭をうって前世を思い出す異世界転生だった。思い出した当初は魔法!?まじで?もしかして俺tueeee!?とか思ったりしたが、世の中そんなに甘くなく、容姿は茶髪茶眼で普通、剣は普通より上、魔法はてんでダメだった…。
そんな普通スペックの俺だか一つだけ普通ではないことがあった。そうそれは幼馴染。幼馴染様は常人と比べるのもおこがましい位のハイスペックなのだ。そうハイスペックだったのだ。
剣は達人級、魔法は宮廷魔術師級、さらには家事さえも完璧なのだ。一時期はこんなハイスペックな奴がいていいのか?と教会に行き神に苦情を言いに行ったくらいだ。
そんなハイスペックな幼馴染にも欠点というかなんというか、人々にとても恐れられているのだ。勿論ハイスペック過ぎて恐れられている訳ではない。幼馴染の髪と瞳はこの世界で忌み色とされている黒髪赤眼だった。
かくいう俺も前世の記憶を思い出すまではまるで化け物かなにかに接するかのように恐れていた。勿論思い出してからはそんなことはない。恐れられ人と接することなく親にも教会に捨てられた過去を持つ幼馴染は、笑うことも怒ることもせずただ死ぬのを待つかのように過ごしていた。
なので時には冒険と称して遊びに連れ出し、時には料理の練習の失敗作を処分するのを手伝えと本当は成功した手料理を食べさせたり色々構い倒した。
にこりともしなかった奴が俺の手料理を食べ「美味しい」と微かだが初めて笑ったのを見たときはとても嬉しかったものだ。それからは俺の前では笑うようになり、女の子たちが色めき立つようになった。俺なんて女の子に告白されたことないのにー!……ゴホン。話が脱線したな。ともかく、女の子たちのお陰で村の人々に少しずつ受け入れられた頃王宮から使いが来た。
王宮の使いなんて来る心当たりは皆無かったので何だ?となったのだがなんと!幼馴染に女神の加護を受けし勇者と信託が下ったそうだ。王宮の使いが言うには魔王が復活した影響で近頃魔物が活発化していたのだとか。どうりで最近被害が増えた訳だ。
そして魔王を倒すすべを持つ唯一の存在が勇者な為、至急王宮に来て魔王討伐パーティーを組んで魔王を倒してきて欲しいとのこと。それからはてんやわんやの大騒ぎ。忌み子が勇者だと分かり村長はひっくり返ったり、教会のシスター達はあからさまに媚びを売っていたり色々あったが幼馴染は無事旅立って行った。
ただ、「魔王討伐が終わるまでは独身でいて欲しい」と幼馴染様に言われたのだが何だったのだろう…?もしかして命掛けで戦ってる時に一人だけ抜け駆けして幸せになるなんてってことなのか?まぁよくわからんがイイ人はいないし当分結婚はしないだろうけど。
2年後
風の噂で聞いたが、どうやら勇者パーティーが無事誰一人欠けることなく魔王を討伐したそうだ。なんでも凱旋パレードをするらしい。そしてその後の国王との謁見で何でも一つ願いを褒美として与えられるとか。村ではその勇者の褒美の内容の憶測が飛び交っていた。
やれ「勇者パーティーの聖女こと、第一王女との結婚の許しだろう」とか、やれ「魔術師のエルフとの結婚の愛の巣となる屋敷じゃないか」とか俺はそれを聞いて胸がズキッとしたが、幼馴染が遠い存在に感じられて寂しくなったのだろうとこの感情に蓋をし、幼馴染の成長を喜ばすにしてどうする‼っと活をいれた。……婚活でもしようかな…。
1週間後‐今現在‐
ん?何だか村の入り口が騒がしいな…?俺は農具を片付け見に行って見ることにした。…え?あれって…。まさか‼
「アルバート…?」
「っ!…シオン久しぶりだね。」
そこには背が伸び少し見慣れなくなった幼馴染がいた。
「お帰りっ!!無事そうで安心した…本当に…。いつ帰って来てたんだ?今日は村に泊まれる?つか、スゲー背が伸びてんじゃんか‼何センチ伸びた?マジ会うたびにイケメンになるなお前ー」
っは!喜びの余りマシンガントークしてしまった…。さすがにアルバート引いてるんじゃ…?
「ちょっ、一気に言われても答えられないよ…。ただいま。今さっき帰ってきたとこ。今日は村に泊まれるよ。…あと何センチ伸びたかだっけ?12センチ伸びたよ。誉められて嬉しいのはシオンだけだよ、ありがとう。」
うわっ。全部答えたっ?スゲー。しかもはにかみ付き!女の子たちが赤面してるよ…
「全部答えてるじゃん。あー…つもる話もあるだろうし俺ん家来る?」
「そうだね。お邪魔しようかな」
「はいよ。じゃ行こうぜ?」
「うん」
「適当に掛けてくれ」
「そうさせてもらうね」
えーと、確かこいつの好きな紅茶がここにあったはず…。お、あった。そんで、紅茶は砂糖2本っと…。
「粗茶で悪いがどうぞ。本当に久しぶりだな。2年ぶりか。」
「そんなことはないよ。シオンのいれる紅茶は世界一美味しい。会うのは正しくは2年と1ヶ月、4日と2時間ぶりだね。」
相変わらずこいつは大袈裟だなぁ。つか、
「細かすぎっ!よく覚えてるな」
「だって愛しいシオンに会えないんだよ?嫌でも覚えてるよ。シオンに会えない日々は地獄のようだったよ。」
うーん。構い倒し過ぎたか?なんか執着のようなねっとりしたものを感じるんだが…。とりあえず茶化して話を反らすか。
「大袈裟じゃね?そういうのは恋人に言えよー。てかさ、お前パーティーメンバーと良い仲なんだって?だれが本命なんだよーw」
「……。へぇ?そんな風に誤魔化すんだ。シオン。それと、パーティーメンバーは王女は騎士と魔術師は暗殺者と恋仲だよ。僕は関係ない。そうそう、シオン?僕ね先週国王と謁見があったんだ。それでね、褒美をもらったんだ。」
ぇ、えーと…アルバートのやつ雰囲気が…
「そ、そうだったのか。悪い、勘違いしてた。…えと、それで褒美はどうしたんだ…?」
「その前に、シオン。この国では上流階級の人たちは同性婚が認められてるんだ。どうしてだと思う?」
な、なんだ…?いきなり。確か…
「妊娠薬ってのがあって、それを飲めば同性でも子供が出来るからだろ?ま、妊娠薬はバカ高いからなかなか同性婚するやつはいないらしいが。」
「そう。正解。それじゃ、これは何だと思う?」
そういってアルバートは懐からビンを出した。…おい、まさか。
「ぇ…えーと、あはは、妊娠薬だったりしてー……?」
「そうだよ。僕は褒美に妊娠薬を願ったんだ。でも、まさかあれだけ気持ちを伝えておいて本気にされてなかったなんて…」
ま、まじか。
「俺のこと好きって言ってたのは…」
「うん。友人としてでなく、恋愛対象としてだね。相手にされなかったけどね。」
何かアルバート悲しそう…。で、でも普通の俺がハイスペックなアルバートに恋愛対象として見られてるなんて思わないだろ!?それに弟みたいに接してたし。つか、今なんて世界の救世主の勇者様だぞ?無理無理無理!釣り合わないって!!でも、アルバートは…
「えーと、その…」
「だからね、シオン?まずは恋愛対象として意識してもらうことにしたよ。」
あの…?顔がってっ!?……!?き、キスされた?今俺の顔絶対赤いっ!!めちゃくちゃドキドキしてる!
「ぎ、ぎゃーーー!!なにすんだお前ー!俺のファーストキス!」
「ぎゃーって色気ないなぁ。でも、そっか。僕がファーストキスの相手なんだ。良かった。」
いやいやいや。
「良くない良くないっ!」
「でもシオン顔真っ赤だよ?本気に可愛いな。………ボソッこれは脈ありかな?」
可愛いとかマジでなにいってんのこの人!?
「シオン。これからはドキドキしてもらえるように頑張るから、覚悟してね?」
本当、マジでどうしてこうなったっ!!!
深夜‐シオンの家‐???サイド
隣で無防備に寝る青年の頭を撫で、神に愛された美貌の青年は黒髪赤眼の男に言われたことを思い出す。
[魔王と勇者は表裏一体。魔王とは絶望し闇に落ちた勇者のことをいう!こんな醜い世界でいつまでお前が勇者と崇められてるのか楽しみだっ!!]
…確かに、この世界は醜い。この世界を恨みもした。でも、それでもいつしか隣にはシオンがいた。感情を出せなかった出来損ないの自分の手を取ってくれた。笑いかけてくれた。大好きだと、愛してると言ってくれた。自分を哀れみでもなんでもなく無償の愛でどん底から救ってくれた。いつからか、世界を恨みんでいたこともどうでも良くなった。きっと自分はシオンがいるから勇者でいられるのだろう。
「そういう意味では、シオンはこの世界の救世主だね?」
「ぅーん……」
勇者は隣で気持ち良さそうに身動ぎする愛しい存在にそっと口づけた。
おしまい
読んで頂きありがとうございます(*^^*)