異世界で一歩ずつ
足が超痛い。
おかげ様で作り直して若返った体、と言っても元が靴を履きなれた現代人、どこかの屈強な部族じゃない。
未だにプニプニの足裏を脱却していない俺には、素足はキツすぎる。これは死活問題。
革靴とかスニーカーとか贅沢言わない。せめて草鞋作って足を保護しないと、まともに歩き回れない。
でも、辺りは苔だらけか・・・、土の栄養素は高そうだけど湿ってるトコばっかだな。
多様性の無い土地に気落ちするが最悪、木の皮を剥いてロープにしよう。
「近くで大木を見てみたいな。ちょっと散策するか、崖上の方はまだ見た事ないしな」
洞のある大木へ遠回りしている最中、大きな腐敗木から食料が結構見つかった。
今考えれば、アリも毒性があるヤツが多い。よく無事だった、とホっとする。
「おっ!ツタ植物だ!」
元居た場所から100Mは移動しただろうか、崖上に向かう途中、木に絡みついて上へと伸びる植物を発見。
カラハナ草?に似てるかな。使えるぞ!結構数もある。
下草に日光がそこまで行かないから、こういう寄生植物が残ったんだな。
トゲが多いけど皮はすぐ捲れる・・・しかも大小様々な太さで、太いのは結構硬い。
二つ折りにするとパキっといっちゃうヤツだな。
でも、折らなきゃかなりの強度だぞ。
こっちの世界に来てツタ性の植物があった事に一番喜んだ。内心、小躍りしたいぐらい。
「できるだけ採取してこう」
君はカラハナ草(仮)と呼ぼう。
思いっきり引っ張り、毟り取っていくカラハナ草(仮)に俺は大満足した。
「早速作ろう。あとはさっき川で拾った木皮で緒にして・・・」
長さが手の平6個分のカラハナ草を用意して、両端から輪っかを二つ作り、手元からカラハナ草(仮)で編みこんでいく。
ソールの部分は手抜きで、穴も多く子供用だし、片方1時間もかからなかったと思う。
あとは足を固定する緒と、草鞋側面に小さい輪っかを作って、足の親指と人差し指の間を紐が通るように「かえし」を作った。
早速自作の草鞋を履いてみたが、そこまで悪くない。というか、今までが悪すぎた。
「いい感じだっ!第一歩だな・・・・・・・・!?っ」
突然3、40M先からガサっと言う音と、枝が何か重い物で踏み潰されるような音が聞こえた。
俺はその場で身を低くして近くの倒木へ、ゆっくり移動した。
「フーっ・・・ッフ、・・・ハッハッ、ハッ、ハッ、ハッ・・・ッフ」
呼吸が速く、浅くなる。
体が震え、ブワっと脂汗が顔から吹き出し、俺は映る先のモノから目が離せないでいる。
な、なんだあれ!?なんだアレはッ!
黒くて・・・いや茶色??
デ、でかい。デカすぎる。子供だから大きく見えるってもんじゃない。
全長4、5M・・・?サイ並だ。
頭の両側にツノが・・・バッファローか!?。
い、イヤ。鼻上辺りに角が二本上に伸びてる・・・インドネシアの毛有り版バビルサか?
こんな大型種がなんで森の中に・・・。
普通、もっと開けた場所に居るもんじゃないのか?
こ、このまま大人しくして通り過ぎるのを待とう。落ち着け・・・お、落ち着け。
動物は色彩と視力の弱い種が多い。
大人しく・・・
そう思った瞬間、自分の前を歩いていくバビルサ(仮)の首だけが横を向き、目線がこっちに向いた。
気づかれてる!に、匂いか!?
バビルサに近い種だとしたらイノシシ科・・・嗅覚か?
しかし、バビルサ(仮)は後ろを振り向きはしたが、嘶き一つせず、そのまま興味が無かったかのように前を歩いて行った。
腹を空かせていなかったのか、単純に興味が無かったのか、脅威だと思われなかったか・・・俺には分からない。
でも、バビルサ(仮)が居なくなった先を俺は唯々見つめて、心臓の爆音が鳴り止むまで動く事は出来なかった。
草鞋の説明要らなかったかな。分かりにくくてすいません。
それと、バビルサには頭の側面に通常角は生えていません。
知る人ぞ知る「自分の死を見つめる動物」体毛の少ないイノシシ科です。